東京では皆一様に夜が暗い

ふかふかね

「じゃあ最後の三つ目は何だい?」

「じゃあ最後の三つ目は何だい?」
すると妻はちょっと笑って言った。
「それはね、貴方に憑いているもののせいじゃないかしら?」
それを聞いた途端、私の中で何かが音を立てて崩れたような気がした。

「だってそうでしょう? 貴方は小さい頃から霊感が強かったんですもの。それに大人になってからも色々と苦労してきたでしょう?だからそういう悪いものが寄って来るんだわ。だからそれを追い払おうとしたんじゃないかしら?」
そこまで言われてしまうと返す言葉もなかった。確かに思い当たる節はあったし、何より実際に体験したのだという事実を目の前に突きつけられてしまっては認めるしかなかったからだ。だがそれと同時にある疑問が浮かんだ。
「それじゃあ君はどうなんだ? どうして君も一緒なのに無事だったんだい?」
すると彼女は笑いながら答えた。
「それは簡単よ。だって私は何も感じないもの」
それを聞いて私も笑い出した。何だか可笑しかったのだ。自分達夫婦だけが苦しんでいると思っていたのが大違いだったからだ。そう思うと急に気が楽になってきた。そこで早速翌日警察へ行って相談してみたところ、やはり同じような見解であった。どうやら私の周りでは昔から時々こんな事が起こっていたらしいのだが、ここ数年は特に多くなっているような気がするというのである。それで今回のような事件が起こった場合には出来るだけ協力するようにとのお達しがあった。ただ一つだけ気掛かりなのは、何故今まで黙っていたのかという事だったが、それについては曖昧な答えしか返ってこなかった。何でも昔に比べるとそういったケースが多いらしく、いちいち記録を取っていたわけではないのではっきりした事は言えないらしいのだ。しかしともかくこれからは気をつけるようにと言われただけだった。

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