【コミカライズ】ヴァンパイア執事はお嬢様に心を読まれています

黒月白華

森の中のボロ小屋の一夜

とりあえず、捌いた野兎のうさぎを、きちんと焼いて調理し、味付けも丁寧に施して、お嬢様にお出しおだしして、お嬢様が小さな口に料理を運んだ。

すると、片眼鏡の奥の瞳が輝いた気がした。

「ふ、ふーん?あの料理長の甥だけあって、な、中々の腕じゃあないかっ!」
と言うから、美味しかったのかな?

「そう言えば、お嬢様は叔父さんの作った料理は、毎回きっちり残さずお食べになりますもんね!」

「うっ…。お、お前の叔父…、バケモノのくせに、料理は美味いから…」
と言うのでふふっと笑う。

「叔父さんは、子供の頃、

僕と同じ12歳の頃から働き始めて、

厨房で先代の料理長に料理を叩き込まれたらしいです。

僕も叔父さんは凄いと思いますよ。女癖は悪いんですけどね」
いつも違う女の人とデートをしていたなぁ。いまだ結婚してないし。叔父さんは前に

『結婚なんかしたら、自由がなくなる!!妻の尻に敷かれて睨まれるのは耐えられん!結婚すると女は変わるんだ!!

いいか、お前の父親の、スタッファン兄さんなんて見てみろ!スヴェアさんに頭が上がらない!』

『そんなのどこのご家庭でも同じじゃないですか?父さんは優しいし、何より女の人は弱いから大切にしないとって…』

『いやいや、結婚前はそうでも、家庭に入ると女は強い!!例えば料理はどんなに不味いものでも文句を言わないとかな、しかも異常に記念日にこだわってプレゼントを強請る!

めんどくさい!ああ!なんて面倒だ!結婚なんて面倒だ!』
と言い、頑なに結婚しようとしない叔父さんだった。

朝食が終わると、お嬢様が見つけたという、そのボロイ山小屋に行ってみた。雨風は確かに凌げそうだが、ボロイ!!
草が生い茂っておいしげって、長く使われていないのがわかる。庭には、一応、井戸らしきものがあった。
とりあえず扉を開けようとしたが、中々開かないので、押してみたら、ギシっと大きな音と共に壊れた。

あれぇ?

なに、怪力出してんだ!バカっ!!」

「うわ!す、すみません!後で嵌めておきます!!」

と言い、なかに入ろうとして、埃が舞い上がり、一旦お嬢様を外に出して、口元に布を巻いて、埃だらけの室内を見る。
やはり汚い。
これは…掃除が必要だ。

腕をめくり、僕はとりあえず窓を壊さないように開けて、落ちていた箒やブラシを見つけて、埃やゴミを掃いて、なんとか生きていた井戸から水を汲み、床をブラシでゴシゴシと磨き始めた。汚いベッドも一応あった。とりあえず水で洗い、干してみたけど、臭いくさいから雑巾にした。
代わりに持ってきた毛布を取り出して、綺麗にしたベッドの上にかけた。毛布は一枚しかないから、夜はお嬢様に使ってもらおう。僕は床でいい。

それからまた、持ってきた食材を使い、料理を作る。
いい匂いに釣られて、お嬢様がなかに入る。

「お前!掃除もできたのか!!」
と嘘みたいにピカピカになった部屋を見て言うから

「はあ?」
と言う。まあ、あの部屋にいて、掃除もできないお嬢様と比べたらできる方だと思っ…

「うるせえええ!一言余計なんだよお前!私だって、い、一応…」

「いえ、言ってません。心を読んだのはお嬢様ですから」

「ううう!!…ちっ!金髪の変態のくせに!」
とプイとボロソファー(掃除済みそうじずみ)に腰掛けて夕飯を待つ、お嬢様可愛い!

夕飯を食べると、お嬢様は眠くなり、ふいっとベッドに毛布と共に包まってくるまって秒で寝た!!

「…早っ!!」
眠るのは早いんだから!と僕もとりあえず床に寝転んで気付いた。

ハッ!
僕…そう言えば、好きな人と同じ部屋で寝ていないか?

そう言えば、屋敷で僕と同じ年齢の使用人しようにんから、彼は休日に初めて恋人と一夜を同じ部屋で過ごして、いかに素晴らしかったかを延々と惚気ていたのろけていた事を思い出した。

そうか、お嬢様と同じ部屋で寝るって素晴らしいことなのか!!と感動して眠った。

僕はお嬢様のように心が読めるわけではないので、この時チャンスがあった事に全く気付かなかった。

僕は…なんというかまぁ、いろいろとそっち方面にこの頃はまだ鈍かったのである。こんな歳をして。お嬢様一筋ひとすじで、他の人の恋愛に興味が無かった。

お嬢様の眠りを邪魔する気など一切無かった。だって睡眠は人間の三大欲さんだいよくの一つだから。




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