【コミカライズ】ヴァンパイア執事はお嬢様に心を読まれています

黒月白華

二人の逃亡生活

アッサール叔父さん宛と家族宛に、僕は書き置きを残した。

ーご迷惑をおかけして申し訳ありません。真実の愛に生きる為、僕は侯爵を出て行きます。どうぞ探さないでください。

とパウラお嬢様と愛の逃避行をしたい所ですが、

現時点で、お嬢様に、身の危険が迫っており、
侯爵を離れなくてはならなくなりました。

僕の大切な家族には、本当のことを伝えておこうと思い、書き記しておきます。

もちろん、落ち着いたら偽名を使い、手紙を出します。だから僕の事はご心配なきようお願いします!

侯爵の方には一応、カトリーナ様に、パウラお嬢様が8年ぶりに皆には秘密で療養に行きたいと仰られたおっしゃられたので、同行いたします。ご心配をかけ申し訳ありません。

などと適当なお手紙を残しておきます。

では、親愛なる僕の大切なご家族様、ご健康に注意して、安心してお過ごしください!!

ヴァレンティンよりー


と夜明け前、叔父さんの部屋の扉の隙間から手紙を滑り込ませておいた。


夜が開ける前に侯爵邸を抜け出して、二人手を繋ぎ、慎重に周囲を警戒して門を抜けて薄暗い街中まちなかを歩いた。

街の門を抜けて街道に出るが、日が昇る前に森のなかへと走った。

「それじゃ、今から僕は馬になるので、お嬢様は背に乗って下さい」
と言い、僕は馬に変身した。生憎白馬ではなく黒馬こくばだけど。だって白馬なんか目立つしね。

お嬢様に僕の服を拾って、鞄に入れてもらい、とうとう、パウラ様が僕の背に跨る。僕の背中にお嬢様のおし…

ベシッとお嬢様に叩かれて幸せを感じた。

「きもっ」

そして日陰の森の中をポクポクと歩き出した。

《寒くはないですか?》
馬のまま聞いてみる。まだ朝が早くて、森のなか薄らうっすら霧が立ち込めている。

「大丈夫だよ。それに全裸で歩いてるあんたの方が寒そう」

うっっ!!

《今の僕は馬ですから!それに別にあんまり寒くはないですよ》
動物に変身すると、体温も人間の時と変化するから感じかたも変わってくる。


「ふうん…」
それから歩き続けて夕方になる。
野宿を決めて申し訳なくなる。僕はしばらく人間に戻れないからだ。頑張ってまきになる小枝を口で加えて持っていくと

「唾だらけで火が着くか!!この役立たずめ!!」
と怒り、鞄から料理の本を取り出し、持ってきた包丁で手頃な石の台を運び、持ってきた野菜を刻んでいく、お嬢様。料理に慣れてないから野菜もぶつ切りだけど。

馬で申し訳ない。何も手伝えない。

《すみません…、お嬢様…。本来なら僕がお嬢様にお作りしおつくりし、食べさせてあげないといけないのに!》
と脳内でお嬢様の可愛らしい唇にスープを運ぶ姿を想像して、ポッとすると

「うええ!気持ち悪い想像するな!私はお前に餌付けされる気はない!!飯くらい自分で食べる!!」
と口の悪い、お嬢様は心底しんそこ気持ち悪そうに言う。
そんなお嬢様も中々可愛いけど。

「うるさい!この変態が!!馬なら人参でも食ってろ!!」
とガボッと人参を口に入れられた。
今の僕は馬なので、人参がおいしく感じられるし、何よりお嬢様の手から「あーん」される日が来るなんて!!嬉しい!!快感だ!!

「いや、今のどこが「あーん」だよ!この変態うま!!」
と罵られつつも、お嬢様が自身で作られた通称【ぶっ込み鍋】を平らげて眠くなったのか横になるお嬢様。大変だ。お風邪を引かれる。でも馬だし何も出来なくて眠った後、少しでも寒くないよう馬としてそばに蹲る事しか出来なかった。
朝になると

「馬臭えくせえ!!」
と言いながら鼻を摘まれた。

山を越えるまで後2日。今日もお嬢様を乗せて森を抜けて行く。
その日の夕方も、野宿とぶっ込み鍋で、お腹を満たすお嬢様。なにもできない僕だった。

それから朝になると、お嬢様の

「ぎええええええーー!!」
と言う声で目が覚める。
そう、3日目の朝、僕は馬から人に戻っており…、全裸でお嬢様を抱きしめていた。

「…おはようございます…。パウラお嬢様」
と微笑むと

「いや、全裸でいい顔して微笑むな!この金髪ど変態が!!」
と顔を赤らめ、頭を叩かれて、離れられた。

ああ!

お嬢様が…

『いい顔』

と!

確かに僕は美形だから、微笑むといい顔になるだろう!あと、お嬢様に裸を見られてしまった!これはまずい。昔と違って、僕も体つきが大人になっているから、大変失礼なモノをお見せしてしまった!

服を着なければ!

「お前…、天然なのか、バカなのか、真面目なのか、時々わからん!!」
と背中を向けているお嬢様に突っ込まれた。

それから服を着て、今朝は僕が朝食を作る。隠れていた野兎のうさぎの足音を聞いてなんとか捕まえた。

僕は時々、叔父さんから料理の仕込みなどを手伝っていたこともあるし、休日に叔父さんとキャンプに行き、野兎のうさぎを捕まえて料理を習っていた。

つまり普通に兎を捌ける。
と思っていたら

「ぎゃあああ!ぐえええ!わかったから料理に集中しろ!!変な想像するな!私は水を汲んでくる!」
と水を汲みに、お嬢様は近くのみずうみに出かけた。

「あ!そうか…屋敷を出たこともないお嬢様に、兎の捌きかたを脳内で僕は見せちゃったのか…。うーん、気を付けないと」
お嬢様はなんでも見えてしまうし、聞こえてしまう、サトリだから、なんにも隠せない。

というかこの8年。
別にお嬢様に隠し事など出来ないのは、わかっているから、むしろ覗かれるのは、もう普通になってしまった。

普通の人は気味悪がるだろうけど、僕はお嬢様を好きだから、頭の中も心の中も見られてもいい。

と思ってると、水の皮袋を抱えたお嬢様が戻ってきて、興奮しながら言った。

「お、おい!金髪!大変だ!あっちにボロイけど山小屋がある!人の気配ない!」
と言ったのだ。

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