魔法令嬢アリスは星空に舞いたい

チョーカー

 マクレイガー家に秘密が見つかったようです

 アリスには師匠と言える魔法使いが2名いる。

 ミゲールとモズリーだ。

 最初の師匠、モズリー。彼女は、自分の次の師匠としてミゲールを紹介して去る予定だった。

 しかし、モズリーは今もアリスの家、マクレイガー家にいて住み込みの家庭教師をしている。

 『最強の魔法使い』ミゲールは、宮廷魔法使いであるため、マクレイガー家に住み着いて家庭教師をするわけにはいかない。 

 アリスは週に1度、王城に向かう。そこで2日間、ミゲールの指導を受ける。

 代わりにミゲールも週に1度、マクレイガー家を訪ねると、2日間アリスを指導する。

 モズリーは、ミゲールの指導の補佐的な立場でアリスの指導を続けることになった。

 そんなある日――――

 馬車に揺られて、外を眺めるミゲール。 マクレイガー家にアリスの指導へ行く途中だった。

 定期的に通る道。 なんてなく――――

(だるい…… 私が本気を出せば、馬車よりも早く長く走れるだけどなぁ)

 マクレイガー公爵の好意として、馬車の送り向い。 それを、自分で走った方が速いなんて理由で断るのは、貴族の礼儀としてあり得ない事なのだ。

(やれやれ、そう言うのが嫌で最強を目指したはずなんだけど……いや、なんだ? あれは?)

 彼女の視線。その先には廃墟のような建物。

(今まで、何度となく通ってきた道のはずだが、あの建物には気づかなかったな。廃墟になった神殿? こんな場所で?)

 何か、妙に引っかかるものを感じたミゲール。

 「あとで調べて見るか」と馬車を止めさせず、マクレイガー家を目指した。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

――――マクレイガー家――――

 到着。

 従者であるメイド。メイが馬車を向かい入れ、ミゲールを丁重に屋敷へ案内して――――

「いや、まってくれ。メイドちゃん」

「……メイドちゃん? 私の事でしょうか?」

「他にいるかい? 少し、屋敷をスケッチしていって良いか?」

「スケッチですか? 私の一存では答えかねます」

「そりゃそうか。急に客人が妙な事を言っても、メイドちゃんじゃ判断できないか」

「よろしければ、主人へ許可を求めて――――」

「いや、良いよ。勝手に書くから。アンタは『止めたのですが、嫌がる私を無理やり乱暴を……よよよ』って言ってくれれば大事にならないだろ?」

「いえ、大事になるとしか思えませんよ。やるのなら誰にも見つからないように……内緒ですよ」

 そう言ってメイは悪戯っ子のように舌を出した。

「いいね。私好みのメイドちゃんだ。もし、ここを首になったら私の所に来な。結婚しょうぜ」

「永久就職は魅力的なお誘いですが、結婚するなら男性と決めていますので」

「おやおや、振られちまったか。人生で一度くらいはメイドちゃんと結婚した人生だったぜ」

「結婚を軽く考えるのはいかがなものですが……」

「ご忠告、痛み入りするぜ。さて――――」

 ミゲールは取り出したペンとメモ用紙。 素早く、屋敷をスケッチし始めた。

 素早いペンの動き。 短時間で精密な絵が完成していく。

「なにをやっているんですか、先生?」と背後から話しかけられた。

「おぉ、アリスか? 少し気になることができたんだ」

「気になることってなんですか?」

「まぁ、詳しい話は、茶を飲みながらにしようぜ? どうせ、モズリーも待っているんだろ?」  

2人……いや、メイドのメイを含めて3人は、移動する。 

室内、庭が見える場所。 

「なるほど、ここで私の奇行を2人で見ていたのか?」とミゲール。

「……自身の行動を奇行と意識しているなら慎んでくださいね」とモズリー。

「はん! 慎みなんて、私にほど遠い言葉なんて、みんな知っているだろ?」

「それで、ミゲール先生は何を書いていたのですか?」とアリス。

「ん~ お前は知っているか? この屋敷に続く道、途中に朽ちた神殿があるのを」

「神殿ですか? 確かにあります。昔、遊びに行った気がします」

「1人で屋敷を抜け出して」と彼女は付け加えた。

「相変らず、お転婆だな」

「お転婆ですみませんよ」とモズリーは、メイドのメイと視線を合わせて、同時にため息をついた。

 話しは続く。

 テーブルの上には、ミゲールが書いた屋敷の絵。

 加えて、屋敷の見取り図も並べられた。 それも、ミゲールが即興で書いたものだ。

「これに、何か気づく人はいるか?」

「……?」とアリスだけではなく、モズリーも疑問符を浮かべる。

「この屋敷は、西洋だけじゃなくて東洋の魔術も参考して作られている。風と水の流れ――――」

 内部の見取り図。ミゲールは赤いペンで上書きしていく……と

「外見と内部を見比べたら、一発だぜ!」

「これは……」とモズリーは驚く。

「……お父様に確認しに行きます」とアリスは席を立った。

 ミゲールが書いた線。 それはマクレイガー家に隠し部屋がある場所を示していた。

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