【BL】眠れない夜
体温 後編
まあ、それから無事に完走して帰宅して、いつも俺を心配してくれる両親に打ち明けてみた。
「俺、溶けちゃったみたいなんだけど……」
俺の説明にもなっていない言葉に、「溶けてるね」と父は軽く言った。
「えっとさ、これってどういうことなの?」
「今まで黙っていたけど、我が一族は雪女の血を強く引くんだ」
父が変なことを言い出した。
「ゆ、雪女……?」
「そうだ。お前はその特性が強く出てしまったみたいだな」
父が背中を撫でてくれると、俺の背中は綺麗に戻った。
「雪女の血を引いているのに、一年中寒がりって変じゃない?」
「どれほどの極寒にいようとも、今感じている寒さ程度にしか認識されないんだよ。だから、北極とか南極に行っても凍えることもない」
「はあ……、父さん、何言ってんの……?」
「雪女の血を引く者は、誰かに溶かされて死んでしまう可能性があるんだ。溶かす力を持つのは、火の属性を持つ妖怪……、火龍や火車や朱雀なんかが当てはまる」
こんな馬鹿なことを言う父は真顔であり、母も真顔のままである。
火龍や朱雀は妖怪ではないと思うのだが……。
そもそも妖怪とは何なのだ。
「あとは、雪女の血を引く者が心から愛する人に抱きしめられると溶けて、本物の人間になってしまうから注意だ」
「あのさ、何一つ理解できないんだけど」
「その内理解できるだろう。父さんと母さんは雪女の血を引く一族同士なのだが、お互いに恋をして二人して人間になり結婚したんだ。お前にもその内そんな相手ができるといいな」
「はあ……。で、火の属性の妖怪に溶かされると死ぬの?」
妖怪なんてこの世にいるはずないと思うが、一応質問しておいた。
「死なないよ。溶けたら、雪女の血を引く一族に触られれば元通りになるし。自分で触っても治るよ」
そうとても軽く言われてしまった。
溶けても痛くもないしつらくもない。自分でもなでなですれば治る。
だったら……。
後日、棚橋君がお礼と言ってハンカチをプレゼントしてくれた。
僕は棚橋君の手を掴んで、「ありがとう」と告げたら、「君の手、冷たくて気持ちいいね。僕、すっごい暑がりで……」なんて僕と真逆の体質を告げられてしまった。
本当に火の属性なのだろうか。
わからない。
だが、「俺は究極の寒がりだけど、棚橋君に触れると温かくて気持ちいいよ。じゃ、二人で気持ちよくなろう」なんて誘い出して、二人してデロデロに溶けて混ざり合った。
比喩ではない。
火の属性の人も溶けるんだぁなんて考えながらも、最高に気持ちいいデロデロのキスとハグを繰り返して、お互いの隙間を埋め合って、快楽に溺れた。
自分と相手の心身の垣根もまったくないくらい混ざり合ったのだ。
それを兄に見つかって、「自力で戻れないくらい溶けるのは禁止!」と怒られてしまったし、棚橋君の両親もやってきて、「溶けて戻るのって体力使うんだから、もうこんなことはしないで!」と体の弱い息子に懇願し始めた。
僕と棚橋君は見つめ合って、そして溶けない程度に少しだけ指を触れ合わせて微笑み合ったのだった。
「俺、溶けちゃったみたいなんだけど……」
俺の説明にもなっていない言葉に、「溶けてるね」と父は軽く言った。
「えっとさ、これってどういうことなの?」
「今まで黙っていたけど、我が一族は雪女の血を強く引くんだ」
父が変なことを言い出した。
「ゆ、雪女……?」
「そうだ。お前はその特性が強く出てしまったみたいだな」
父が背中を撫でてくれると、俺の背中は綺麗に戻った。
「雪女の血を引いているのに、一年中寒がりって変じゃない?」
「どれほどの極寒にいようとも、今感じている寒さ程度にしか認識されないんだよ。だから、北極とか南極に行っても凍えることもない」
「はあ……、父さん、何言ってんの……?」
「雪女の血を引く者は、誰かに溶かされて死んでしまう可能性があるんだ。溶かす力を持つのは、火の属性を持つ妖怪……、火龍や火車や朱雀なんかが当てはまる」
こんな馬鹿なことを言う父は真顔であり、母も真顔のままである。
火龍や朱雀は妖怪ではないと思うのだが……。
そもそも妖怪とは何なのだ。
「あとは、雪女の血を引く者が心から愛する人に抱きしめられると溶けて、本物の人間になってしまうから注意だ」
「あのさ、何一つ理解できないんだけど」
「その内理解できるだろう。父さんと母さんは雪女の血を引く一族同士なのだが、お互いに恋をして二人して人間になり結婚したんだ。お前にもその内そんな相手ができるといいな」
「はあ……。で、火の属性の妖怪に溶かされると死ぬの?」
妖怪なんてこの世にいるはずないと思うが、一応質問しておいた。
「死なないよ。溶けたら、雪女の血を引く一族に触られれば元通りになるし。自分で触っても治るよ」
そうとても軽く言われてしまった。
溶けても痛くもないしつらくもない。自分でもなでなですれば治る。
だったら……。
後日、棚橋君がお礼と言ってハンカチをプレゼントしてくれた。
僕は棚橋君の手を掴んで、「ありがとう」と告げたら、「君の手、冷たくて気持ちいいね。僕、すっごい暑がりで……」なんて僕と真逆の体質を告げられてしまった。
本当に火の属性なのだろうか。
わからない。
だが、「俺は究極の寒がりだけど、棚橋君に触れると温かくて気持ちいいよ。じゃ、二人で気持ちよくなろう」なんて誘い出して、二人してデロデロに溶けて混ざり合った。
比喩ではない。
火の属性の人も溶けるんだぁなんて考えながらも、最高に気持ちいいデロデロのキスとハグを繰り返して、お互いの隙間を埋め合って、快楽に溺れた。
自分と相手の心身の垣根もまったくないくらい混ざり合ったのだ。
それを兄に見つかって、「自力で戻れないくらい溶けるのは禁止!」と怒られてしまったし、棚橋君の両親もやってきて、「溶けて戻るのって体力使うんだから、もうこんなことはしないで!」と体の弱い息子に懇願し始めた。
僕と棚橋君は見つめ合って、そして溶けない程度に少しだけ指を触れ合わせて微笑み合ったのだった。
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