【コミカライズ】ヴァンパイア執事はお嬢様に心を読まれています

黒月白華

ヴァンパイアが出る街?

洞窟を出て、再び山を下るくだる僕とお嬢様。

二人とも無言だった。
いや、僕の心の声はたぶんお嬢様に筒抜けだけど!

内心ちょっと?

いや、かなり恥ずかしい。

だって!さっき僕達は熱いキスを交わして一生離れないと誓い合った!

これってもう…!ついに!!お嬢様と僕は正真正銘の恋人同士と言っていいだろう!!

いや、もう恋人だし、

パウラ様。

パウラさん。

パウラ!

と呼び捨て…。

と妄想を繰り広げていたら、後ろからどつかれた。

「や、やめろ!!あれは!!ちちち、誓いのキスだ!恋人同士のそれとは違うから!!」

「えっ!?ち、違うんですか!?」

一体どう言う事だ!?
さっきのはどう考えても恋人同士が愛を誓うような、そんなやつだと思ったけど…!?

もしや違うのか!?

そ、そう言えば…!
騎士様が誓いの忠誠を誓う証として、主人にキスすると言う習わしがあったな!騎士じゃないから、よく知らない。

「それと似たようなものだ!残念だったな!金髪!あれは単なる契約のようなものだ!!」
とお嬢様はバッサリ言いきった。
なんだ…違うのか…。残念すぎる。
お嬢様はちょっと赤くなりつつも、しらけた目でこちらを見ているから、やはり違うのだろう。気持ちが通じたと思ったのに!

ああ!でも名前を呼ばれたのは心地よかった!また呼ばれたい!!

《お嬢様!いつでもこの僕をヴァレンティン…、いや、ヴァレンと愛称でお呼び下さいください!!》

と想っていると、スネを蹴られた。

「おい、金髪!街が見える」
と山を降りて、その先の少し行った所に街が見えた。

「おお!!ようやく国境を越えて、最初の街ですね」

「お前、かねはあるんだろうな?いいか。お前みたいな天然のバカは、街に入ると怪しげな連中に騙されて、かねを盗られるから、常に気を抜くなよ!」
とお嬢様に忠告された。うーん、知らない街だから、ちょっとワクワクしていたけど確かに悪い人もいるよな…。気を付けないと!

僕はお嬢様の手を掴むと、いきなりで驚いたお嬢様は

「は!?ななな!何してんだこら!?」
と慌てて離そうとするが

「ダメです!お嬢様!悪い人がいるかもしれないんですよ!?

それにさっき約束したでしょう?一生離れないと!許さないと!僕ももうこうなったらお嬢様から離れませんのでお覚悟を!」
とにっこりして言うと、お嬢様はみるみる顔が真っ赤になった。

「こここ、この!天然め!!

くっ!抗議しても無駄なバカ!…と、とにかく向かうしかないか……」
半ば諦めたお嬢様は、そのまま手を繋いで僕と街へと向かった。少し遠いから、また動物に変身しようと思ったけど途中で行商人の馬車が通りかかり、小太りのおっさんが

「ほほう、兄さん達。あの街へ行く気かい?」
と聞いてきた。

「…ええ、旅の途中でして…」
と言うと

「いいぜ、乗ってきな。俺もちょうどあの街で商売するからな!」
と言う。お嬢様は小声で

「大丈夫。こいつはどうやら、普通の商人の様だから、安心していい」
と耳元で呟いた。

お嬢様のお声が直接耳にかかり、ゾクゾクしたけど、普通の商人と聞いて安堵する。
お嬢様こういう時、悪人かそうでないかを見分けられるの凄くない!?

流石僕のお嬢様だ!!
と想ってると、また赤くなり

「さっさと乗りやがれ!!」
と蹴られた。


それからしばらく、おじさんの隣で僕は話を聞いた。因みにお嬢様は馬車の中で酔ったのか、寝ている。

「え?あの街にヴァンパイアが!?」

「そうさ、出るんだってよ?

まあ、そんなものいるのか知らないけどよ?噂じゃ、どうも若い女、子供の行方不明や死人が多発しているらしいぜ?

行方不明になったと思ったら、体内の血を吸われて、カラカラに干上がって死んでいたり、蘇って襲いかかってきたりするのを目撃した奴がいるってさ。

だからどうもヴァンパイアの仕業ってことになってるらしいな。

首元に噛まれ傷が見つかってるせいで、ヴァンパイアだって騒いでるらしい。まあ、俺はどっかのいかれた殺人鬼だと思うけどね?

くくく…どっちでもいいけどお前さんたちも気を付けな?」
とおっさんが怖い顔して脅してくるが、隣にいる僕はヴァンパイアの子孫ですよ!!とかは言えない。


ヴァンパイアか…。体内の血をカラカラになるまで吸って殺したり、蘇り人を襲うか…。

それが本当ならあの街に本物の純血のヴァンパイアがいるというのか!?それとも本当にただの殺人鬼だろうか?

純血の不死身のヴァンパイアが生きているなら、人間を単なる食料しょくりょうとしか見ていないだろう。蘇って見境なく人間を襲うのは、知性を失った下級ヴァンパイアの特徴だ。つまり自分から目を逸らし、撹乱させる為の駒のような扱いだ。

うちのご先祖とは違い、危険なヴァンパイアだ。純血ということは昼間は活動できない筈だ。

「兄さんどうした?難しい顔をして?そんなに怖かったかい!悪かったな?デマかもしれないから気楽に行こう!」
とおっさんが謝る。

「いえ…。おじさんも気をつけてくださいね」

「ああ!大丈夫!うちはニンニクとかいっぱい詰んでるからな。ついでに聖水も教会に運んでるしな!」
と言う。

へえ、せ、聖水積んでるのかこの馬車。因みにダンピールである僕には、聖水の効きはそんなに無いけど、流石に直接かけられたりしたら、ちょっと痺れるし、気分も悪くなる…。ニンニクは不味いから食べない程度だ。

純血のヴァンパイアには効き目はかなり強く痛がり、かけられた部分は数ヶ月治らないという。

下級ヴァンパイアには聖水をかけ続けると、元の死体に戻るらしい。

ヘドマンの執事、イェルハルドさんの様な中級の知性のある、隷属ヴァンパイアも大体、純血ヴァンパイアと同じくらいの効果があるとされている。

また、ダンピールである僕達は、死んだら不死身の純血ヴァンパイアとして1日経つと復活する為、死んだ時は棺桶に入れられた後に、1日経たないうちに火葬される。バケモノとして蘇らないように……。

これはお祖父様おじいさまが父に託した唯一の方法で、僕達子孫しそんのダンピールは、全員身内には死んだら火葬と決まっている。だからお嫁さんになる人達には自分の正体は、どのみち隠しておけない。

もし万が一僕が死ぬようなことがあったら……。

その時は愛するお嬢様の手で葬ってほしい…。




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