魔法令嬢アリスは星空に舞いたい
首無し騎士は成仏していきました
決着はついた。
倒した首無し騎士。 しかし、彼は再動を始める。
「コイツは驚いた。まだやる気かい? それならアリスに変わって私が相手を――――」
「いや、もう良い」と首無し騎士はミゲールの言葉を遮った。
「なんでぃ! 最後まで言わせろよ!」と言うミゲールを無視した首無し騎士は、アリスの前に立つ。
既に、その手には槍は握られていない。 そもそも、殺意がない。
「その見た目、10才にも満たない若輩として、実力を見極めさせてもらった。
この先に進む実力あり……ならば、我が力を受け継がせたい」
首無し騎士は、鎧から籠手を外した。そこには紋章が輝いていた。
その紋章は『聖』の属性を有していた。
「この力があったからこそ……ワシは死後の身でありながら、この地に留まる事が出来た。秘密の地下。悪気の吹き溜まりとなる場所――――それももう終わりだ」
その言葉と同時に聖の紋章が、彼の腕から離れて宙に浮かんだ。
「マクレイガー家の守護神。その力を受け取るが良い――――我が子孫よ!」
アリスが持つ風の紋章。 それが刻まれた右手とは逆――――左手に聖の紋章が刻まれた。
それはまるで戴冠式のように健《すこ》やかであり、神聖であった。
普段から飄々としているミゲールですら、真剣な顔に
「紋章の譲渡……そんなことが、本当に可能なら、魔法界に革命が起きるぞ」
そんな事を呟いた。一方のアリスは、
「え? 貴方は一体……誰なのですか?」と訊ねる。
しかし、首無し騎士は答えない。ただ、微笑むのみ――――微笑むのみ!?
目を凝らせば、存在していなかった顔が現れている。
その顔をアリスは思い出す。 この地下に入って行く前、その入り口に掲げられていた肖像画。 そこの書かれていた人物と似た顔――――いや、本人そのものではないか!
「あなたは、まさか! マクレイガー家の初代さま!」
「――――」と首無し騎士だった彼は、彼の正体を答えない。
ただ、
「マクレイガー家は、代を重ねるほどに躍進を続ける! 地下で見守っていたワシが言うのだ間違いない。アリス…… アリス・マクレイガーよ! 常世にも、その名が届くのを待っているぞ!」
祝福の言葉。
それをアリスに送ると首無し騎士は――――初代、マクレイガー公爵は姿を消した。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「先生、紋章って譲渡する事が可能のですか?」
「わからん!」と答えたミゲールは、アリスの左腕を握ったまま、そこに刻まれた紋章を凝視している。
「完全な紋章の譲渡が、いや1割でも他者に受け継がせる技術があるとしたら……喜べ、アリス。お前のご先祖様は天才の部類だぞ」
「それほどですか!?」とアリスは驚いた。
「この技術が解析でき、1人の人間が生涯をかけて研磨した紋章の力を他者に与えれるようになったとしたら……。アリス、コイツは秘密にしておけよ」
「なぜでしょう?」
「その方法が明らかになったら、他人から紋章を奪う奴が出てくる」
ミゲールは、その悪意に対して顔を歪めながら、
「たとえ、どんな方法を使ってでも……そんな奴が必ずな」
そう付け加えた。
「では、この聖の紋章は使わない方がいいのでしょうか?」
「あぁ、帰ってから要研究だな。まだ、わからないことが多すぎる」
それから彼女は笑って、
「今、私が生涯を賭けて研究したテーマが決まった位の出来事だぜ!」
アリスは、自分の興味深く左手を見る。
(不思議……凄く馴染んでいる。まるで生まれた時から、体に刻まれていた紋章のように)
そんな事を考えている途中だった。彼女は気配に気づいた。
何かの気配……それを探るように警戒すると――――
「せ、先生、やっぱり聖の紋章を使いませんか? 具体的には、今すぐにでも」
「なんだ、どうしたんだ? そんな焦って……げっ!」
彼女たちの視線の先。新たなる魔物が現れていた。
朽ちた鎧が動いている。 動く鎧
死んだ人間の残留思念を動力に変えるタイプの魔物。
それが30体。 今は30体だが――――
「コイツは、やべぇぞ。軍勢を隠すための広間に動く鎧……コイツは先兵に過ぎない。アリス、お前のご先祖さま、いい顔して成仏していったけど、ここでどれだけ悪だくみしてきたんだ?」
「先祖の侮辱は止めてください。私じゃなければ殴ってますよ?」
「ごめん、ごめんって! たぶん、お前のご先祖さまが抑えてくれていたんだろう。そうじゃなきゃ、遥か昔にお前の屋敷は動く鎧に襲撃されていたはずだぜ」
「それはありがたいのですが、聖の紋章持ちなら、怨霊系とか、邪霊系とか、殲滅しておいて欲しかったです!」
「まぁ、貴族なんて呪われてなんぼの商売だからな。ここ悪意の吹き溜まりになってる的なことを言ってたよな? 子孫に、浄化させるために紋章を譲ったんじゃねぇの?」
たしかに、死者が聖属性の力を使うのと、生者が聖属性の力を使うの。
その効果は大きな違いがあるはず。 そう考えるとアリスは、
「でも、それって、結局……ご先祖さまが地下で、何か悪い事を企んでいなかったら、こうなってないですよね!?」
そんな悲鳴のように、成仏したご先祖さまに恨み言を1つ。
そうして――――戦闘が始まる。
倒した首無し騎士。 しかし、彼は再動を始める。
「コイツは驚いた。まだやる気かい? それならアリスに変わって私が相手を――――」
「いや、もう良い」と首無し騎士はミゲールの言葉を遮った。
「なんでぃ! 最後まで言わせろよ!」と言うミゲールを無視した首無し騎士は、アリスの前に立つ。
既に、その手には槍は握られていない。 そもそも、殺意がない。
「その見た目、10才にも満たない若輩として、実力を見極めさせてもらった。
この先に進む実力あり……ならば、我が力を受け継がせたい」
首無し騎士は、鎧から籠手を外した。そこには紋章が輝いていた。
その紋章は『聖』の属性を有していた。
「この力があったからこそ……ワシは死後の身でありながら、この地に留まる事が出来た。秘密の地下。悪気の吹き溜まりとなる場所――――それももう終わりだ」
その言葉と同時に聖の紋章が、彼の腕から離れて宙に浮かんだ。
「マクレイガー家の守護神。その力を受け取るが良い――――我が子孫よ!」
アリスが持つ風の紋章。 それが刻まれた右手とは逆――――左手に聖の紋章が刻まれた。
それはまるで戴冠式のように健《すこ》やかであり、神聖であった。
普段から飄々としているミゲールですら、真剣な顔に
「紋章の譲渡……そんなことが、本当に可能なら、魔法界に革命が起きるぞ」
そんな事を呟いた。一方のアリスは、
「え? 貴方は一体……誰なのですか?」と訊ねる。
しかし、首無し騎士は答えない。ただ、微笑むのみ――――微笑むのみ!?
目を凝らせば、存在していなかった顔が現れている。
その顔をアリスは思い出す。 この地下に入って行く前、その入り口に掲げられていた肖像画。 そこの書かれていた人物と似た顔――――いや、本人そのものではないか!
「あなたは、まさか! マクレイガー家の初代さま!」
「――――」と首無し騎士だった彼は、彼の正体を答えない。
ただ、
「マクレイガー家は、代を重ねるほどに躍進を続ける! 地下で見守っていたワシが言うのだ間違いない。アリス…… アリス・マクレイガーよ! 常世にも、その名が届くのを待っているぞ!」
祝福の言葉。
それをアリスに送ると首無し騎士は――――初代、マクレイガー公爵は姿を消した。
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「わからん!」と答えたミゲールは、アリスの左腕を握ったまま、そこに刻まれた紋章を凝視している。
「完全な紋章の譲渡が、いや1割でも他者に受け継がせる技術があるとしたら……喜べ、アリス。お前のご先祖様は天才の部類だぞ」
「それほどですか!?」とアリスは驚いた。
「この技術が解析でき、1人の人間が生涯をかけて研磨した紋章の力を他者に与えれるようになったとしたら……。アリス、コイツは秘密にしておけよ」
「なぜでしょう?」
「その方法が明らかになったら、他人から紋章を奪う奴が出てくる」
ミゲールは、その悪意に対して顔を歪めながら、
「たとえ、どんな方法を使ってでも……そんな奴が必ずな」
そう付け加えた。
「では、この聖の紋章は使わない方がいいのでしょうか?」
「あぁ、帰ってから要研究だな。まだ、わからないことが多すぎる」
それから彼女は笑って、
「今、私が生涯を賭けて研究したテーマが決まった位の出来事だぜ!」
アリスは、自分の興味深く左手を見る。
(不思議……凄く馴染んでいる。まるで生まれた時から、体に刻まれていた紋章のように)
そんな事を考えている途中だった。彼女は気配に気づいた。
何かの気配……それを探るように警戒すると――――
「せ、先生、やっぱり聖の紋章を使いませんか? 具体的には、今すぐにでも」
「なんだ、どうしたんだ? そんな焦って……げっ!」
彼女たちの視線の先。新たなる魔物が現れていた。
朽ちた鎧が動いている。 動く鎧
死んだ人間の残留思念を動力に変えるタイプの魔物。
それが30体。 今は30体だが――――
「コイツは、やべぇぞ。軍勢を隠すための広間に動く鎧……コイツは先兵に過ぎない。アリス、お前のご先祖さま、いい顔して成仏していったけど、ここでどれだけ悪だくみしてきたんだ?」
「先祖の侮辱は止めてください。私じゃなければ殴ってますよ?」
「ごめん、ごめんって! たぶん、お前のご先祖さまが抑えてくれていたんだろう。そうじゃなきゃ、遥か昔にお前の屋敷は動く鎧に襲撃されていたはずだぜ」
「それはありがたいのですが、聖の紋章持ちなら、怨霊系とか、邪霊系とか、殲滅しておいて欲しかったです!」
「まぁ、貴族なんて呪われてなんぼの商売だからな。ここ悪意の吹き溜まりになってる的なことを言ってたよな? 子孫に、浄化させるために紋章を譲ったんじゃねぇの?」
たしかに、死者が聖属性の力を使うのと、生者が聖属性の力を使うの。
その効果は大きな違いがあるはず。 そう考えるとアリスは、
「でも、それって、結局……ご先祖さまが地下で、何か悪い事を企んでいなかったら、こうなってないですよね!?」
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