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【コミカライズ】ヴァンパイア執事はお嬢様に心を読まれています

黒月白華

久しぶりの金髪(パウラ)

あああ…!!失敗した!!
やっぱり扉を開けるんじゃなかった!!

私は少しは部屋のなかを片付けてはいたが、それでもだらしなく散らばる物は沢山あったけど、それには目もくれず、ひたすら私しか目に入っていないようだ!


8年ぶりに見た金髪は…、凄く背が伸びていて、足も長くて、体型も少年から大人になっており、ルビーみたいな赤い瞳も変わりなく、か、顔もめちゃくちゃ美形になっており、なんか全体的にキラキラしてて眩しかった!!
思わずどっかの王子かよ!?と突っ込みそうになるのを耐えた!!いや、もしかしてバケモノの血の力で魅了とか働いてるのか!?

しかも嘘だろ?こいつ!!
こんな、女にモテモテだろうに、私の事8年も見ないで好きとか言ってたのかよ!

ボサボサの髪だし、流石に諦めるだろと思ってたら、抱きしめられるし、床屋とこや並みの腕前で、髪切られるし、ほおに、きき、キスはされるし、恥ずかしい告白はされるし、また抱きしめるし、極め付けに駆け落ち提案までしてくるから、もう恥ずかしすぎて死にたくなった!天然女ったらしか!!?

物語の王子様がお姫様にキスする話はいくつか読んだ。

だが、どう見ても私は姫じゃないだろ!?金髪の目がおかしいに違いない!いや、頭の方がおかしいのかもしれない!!

抵抗しても絶対に諦めないし、他の男との結婚は許さないとか言うし!!
心の声を聞いても、大抵私のことしかほぼ考えてない!!ベタ惚れぼれってヤツだ。

普通の奴は…どんなに良い奴でも同情で終わる。お義父様達おとうさまたちが最初、私に向けたように。それでも彼等は本当の親になろうとしてくれた。私の傷を見た彼等は泣いて、抱きしめた。

『本当の親より親らしく、…いや、パウラの親として育てる!

……契約書にも本人の死亡以外、なにがあっても結婚までは侯爵令嬢として育てることは決まっている。これはパウラを引き取る時の条件だけど、契約の為だけではない!

この子の心がいつか癒えるよう、私やイングリットが頑張ればいい』

本気でそう思ってくれたから、この人達の前では私も令嬢らしく大人しくした。

金髪はお義父様達おとうさまたちの代わりに8年分抱きしめると言った。

も、もう…金髪が……
まるで王子みたいに臭い台詞を連発し、心の声は私への熱い想いを語り、私はクラクラした。

傷持ちの醜い女の子だぞ!言葉遣いも悪いし!美人でもないのにどこが好きなんだか!?

それでも極上の笑顔を何度も向けられた私は、ついに観念して、こいつと逃げる計画を立て始めた。

真剣に地図を広げて、旅行をしている恋人同士を装い、街の門から出る手筈や、街道沿いの宿に泊まると、追手に見つかる恐れから、山道を通って危険だけど、森で野宿した方がいいなど、本気に考えて、山道は引きこもっていた私に辛いから、自分が馬に変身して歩くと言い出したりした。

思わず、黄金の立髪を持つ馬に乗るちんちくりんの私を想像して逆に目立つじゃん!
と笑いが出てしまった!
金髪はそれに驚いていた。

まあ、人前で笑うことなんてほぼないからな。演技以外は。

金髪はその後も、凄い気を遣って真面目に国境を越えようとしている。蝋燭の薄明かりうすあかりで金髪がとても綺麗に思えた。

絶対に国境越えても他の女から声がかかるに決まってるし!!

そして計画を遅くまで立てて、金髪は静かに出て行こうとする。

「少しでも眠って下さい。明日は太陽が昇る前にここを出なくては…。

僕はヴァンパイアの子孫と言っても、やはり太陽が少し苦手で、灰にはならないけど、日焼けはするので、なるべく日影を歩きたいし……」

「知ってるよ、そんなの…」

「あ…、そうですよね…」
心の中を覗けると言うのは本当に厄介。本人が隠しておきたいことも瞬く間にわかる。気持ち悪くないのかな?こいつ私の事。

でもそれはないか。

《お嬢様が僕の事を知って!?心を読んだだけかもだけど、僕の事を少しでも知ってくれてるなんて!!嬉しい!!》

と喜んでいた。

ロベルトお義父様おとうさまお義母様達おかあさまたちも、とても良い人達で、私の事をいつも心配してくれたけど、今はいない。私には頼る人が今、金髪くらいしかいなくて…。

つい強がりで、国境超えたら別れるって言ったけど…無理かも…。

引きこもり8年…流石に外を一人では不安しかない。

いくら心が読めると言っても、私は足は遅いから悪い奴に遭遇したら、逃げ切れるか自信がない!!
こんなことなら体力作りで、部屋で筋トレしておくんだった!!ひょろひょろだし私!!

私、一人でやってけないかも。で、でもそれじゃ金髪と結婚?

ひ!!

恥ずかしい!

金髪は美形だから、こんなちんちくりんの醜い傷持ちの女なんかと一緒になんて!

「お嬢様?どうかしました?」

「別に!?もう…寝る!明日は計画通りだからな!」

「はい!約束ですよ!」
と小指を差し出し。私はそれに絡めた。

意外と律儀で真面目なヤツだ。
そして本当に夜明け前に迎えに来て、荷物を用意して待ってた私を、こっそりと連れ出した。
にこりと私の不安を掻き消すように手を繋いだ。

ドキドキした。

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