恋人のフリが最高すぎます

朝の陽の光を避けながらも、僕達は朝食を取るため、カフェに向かう。双子達も後ろからついてきた。

一応、2人は返り血の付いた服を着替えて、替えの服を持っていたようだ。そちらはシスターとはわからない普通の町娘の服装だった。
宿で部屋を貸してやり、着替えたのだ。大きな十字架じゅうじかやらも僕達の部屋に図々しくも置かせてやっている。
あんなの昼間に持ち歩くと目立つし…。

僕はお嬢様の肩を抱き、恋人らしく振る舞った。

「シンシア…疲れない？」

「エレンこそ…」
とそれにうっとりする。演技とは言え、お嬢様の肩に触れられるなど幸せすぎる！！

「おい、調子に乗るなよ…。ただの演技だからな！金髪」
とヒソヒソ声でいつもの調子に一瞬戻られる。

「わ、わかってます。演技ですよね」
と言うが、もはや幸せでどうしてもニヤニヤしてしまう！

後ろの双子達から、何故か殺気みたいなのを感じる。

「くくく、ざまあみろ……」
とお嬢様がボソリと言った。

カフェに到着すると、席につき、それぞれ注文した。

サンドイッチとベーコンエッグ。新鮮なサラダとスープが4人前運ばれる。この双子は金かねを持っていないらしく、仕方なく奢ることにする。

双子達はお腹が空いてすいていたのか、サンドイッチに夢中でかぶり付いていた！！

ココの食べ方がまるで野生動物かと思った。

「ち、ちょっと！ココ！もうちょっと上品にお食べなさい！全くあなたは！！」

「もぐもぐ……。ゴクゴク……。ミア！美味しいよぉ！！美味しいよぉ！！
2日ぶりだよお！！」

「……2日食べてなかったのですか？」

するとミアは恥ずかしそうに

「旅の途中で…お金おかねと一緒に食料しょくりょうを……川に落としてね……。退治道具だけは死守したんだけど…」
と言った。
どんな道通ってきたんだ……！？

お嬢様が心を読んでるのか一瞬鋭い視線を交わした。

しかし、何でいつもの片眼鏡を外してリボンとか付けてるのか、よくわからないが、とりあえず可愛い！！

内心喜んでいるとテーブルの下で足を踏まれつつも、

「エレン…気分はどう？気持ち悪くない？」
とハンカチを出した。

「え…ええ。シンシアが側そばに居るから、気分がとても良くなってきました」
と言うとお嬢様が嬉しそうに頰ほおを染めて

「エレンたら…、良かった…。じゃあサンドイッチどうぞ？」
となんと！お嬢様の手からサンドイッチが僕の口に！！

これは！アレじゃないか！？恋人達がする【あーん】ってヤツ！！！！

サンドイッチは千切ってちぎってなくてそのままだけど。

しかし心を読んだお嬢様が、慌ててサンドイッチを一口ひとくちサイズに千切ってちぎってくれた。

え？なんのご褒美？？

嬉しくて口を開けたら、横からココがパクんとそれを食べた！

わあああ！！
な、なんてことをををを！！

折角のお嬢様の【あーん】を邪魔された！！

「うへへへ、美味しい！！」
こっ！この卑しい女め！！
睨み付けるとミアが

「エレンくん？なんなら私がお口で食べさせてあげましょうか？サンドイッチ…」
と舌舐めずりしたなめずりをするミア。
お嬢様が少しムッとしたが、また演技なのか、ウルウルしながら

「エレンのことは私に任せてください…。もうお礼はしたので、私達立ち去りたいのですが」
と言うとミアは

「まあまあ、いいじゃない？少しお話を聞いてよ？それにエレンくんは本当に貴方あなたの恋人なのかしら？」
とミアは言う。

「どういう…、意味でしょうか？私とエレンは恋人ですが…？」

「……ふぅーん？そう？ならどこまでいったの？もう寝た？」
と恥ずかしげもなく言う。

「なっ！！なんてことを！」
とお嬢様が赤くなる。一体ミアはどんな想像を？

「恋人なら言えるでしょう？それともフリなのかしら？？」
とニヤリと笑う。

「…そんなことないです！

わ、私とエレンは…！

こ、恋人で…！

あの…恋人だし…」
と泣きそうな演技をするお嬢様。

演技とは言え、お嬢様を泣かせるなんて許せん！このデカ胸シスターハンターめ！

「そ！そうです！疑うなんて酷い！ぼ、僕とシンシアは相思相愛なんです！！」
と手を握り片手でお嬢様を引き寄せる。

「エレン…。ありがとう…。

わ、わわ、私もエレンの…

こ、こと…好きよ」
と恥ずかしそうにもじもじと言われて可愛さで僕はもう昇天するんじゃないかと思った！

だって、お嬢様の口から、すすすすすす、好きとかああああ！！たとえ偽名でも嬉しすぎるだろおおお！！

いくら演技でもその破壊力は凄かった！！嬉しすぎて死ぬ！！恋人のフリ最高！！

お嬢様にまた足を踏まれたが、もはやご褒美！！

「寝たかって聞いてるのよ」
とミアは少し不機嫌になる。

「…なんで、そんな事を他人の貴方達あなたたちに言わないといけないのでしょうか？？

少し失礼じゃなくて！？」
とお嬢様が反論すると

「演技かもしれないじゃない？
だって私達…、エレンくんのこと気に入っちゃったから…！

欲しいのよ…！エレンくんとの子供がね！！」

とそう信じられない事を言い出した。