【コミカライズ】ヴァンパイア執事はお嬢様に心を読まれています

黒月白華

旦那様とお話しする

明日聞きに行こうとしていたけど、例のサークス孤児院のカクライン院長のことで、バタバタしていた旦那様が忙しそうで、数日後すうじつごにやっと話をする機会ができた。

執務室で書類と格闘しながらも侯爵当主の、ロベルト・ヴィクトル・カッレラ様は

「やあ、ヴァレンティン。中々忙しくてね。例のカクライン院長だが、人身売買の他にも寄付きふを騙し取ったり、横領して使い込んだり、催眠術をかけ従わせたり…監禁や詐欺を働いたりと次から次へと悪事が明るみになってきてね…。孤児院にも借金がたくさんあり、近いうちに取り壊しになるんだよ」

「人は見かけによりませんよね。あのかたは優しい顔をした悪魔ですね」
ヴァンパイアの子孫の僕が言っても説得力はないけどうちの家系かけいは悪事を働いたことなどない。

「そうだな。最近はどうだい?パウラの様子は」

「えっと…。相変わらず部屋に引きこもっていますが…、た、たまに会話をしてくれる様になりました」

「なんと!凄いじゃないか!あの子が私たち以外に喋るだなんて滅多にないんだよ??」
驚いたように言う旦那様。

「アハハ…会話と言っても…ほぼ僕の悪口みたいなものですけどね…」
お嬢様は相変わらず…僕が部屋の前でノックをすると

「おはようございますお嬢様。朝食を持って参りましたよ。今日も開けてはもらえませんか?」

「変態の顔なんか朝から見たくないわ」
と言われて僕はショックだけど会話が成立した事に一応喜ぶと

「気持ち悪い金髪ね。さっさと立ち去って!」
と言われる。お嬢様は僕のことを金髪と呼ぶ。未だに名前で呼ばれない。

「かしこまりました。それではまたお昼に」
と少しガックリして去ろうとした時に

「ちょっと金髪」
と呼び止められた。

「は、はい!?どうかしましたか!?」
呼び止められるなんて初めてだ!!嬉しい!!

「嬉しがるな変態!……あんたに忠告しておいてあげるけど…。

マリアン!あの女あんたの事狙ってるわよ?…あの女もど変態で、毎日頭の中であんたを犯しまくってるわ。しかも特殊な方法で。

現実にならないように気をつけることね。まぁ化物だし大丈夫だろうけど。

あんた化け物で変態でもどっか抜けてる所があるあほんだらだから一応教えてあげたのよ。感謝なさい!話はそれだけよ!」
と口の悪いお嬢様は黙って僕が去るのを待った。

マリアンさんか。確かに、たまにギラついた目で僕を見てるし、それは単に僕が美少年だからだと思ってた。それに妄想も人それぞれだから気にしないけど。実行に移す人なんてそうそういないだろう。

「どうしたんだい?」
と旦那様に声をかけられハッとする。

「い、いえ!!お嬢様は…旦那様と奥様には心を開いてらっしゃるから…僕も至らないところは直したくて…旦那様達を見習いたいなとご相談したくて」

「つまりパウラへの接し方だね?」

「はい…僕は普通にしているのですが…」

「私たちも普通だよ。でもねあの子のことは本当に可愛がって、我が子のように思っているよ。カトリーナとティルダは元々恵まれた環境で育ったし、プライドが高く、少々我儘になってしまった。

パウラは今はまだ怯えているが、私はあの子がちゃんと前を向いてくれると信じている。私達の愛情を持ってきちんと向き合おうって妻と話した。きっといつか部屋から出てきてくれる。

大切なのは愛を持つことと信じることだよ」

「優しくするだけじゃダメってことですか?」

「優しさだけが愛ではない。時にはちゃんと叱るよ。でも直接話を聞いて、それから抱きしめてあげるとあの子は喜んでくれる。私達のこと本当の親だと思えるくらいには頑張ろうと思ってる」

「……僕にもできるでしょうか?信頼を得るために」

「ヴァレンティンならできるだろう。諦めずにあの子に話しかけてあげてくれ。そうだ!もうすぐ実はパウラは12歳となるんだ。

12歳と言えば、社交会デビューだろ?妻がね?あの子にちゃんとしたドレスを買ってやるって、着飾って前に出してやるって、張り切って前々からドレスを注文してるんだ。

届くのを楽しみにしてるんだよ」

「そうなんですか…12歳…。僕ももう少しで13です」

「ヴァレンティンにも何かプレゼントを考えておこう」

「わっ!そんなつもりで言ったんじゃありませんよ?旦那様お気遣いなく!」

「ハハハ!気にするな!気持ちだよ!!」
と旦那様は笑い、仕事に戻るといい、僕は部屋を出る。

そっか…。やっぱり、どんなに罵られても諦めず優しく接すれば、いつか部屋から出てきてくれるよね!なんだか頑張れそう!旦那様に話して良かった!うん!

と僕は頑張ろうとした時、後ろからハンカチを押し付けられた!!強烈な薬の匂いを吸い込んでしまい、僕は意識が無くなってしまった。

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