相談に訪れた

「すると、被害に遭った人は皆この家に住んでいた人たちということなんですね？」
寺田博士は念を押す様に訊ねた。
「そうなります」
「じゃあ家族は？」
「居りますが、一人だけ行方不明になっております」
「何という名前の方ですか？」
「確か……広重さんと仰いました」
「えっ！？本当ですか！？」
その名前を聞いた途端、驚いた表情を見せた私に、警官たちが怪訝そうな顔を向けたので、私は慌てて誤魔化した。
（まさか……）
私は心の中で呟いた。何故なら、その名は嘗て私の助手をしていた人物の名前だったからだ。彼は今年三十歳になる筈だから、年齢的にも合うし、何より苗字が同じなのである。もしやと思い訊ねてみたところ、やはりそうだった。私は彼に連絡を取ってみたものの、電話にも出ないし、アパートを訪ねても留守だったので困っていたのだが、どうやら行方をくらましたままになっているらしい。警察に通報しても悪戯扱いされるのを恐れて黙っていたそうだが、もう一週間以上経っているのでそろそろ限界だろうということで、こうして相談に訪れたのだった。
私は彼らに礼を云うと、そのまま宿に向かったのだが、途中何度も後ろを振り返ったことを記憶している。何故ならば、先程からずっと誰かに尾行されている様な気がしてならなかったからだ。しかし振り返ってみても誰もいないので気のせいかと安心しかけた時、耳元で囁く声がした。
「おい……！俺だよ……！」
驚いて振り返るとそこには文雄君の姿があったので更に驚いたものだ。
「どうしたんだい？まだ寝てなかったのかい？」
「うんにゃ、ちゃんと寝たよ。そんで起きてみたらあんたがおらんかったんで探しに来たんや」
「そうかあ。済まなかったねえ」
「いや、別にええけどさあ。それより一体何があったんや？」
「いやね、ちょっと気になることがあってね」
「気になることって？」
「実はね……」

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