詩「夏の反射」

有原野分

夏の反射

窓ガラスが震えて/水滴のしたたり

情けない顔が反射する夜
透けて見える町の灯りが/恋しくて
遅れてやってくる重低音
一発、響いた/
直後//
ぼくを透かした/花火が遠くで弾けて見える
閉じる/
透かした窓ガラスと
 そこに映る自分の顔を
  /透明な夜空に
         /記憶の雨
              その飛沫/

もしもぼくたちの青春が夜だったらきっとこの町の人間
 はみな優しさを忘れていないはずだ

/そうだろう?
扇風機の風の音に/負けている夏の
止まったままの/影
その声/
白い煙が故郷の波のように揺れながら

消えていく
夏//
きみの肩の向こう側に映る/言葉にできない面影
/固まっていく
 汚れのついた靴
  /鳥
     真夜中の/
           終電の
              /くたびれた形

ついさっきまで口ずさんでいた歌のメロディをぼくはも
 うすでに忘れていてふと見るきみの横顔さえ怪しく思
 えてしまうのはきっと過去という概念をようやく認識
 してしまったからでその現象を成長というのかもしれ
 ないけれど

/情けない心象だった
破裂音に/夜空が生まれていく
切り取られた屋台の匂い/
ぼくは嘘つきだ
/言葉の落下地点に
// 
 きみが反射して

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