現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

計画のはじまり②

 アルマラン リシリューの部下ペネロペ カーキは、王女達との遊びを終え自宅に向かっていた。しかし、ラビュレス国の大貴族エバンズ公爵の部下であるエスピナス子爵に呼び止められる事となった。エバンズ公爵の命によりペネロペは公爵家の王都にある別邸に呼び出された。公爵という階級は宰相さいしょうであるリシュリュー侯爵よりも高い。ただの男爵家の長女のペネロペがこれを断る事は不可能だった。ただLv99の為に危機的状況にはならないとも思っていた。ペネロペは、警戒もせずにのこのこと別邸に着いて行く事になる。 

 それは別邸とは思えない程の大きな屋敷だった。ペネロペは玄関の横の待合室でお茶を飲まされながら待機していると、15分くらいで報告に行っていたエスピナス子爵が戻って来る。 

 エスピナスに奥の部屋まで案内されたペネロペは、待ち構えていたエバンズ公爵の姿を見て絶句した。エバンスの上半身は裸でベッドには2人の亜人女性が半裸で縛られ泣いているのだ。そして自分は体のだるさと眩暈めまいを感じていた。 

「よお。ペネロペ。待っていたぞ。一緒に楽しもうじゃないか。早く服を脱げ。」 

「エバンス閣下。いったい何をおっしゃっているのですか? 私は帰らせて頂きます。いくら何でもこれは酷すぎます。」 

「酷いだと? 帰れると思っているのか? お前はリシリューの部下。最近のリシリューは本当に思い上がりが甚だしい。そこで部下に八つ当たりしては? と、良い忠告をしてくれた奴がいてな。この場合、八つ当たりというか存分に楽しませて貰うぞ。」 

 ペネロペは部屋の扉を開こうとするが、もう外から鍵がかけられている。こちら側にも鍵穴はあるが鍵が無い以上開けられない。この部屋は外から鍵をかけられるタイプの監禁用の部屋だった。ペネロペは扉を蹴破ろうとするがここで力がまったく入らない事に気が付く。それどころか、体が痺れてまったく動かなくなっていた。お茶に入れられていたのは、およそ15分程度で衰弱すいじゃくと麻痺と沈黙ちんもくという長時間の状態異常を引き起こす高ランクアイテムだった。ペネロペのレベルが高くても、弱体化させられ、麻痺で動けずに、魔法も使えない事になる。 

「薬が効いてきたな。俺は抵抗されるのは嫌いなんだ。あはは。視力も奪っておこう。この眼鏡も外そうかな。」 

「やめて……ください。」 

 ペネロペは最後の力で、自分の眼鏡に手を伸ばすエバンズ公爵を押しのける。 

「やめてじゃねえんだよ。くそアマ。」 

 エバンズ公爵がペネロペの頬を叩く。 

「まあ、眼鏡はもういいや。次は服を脱がせてやる。」 

 服を脱がされながら、ペネロペの抵抗はもう終わった。体が完全に動かなくなったのだ。体は動かないがその瞳から涙があふれていた。 

「いいねぇ。その表情。抵抗されるのは嫌いだが、泣いてる顔を見ていたぶるのは好きなんだ。」 

 エバンズ公爵がゆっくりと服を脱がせていき、ペネロペの上半身は残り下着だけとなった。 

  

 その時、部屋のドアが一瞬で漆黒に包まれると粉々に砕け散っていった。そこからさっきまでエスピナス子爵だったものが投げ飛ばされる。部屋に入って来たのは黒衣を身にまとった痩せ型の男。ダークブラウンの長髪を後ろで束ねている。 

「エバンズ公。その女性からお前のうす汚い手を放しやがれ。」 

「デストピア卿! 貴様、いったい何をしている。」 

「お前の噂は聞いていたからな。その女性がここに入って、何分も出てこなかったからやむを得ず入って来た。そこでエスピナス子爵から話を聞いたぞ。お前等、外道にはもはや生きる資格も無い。さっさとその女性を離すんだ。」 

「貴様、公爵にこのような真似をしてただで済むと思うなよ。」 

「いや。お前は今ここで死ぬんだから死人に口無しだろ。お嬢さんも異存はありませんか?」 

「お願いします。助けて下さい。」 

「分かりました。」 

 デストピアから無詠唱で放たれた黒い球体は、エバンズ公爵の中に入り込み内側から全ての細胞を破壊し、エバンズ公爵は絶命した。 

「お嬢さん。大丈夫ですか? とりあえず麻痺しているという事でこの薬を飲んで下さい。動けるようになるまではこのマントを羽織って。」 

 5分後。ペネロペは状態異常を回復した。デストピア伯爵に何度もお礼を言い、恩返しをさせて欲しいと願いでる。 

「ここにいる亜人の奴隷もそうですが、亜人達を解放する為に俺はエバンスを見張っていました。近頃、私の他に亜人を解放しようとしている勢力と、それを阻止しようと亜人を抹殺しようとしている勢力がいるんです。私はその解放には大賛成なんですがその動きを狙っている勢力の事は倒したいと考えています。エバンス達から何か情報を得られませんでしたか? 本当はそれをエバンスから聞き出そうと思っていたのですが、あなたが可哀想だったので感情的になり殺してしまいました。」 

「亜人解放を阻止しようと計画している人がいるんですか?」 

「そうなんです。酷い奴らでしょう。そいつらが狙う場所でも分かれば対策も打てるんですが……。」 

「それなら力になれるかも知れません。私達が亜人を解放する勢力です。明日、A,B,C地点の奴隷商を襲撃します。それで亜人たちを解放します。犯人ならきっとその場所を狙うはず。持って行ってください。この地図にある三か所です。」 

 ペネロペはデストピアを信頼しきっていた。自分達が計画している亜人解放。その邪魔を企てる組織がいるとして、デストピア伯爵の力があればそれも容易たやすく排除出来る。今日、自分がエバンズ公爵に襲われたという事も、デストピア伯爵という強い味方を手に入れた事で、むしろ幸運だったのかも知れないとさえ思った。

「そうですか。情報ありがとうございます。今から警戒けいかいは私がするんで、あなた達は明日の計画を実行してください。頑張って下さいね。」 

「デストピア様。本当にありがとうございました。」 

「いえいえ。あなたが無事で良かったです。家までお送りしましょう。」 



 ***



  

 その日の夜。亜人の奴隷達を殺しに闇ギルドが動き出していた。基本的に闇ギルドは、奴隷制度や戦争などを推奨している。ゆえに奴隷の解放など絶対にあり得ないのだ。闇ギルドのマスターは、与えられたその情報に激怒し亜人達全員を殺す事を選んだ。 

「亜人達よ。迫害されし人類の犠牲者よ。今宵、汝らは全ての人類の為にその数を減らす事となった。我が名はキラー クラウン。闇ギルド、ラヴュレス支部のギルドマスターだ。」

「現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く