御解迦説話集

ふかふかね

体の不調

ある者がお解迦様の弟子となり、照教を修行して来ましたところ、ある時、お解迦様にお会いしたいという人たちが現れました。それは遠い国の王様や王妃といった方々ばかりでした。皆それぞれに大変な病気を患っており、どんなに名医でも治せないという有様でした。もちろんお医者さんたちは、いろいろな薬や治療法を教えてはみたものの、いずれも効きませんでした。しかしお解迦様のお教えは素晴らしいものですから、何とかなるのではないかと期待なさったわけです。それでお解迦様をお招きしようということになり、わざわざ遠路はるばるやって来て下さったという次第でございました。
お解迦様はそれらの人々を見て、大変感心なされ、彼らを招き入れられ、病人たちの手当てをして差し上げることにされたのです。そして御自分が今までに教えられた事を詳しく語って聞かせ、また治療のための処方箋をお授けになりました。
ところでこの時、一人の弟子はふと気がつきました。それはこの国の人々だけでなく、遠くの国からも大勢の方々がやって来られているという事でした。そこで彼は言いました。「これはどうも不思議だ。いったいなぜこんなに大勢の人々がやって来るのだろう」と。その言葉を聞いた他の弟子たちも、同じように思い始めました。「そうだ。これは一体どういうことだろう」と。そして皆で話し合ってみましたところ、ある一つの結論に達しました。「もしかしたらお解迦さまの教えを聞きたくて、ここまで大勢の方々がやって来たのではないだろうか」と。
確かにその通りではありましたが、しかしそれだけではありません。実はその国には、一人の王子がいて、この国の人々の尊敬を一身に集めていたのですが、この王子様も重い病にかかってしまったのでした。ですからどうしてもお解迦さまに診ていただきたかったわけなのです。そこで多くの人々が、遠くから遥々訪ねて来たという訳だったのでございます。
さて、こうした事が次々に起こったため、とうとう御解迦様は困ってしまわれました。そしてこうおっしゃられたのです。「困ったものだね。私はもうこれ以上、何もしてあげられないよ」と。ところが弟子たちが言いました。「いいえ、まだ方法があります」と言うのです。そしてその理由を説明しました。
まず第一に、この国中のあらゆる国々から集まって来ている人々を全部集めてください。そして一人一人順番に見て行きます。次に身体の調子の悪い所や悪い所を順に聞いていきます。さらに心の悩みなども聞いていって下さいます。最後にその方たちに、それぞれ正しい処方を書いてお渡しになります。そうすれば誰一人として、助かる人はおりません。何しろ誰もが正しく書かれているのですから……。
けれどもこれには欠点がありました。まず一つ目は、とても時間がかかり過ぎるという点です。もし一度に十人や二十人の人しか助けられないとすれば、とても時間が足りません。それにもう一つは、とてもお金がかかる点です。なにしろ高価な薬を配らなければならないからです。これでは到底生活が立ち行かなくなってしまいます。結局、誰も助かりたくないと思ってしまっては元も子もありませんし、それにお金をたくさん使ってしまえば、その分貧しい人たちに施しをする事が出来なくなります。けれども幸いにも、そのような問題はありません。なぜなら、お解迦さまは無料で人々に教えていらっしゃるからです。ですからこの方法でしたら、何の心配も要りません。
そうしていよいよ実行に移されましたところ、何と驚いたことに、すべての患者さんを助ける事が出来たばかりか、費用の方も全くかからなかったのでございます。しかも驚くべきことに、この方法は世界中で行われていたのです。その結果、なんと何百万もの人が救われたそうです。

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