異世界にタワマンを! ~奴隷少年は国王となり理想の国を目指した~
1-1-1. 神秘をまとう少女
「うひゃぁ! な、何これ……」
いきなり渋谷のスクランブル交差点に転送された異世界の少年レオは、目の前に展開される煌びやかな巨大スクリーンの映像に圧倒され、四方八方から押し寄せる群衆に翻弄された。
「これが……日本?」
異世界の王女は美しい金髪をゆらしながらレオの手を握り締め、圧倒されながらつぶやく。
やがて信号が赤になって人がはけていき、車がパッパー! とクラクションを鳴らす。
「はいはい、危ないよ!」
青い髪の少女は二人を引っ張って歩道に上げた。
鉄橋の上を轟音を立てながら山手線が走り、続いて逆方向から成田エクスプレスが高速で通過していく。
「うわぁ!」
レオは目を真ん丸にして後ずさりする。
「ここが日本、レオの理想とする貧困のない国だよ」
青い髪の少女はニヤッと笑って言った。
「これが……日本……」
レオは唖然として渋谷の雑踏の中で立ち尽くす。
物心ついた時から奴隷として朝から晩までこき使われ、まともな食事も与えられず苦しんできた少年は、想像を絶する光景に言葉を失っていた。
それは少し前、午前中の事だった――――。
「はい、どうぞ」
十二歳の少年レオは山菜採りの帰り、道端の孤児に野イチゴを手渡した。
孤児は何も言わずに野イチゴをひったくり、一気にほお張ると軽く頭を下げる。
道の脇のさびれた小さな祠には身寄りのない子供たちが住み着き、雨露をしのいでいるのだ。
レオは彼らの身を案じつつも、自分も奴隷として過酷な肉体労働の日々を送っていることにウンザリし、大きくため息をついた。
「お前! 何サボってんだよ!」
レオはいきなり後ろから首輪を引っ張られる。
オエッっとえずきながら、首輪を押さえ振り返ると、ボロをまとったアルとは対照的に煌びやかな衣装の小太りの若い男が、二人の手下を引き連れて立っていた。
彼はジュルダン。アルの所有者で、大きな商家の坊ちゃんだった。
「こ、これは、ご主人様、サボってるのではありません、ご命令の山菜摘みの帰りです」
ジュルダンはそう言うレオの身体をジロジロと見回す。
「お前! 何だこれは!」
レオの腰の短剣を引き抜くと、品定めをする。それは柄の所に綺麗な赤い石がはめ込まれた立派な短剣だった。
「それは父の形見の短剣です。返してください!」
レオは取り返そうとするが、手下たちが身体を押しとどめ、手が届かない。
「形見? 盗んだんじゃねーのか? 奴隷が持つには贅沢すぎる」
そう言うと、ジュルダンはビュンビュンと短剣を振り回した。
「返してください!」
レオが手下を振り切りながらジュルダンに迫ると、ジュルダンは、
「おっといけない!」
そう叫んで、短剣を後ろに放り投げた。
えっ!?
短剣は青空をバックに大きな弧を描き、後ろの池にボチャン! と音を立てて消えていった。
あぁっ!
呆然とするレオ。ずっと大切にしてきた父の形見、それを捨てられてしまったのだ。
「お前が手を出してくるから危ないと思って手を離したんだぞ! お前らも見てただろ?」
ジュルダンは手下たちに聞く。
「その通りです!」「コイツのせいです!」
手下たちはいやらしい笑みを見せながら言う。
レオの奥底でガチッと何かのスイッチが入った。
短剣は亡きパパとの絆、それはレオにとって決して失ってはならない心のよりどころだった。それを捨てるものは誰だろうと許せない。
レオは体の奥底から湧き出す激しい怒りで我を忘れ、ジュルダンに殴りかかった。
ぐぁぁぁ!!
痩せた躯体からは想像もつかない素早さでジュルダンにせまり、右パンチを繰り出すその刹那、レオの首輪がギュッと締まる、
ぐっ……、ぐぉっ……。
レオはゴロゴロと地面に転がり、もがき苦しむ。
奴隷に付けられた魔法の首輪は、主人に危害を与えようとすると自動的に締まるようにできていたのだ。
それを見たジュルダンは、
「奴隷のくせに主人にたて突くとはふてぇ野郎だ!」
そう叫びながら、苦しむレオに何度もケリを入れた。
手下たちも、
「ふてぇ野郎だ!」「ふてぇ野郎だ!」
と、真似しながらレオを蹴り、顔を踏んだ。
なんという理不尽、しかし、奴隷のレオにはどうにもできなかった。
「いいか、奴隷は人間じゃない。よく覚えとけ!」
ひとしきり暴行を加えると、ジュルダンはそう言って、笑いながら街の方へと歩き出す。
「覚えとけ!」「覚えとけ!」
手下たちも笑って復唱した。
レオは血の味がするくちびるをキュッとかみしめ、ギュッと目をつぶる。頬にはとめどなく涙が伝った。
くぅぅぅ……。
一体なぜ、こんな仕打ちを受けねばならないのか? 生まれが不運だっただけで奴隷として売られ、毎日過酷な労働と理不尽な扱い。レオは全く納得がいかなかった。
なぜみんなが笑顔で暮らせないのか……。いつかこの理不尽を変えてやる。
レオは奥歯をギリッと鳴らし、心に誓ったのだった。
レオはよろよろと立ち上がって池のほとりまで歩き、しばらく呆然として池を見ていた。
短剣はこの世に一つしかないパパとの絆、命の次に大切な物だ。潜ってでも探すしかない。
レオは大きく息をつき、服を脱ごうとした。
その時だった。
いきなり青空がかき曇り、暗くなったかと思うと、鮮烈な閃光が空いっぱいに走った。
え……?
いきなりの異様な事態にレオは怪訝そうな顔で空を見上げる。
直後、激しい衝撃波を伴いながら流れ星が目の前の池に突っ込んできた。
地面を揺らす轟音と共に、百メートルはあろうかという巨大な水柱が上がり、激しい水しぶきがレオを襲う。
いきなり渋谷のスクランブル交差点に転送された異世界の少年レオは、目の前に展開される煌びやかな巨大スクリーンの映像に圧倒され、四方八方から押し寄せる群衆に翻弄された。
「これが……日本?」
異世界の王女は美しい金髪をゆらしながらレオの手を握り締め、圧倒されながらつぶやく。
やがて信号が赤になって人がはけていき、車がパッパー! とクラクションを鳴らす。
「はいはい、危ないよ!」
青い髪の少女は二人を引っ張って歩道に上げた。
鉄橋の上を轟音を立てながら山手線が走り、続いて逆方向から成田エクスプレスが高速で通過していく。
「うわぁ!」
レオは目を真ん丸にして後ずさりする。
「ここが日本、レオの理想とする貧困のない国だよ」
青い髪の少女はニヤッと笑って言った。
「これが……日本……」
レオは唖然として渋谷の雑踏の中で立ち尽くす。
物心ついた時から奴隷として朝から晩までこき使われ、まともな食事も与えられず苦しんできた少年は、想像を絶する光景に言葉を失っていた。
それは少し前、午前中の事だった――――。
「はい、どうぞ」
十二歳の少年レオは山菜採りの帰り、道端の孤児に野イチゴを手渡した。
孤児は何も言わずに野イチゴをひったくり、一気にほお張ると軽く頭を下げる。
道の脇のさびれた小さな祠には身寄りのない子供たちが住み着き、雨露をしのいでいるのだ。
レオは彼らの身を案じつつも、自分も奴隷として過酷な肉体労働の日々を送っていることにウンザリし、大きくため息をついた。
「お前! 何サボってんだよ!」
レオはいきなり後ろから首輪を引っ張られる。
オエッっとえずきながら、首輪を押さえ振り返ると、ボロをまとったアルとは対照的に煌びやかな衣装の小太りの若い男が、二人の手下を引き連れて立っていた。
彼はジュルダン。アルの所有者で、大きな商家の坊ちゃんだった。
「こ、これは、ご主人様、サボってるのではありません、ご命令の山菜摘みの帰りです」
ジュルダンはそう言うレオの身体をジロジロと見回す。
「お前! 何だこれは!」
レオの腰の短剣を引き抜くと、品定めをする。それは柄の所に綺麗な赤い石がはめ込まれた立派な短剣だった。
「それは父の形見の短剣です。返してください!」
レオは取り返そうとするが、手下たちが身体を押しとどめ、手が届かない。
「形見? 盗んだんじゃねーのか? 奴隷が持つには贅沢すぎる」
そう言うと、ジュルダンはビュンビュンと短剣を振り回した。
「返してください!」
レオが手下を振り切りながらジュルダンに迫ると、ジュルダンは、
「おっといけない!」
そう叫んで、短剣を後ろに放り投げた。
えっ!?
短剣は青空をバックに大きな弧を描き、後ろの池にボチャン! と音を立てて消えていった。
あぁっ!
呆然とするレオ。ずっと大切にしてきた父の形見、それを捨てられてしまったのだ。
「お前が手を出してくるから危ないと思って手を離したんだぞ! お前らも見てただろ?」
ジュルダンは手下たちに聞く。
「その通りです!」「コイツのせいです!」
手下たちはいやらしい笑みを見せながら言う。
レオの奥底でガチッと何かのスイッチが入った。
短剣は亡きパパとの絆、それはレオにとって決して失ってはならない心のよりどころだった。それを捨てるものは誰だろうと許せない。
レオは体の奥底から湧き出す激しい怒りで我を忘れ、ジュルダンに殴りかかった。
ぐぁぁぁ!!
痩せた躯体からは想像もつかない素早さでジュルダンにせまり、右パンチを繰り出すその刹那、レオの首輪がギュッと締まる、
ぐっ……、ぐぉっ……。
レオはゴロゴロと地面に転がり、もがき苦しむ。
奴隷に付けられた魔法の首輪は、主人に危害を与えようとすると自動的に締まるようにできていたのだ。
それを見たジュルダンは、
「奴隷のくせに主人にたて突くとはふてぇ野郎だ!」
そう叫びながら、苦しむレオに何度もケリを入れた。
手下たちも、
「ふてぇ野郎だ!」「ふてぇ野郎だ!」
と、真似しながらレオを蹴り、顔を踏んだ。
なんという理不尽、しかし、奴隷のレオにはどうにもできなかった。
「いいか、奴隷は人間じゃない。よく覚えとけ!」
ひとしきり暴行を加えると、ジュルダンはそう言って、笑いながら街の方へと歩き出す。
「覚えとけ!」「覚えとけ!」
手下たちも笑って復唱した。
レオは血の味がするくちびるをキュッとかみしめ、ギュッと目をつぶる。頬にはとめどなく涙が伝った。
くぅぅぅ……。
一体なぜ、こんな仕打ちを受けねばならないのか? 生まれが不運だっただけで奴隷として売られ、毎日過酷な労働と理不尽な扱い。レオは全く納得がいかなかった。
なぜみんなが笑顔で暮らせないのか……。いつかこの理不尽を変えてやる。
レオは奥歯をギリッと鳴らし、心に誓ったのだった。
レオはよろよろと立ち上がって池のほとりまで歩き、しばらく呆然として池を見ていた。
短剣はこの世に一つしかないパパとの絆、命の次に大切な物だ。潜ってでも探すしかない。
レオは大きく息をつき、服を脱ごうとした。
その時だった。
いきなり青空がかき曇り、暗くなったかと思うと、鮮烈な閃光が空いっぱいに走った。
え……?
いきなりの異様な事態にレオは怪訝そうな顔で空を見上げる。
直後、激しい衝撃波を伴いながら流れ星が目の前の池に突っ込んできた。
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