無情なるハンター

「おいおい！さっきから！もめてんじゃねえ！！

ギイイイイイイアアアイイアイイアアアアアアイイイイイイイイイイ！！！」

と例の奇声を発してくる男。僕は頭が痛くなったり、新月のあの吸血衝動が襲ってくる！くっ！！

「あらあら…。私を振るからよ。仕方ないわねぇ。金髪美形きんぱつびけいくん、これを使いなさいな」
と言って、小瓶を投げられる。

「これ…は！？」

「ふふ…ただの鶏の血よ。飲んだら少し治るんじゃない？」

「ありがたい…！」
僕は一気いっきに小瓶を飲み干した。すると冷静さが少しだけ戻ってきた。

「さて！じゃあ！私の失恋1回目の憂さ晴らしに付き合ってもらうわよ？醜い穢らわしいバケモノ！」
とミアがココと同じように小袋に入れたものを投げつけ、咄嗟に黒い狼になり避けるよける男。
しかしミアは避けたよけた先を予測して、更なる小袋を投げつけて、それが狼の顔に打ち当たり、中身が顔にかかった！！

「ぎゃああああああ！」
狼がのたうちまわり、元の男に戻った。
全裸だ。

「あいつを抑えてくれない？」

「わかりました！！」
と僕は走りだし、道に蹲ったうずくまった男は、気付いて逃げようとした。

しかし少し動きが鈍くにぶくなったおかげで、とりあえず僕は、まるで爛れてただれて更に醜くなった男の頭を地面に沈めた。

「ぐああ！！」
ミアが追いついてきて、奴の周りに聖水をかけ、簡易的な結界を作り、不適に笑う。そして銀の剣で男が首元を隠していたマフラーのようなものを引き裂いた。

そこには……、くっきりと噛み跡が！

「そんな！こいつ…！真性ヴァンパイアじゃなかったのか！？」
と驚くと

「ふふふ…。そうよ？

だって真性ヴァンパイアがこんなに醜い男のはずないでしょう？

たまたま本物の美形真性ヴァンパイアの血がこの男の体に合って、隷属になってしまった哀れな男よ！

知性が残り、不死身になり、更に自分の手下を増やした結果がこれってわけ」
なんてことだ…。
この男は真性ヴァンパイアじゃなくて、中級の隷属ヴァンパイアだなんて！！

「さあ、首をはねて心臓を突き刺されたくなかったら…！

お前のご主人様の名前を言いなさい！」

「くくく！誰が言うもんか！というか言えないんだよ！！くくく！」

「あら…、そう？

ならば死んでもらうしかないわよ？？」
と剣を向ける。それでも男は吐かない。

「誰が！どこにお前らハンターの言いなりになるヴァンパイアがいる！？そこのハーフのバカくらいだ！！」
と言われてムッとする。

「もういいわ。飽きたわ。がっかり。死ね！」
と言うと、ミアは聖書を唱えつつ、銀の剣に聖水をかけると、剣に青い光りが灯った！！

「くっ！」
思わずこちらも気分が悪くなる光だった。
そして…、ミアは剣で一気に男の首をはねてしまった！

そしてすかさず、その心臓にと剣を深く刺し込むと、首だけの男が

「うぎゃあああああ！！」
と叫んで青い炎に焼かれながら灰になっていった！！

すると手下のヴァンパイア達も同じように次々と青い炎に包まれてしまい、灰になっていく。
ココがやってきて

「やったね！ミア！！」
とパンと手を合わせた。
この人達…、とても危険で恐ろしいと感じた。確かに男は許せないけど…。

この人達も多分凄く危険だ。

さらに倒れてる女の人も噛まれて、間も無く死んだが、蘇る可能性があると言い、ミアは銀の剣で彼女の心臓を目掛け、平気な顔でぶっ刺していた。
確かに…蘇るかもしれない…。

でも、行方不明になった家族は心配して探したり泣いたりしているはずだ…。
なんとも思わないのだろうか？
バケモノになるから、ただ殺せばいいと…。

女の人の血を浴びた双子のシスターは…、やはり僕には恐ろしかった。むせ返るような血の匂いが怖い。

まるでバケモノ。

そして僕の中にもバケモノはいるのだと恐ろしく、気分が悪くなる。

「さて？では行きましょうか？」

「え？」

「私達疲れちゃったの。休みたいのー！？」

「お金持ってないんだよね！アハハ！」
とココが笑い

「え！？」
と僕は瞬きした。

「美形くんも殺されたくなかったら…、お金おかね貸して？？」
とミアが返り血の血塗れの身体からだを寄せてウインクしてきた。

僕はそれにゾッとした。