真相

木陰で休み、お嬢様と僕は、このリビード街で起こった事を叔父さんに話した。

叔父さんは静かに話を聞き終わると

「なるほど…そんな事があったんだね……。2人とも…！よく生きていてくれた！！

そんな状況で本当に危なかったな！！」
と叔父さんは、改めて僕達を抱きしめた。

「あのデカい胸の双子ハンター達から何なんとなく察してはいたが…。

鴉になってる間は全容がつかめなかったからね」

「男は逃げたけど……。お嬢様を自分の妻にするって言ってて……！

そんなの許せませんよ！」
と思い出しても腹が立つ。

「でも…僕は結局何もできなかったけど……。あの男との力の差がこんなにあるなんて……。

殺そうと思えば、僕達なんか直ぐに殺せたのに、あの男は敢えて僕達を殺さずに逃したんだ……！

情けない！お嬢様を守ると言いながら、僕は……！動けなかった！！」
後悔してもしきれない！！
男の恐怖に僕は負けたのだ。
すると叔父さんは僕の肩を掴み、

「ヴァレン……。自分を責めるな……。相手は真性ヴァンパイアなんだろう？

能力は万能で、それに不死身だ。敵わなくて当然だ」
と叔父さんは僕の背中に手を置く。
本当はわかっているんだ。
あの男にゴミと呼ばれ、動けなかったのも事実。

お嬢様も下を向き、震えているようだ。

「それにしても、お祖父様おじいさま以外にも、やはり真性ヴァンパイアは生きていたのか……。

大昔にハンターの組織とやり合って大分だいぶ数は減ったと聞いたことがある。

これは一度、ヘドマン家けに帰らねばならないな」
とアッサール叔父さんは言う。

「ヘドマン家けに資料でも残っているのですか？」
と聞くと叔父さんは

「兄さん…、お前の父さんなら家長かちょうだし何か聞いてると思ってな。それにイェルハルドさんも何か知ってるかもしれないし…」

「なるほど、確かに」

するとお叔父さんはお嬢様を見て、にやりとして、お嬢様はそれに赤くなる。

「わ、わ、私はそんな！！」

「ちょっと！叔父さん！何考えてるんですか！？まさか僕のお嬢様で変な想像を！？」

「違う違う！
うちの家族に、お前の将来の嫁さんの、お嬢様を紹介できると思うと、私も嬉しくてね！！」

か、家族に……お嬢様を紹介！！？
お、お嬢様が僕のお嫁さん！！
一瞬、可愛いフリルのついたエプロンを着るお嬢様の姿が脳内で現れた！！

「だっ、だから！私とこいつはな、ななな、なんでも……、お、おい金髪！！勝手に妙な想像するな！！」
と真っ赤になり否定されたが

「それはいいですね！！きっと皆みんなに紹介したら喜びます！！流石叔父さん！！」

と叔父さんは拳こぶしを突き出すから、僕も叔父さんと拳こぶしを合わせた。

「おいい、人の話を聞けよ！このバカ共ども！！」
とお嬢様が突っ込んだが、家族にお嬢様を紹介する日が来てしまうのかと思うと、にやけが止まらなかった。

「とりあえず、あの双子達からも情報を聞き出さないとな。私の美味しい料理で陥落して喋らせてやろう」

「別に操れば早い事なのに」

「それは最後だ。私たちだってあの子達には酷い目に遭わせられたのだからね。少しぐらいは意地悪してもいいだろう？

基本的には女の子には私は優しいのだが……少々度が過ぎたようだからね」

それは確かにそうだ。お嬢様や僕達の自由を奪い、この数日は屈辱だったから、少しは反省してほしいと思う。

「それじゃ、買い物も済んだし、大体の事情はわかった。

そろそろ戻るかい？
それともヴァレンとお嬢様2人で仲良く戻るかい？

ああ？それとも2人慰め合う時間も必要かな？」
と言う叔父さんに僕とお嬢様は真っ赤になる。

確かに怖がるお嬢様を僕が優しく慰めて差し上げるのもいいかもしれない！
叔父さんが気を使ってくれると……。

足踏まれたふまれた。

「さっさと戻るぞ！！変なことばかり考えるな！！

ただでさえ街の奴らが通りかかると余計な声がするんだから！！」
とお嬢様は歩き出し、僕達もそれに続いた。