現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

中央大陸交流戦①

デストピア国。元帥と5大将軍という圧倒的な個に率いられ統率の取れた軍隊を持つ国。新しい国だが、現在は内政がやっと整った所で王都はとても賑わっている。この国は現在の世界が抱える情勢問題の台風の目だった。デストピアは、その一挙手一投足を世界中に注目されている。 

デストピア国は税金が高く、唯一税金の掛からない奴隷商売が、その抜け道として使われ頻繁ひんぱんに取引きされている。 秀人と心愛、カインとシエナ、フレイドはそんなデストピア国の王都を散策していた。

「嫌な国だな。奴隷商人と奴隷達がたくさんいる。フレイド。この国は、なんでこうなったんだ?」 

「デストピアは、兵士の強化に特に力を入れている国なんだ。内政を整える為にもたくさんのお金が掛かっていたのに、兵士が多くて、軍事費用がかなり掛かるんだ。だから、国民から重税を取りたて、税金の掛からない奴隷の商売が盛んになった。奴隷国家なんて言われているよ。」 

フレイドの説明を聞き、悲しさから亡国の王子が昔を振り返った。

「秀にぃ。ラヴュレスの頃は、こんな国じゃなかったはずだよ。」 

「ごめんな。カイン達の前で言葉を選ぶべきだったよ。いずれこの国も、どうにかしないといけないな。でも来てよかったろ? 少なくとも、俺達のやるべき事は見つかった。」 

「そうだね。でも、これはこれ。僕はずっと秀にぃと一緒に仕事をするよ。」 

「うん。私も、秀サマから離れないわ。」 

カインとシエナは、この国の事を憐れんでいるが今の生活はとても満足のいくものだった。秀人が大好きで離れる気は毛頭ないのだ。ただ両親を酷い目に遭わせた、デストピアの王やキング殺しスレイヤーの事は今でも許せなかった。そして、その光景を見ていた心愛が、ラヴュレスの事は知らずに、ただ秀人の成長を喜んでいた。

「秀人は、とても、慕われているわね。私も早く旅を終わりにして、お仕事のお手伝いに集中したいわ。異世界でも現実世界でも、ずっと、秀人にお世話になりっぱなしだもの。」

秀人はその言葉を聞いて、胸がチクリと痛む。秀人は良き所で会社を心愛に渡そうと思っている。自分は早期リタイアが出来ればそれで良いのだ。ただし、従業員の方達にも利益はちゃんと還元し、社会の役に立つ寄付などもした上で、正当な報酬で貯金額を増やそうと考えている。

「そんな事ないよ。心愛は何事にいても俺の計画の中核なんだから。俺の方が感謝してるんだよ。」 

心愛の言葉も、秀人の心愛に対する感謝も、まったく気にしていないフレイドは、先程から別の事を考えていた。

「秀人。コロシアムに向かう前にこの国の料理が食べたい。」 

「そうだな。あそこの食堂で、メシにしようか。みんなにご馳走するよ。」 

「やった。」「ありがとう。」「秀にぃいつもありがとう。」「秀サマ。ありがとう。」 

 

***
 


交流戦会場。陽菜、ユノ、ケイニー、モーリス、ミノスの五人は、他の国の選手達と開会式の会場にいた。 

「陽菜。とても嬉しそうね。」 

「うん。これも全部ユノのおかげだよ。」 

「陽菜と心愛は、国の宝だと言われてもおかしくないわ。2人は騎士爵で納得してくれているけど、逆に申し訳ないくらいの気持ちよ。」 

「私達は、身分なんて気にしないの。でも、異世界ってこういう所は本当に生きづらいわよね。」 

まだ開会式が始まる前、ユートピアの選手組の所に向かって来る集団がいる。 

「ユートピア国の皆さん。はじめまして。私はデストピア国の代表選手セバスチャン アーノルド18歳です。ジョブ『魔戦士』をやっております。ところでキルダーク様がお世話になった方はここにいるのかしら? 」 

「はじめまして。ユノ シエスタ ユートピアです。キルダークを倒したのは、私の未来の旦那様です。学生の域を超えているので、交流戦の運営に参加を拒否され、ここにはいませんよ。」 

「ちょっと、ユノ。違うでしょ。秀人は私の……。」 

「別に良いじゃない。意気込みなんだから。」 

納得のいかない陽菜を少しからかうユノ。その後も数ターン、小さな女の戦いが続いた。それを、セバスチャンが目を細くして呆れている。

「その方が女たらしだという事はとてもよく理解出来ました。……まあ、それは良いですわ。お互いに正々堂々と戦いましょう。あなた達も挨拶しなさい。」 

セバスチャンは自分のチームのメンバー達にも挨拶を促す。

「シュウト レイン16才。クラス『格闘家』です。今日の対戦楽しみにしていました。 」 

「マリス パンダス13才。クラス『魔法師』です。私は、なんと珍しいと言われる七芒星ヘプタグラムの魔法師です。 」 

「レネオローヌ ガイタン15才。クラス『槍術師』です。そちらにも槍で戦う選手がいるみたいですね。是非ぜひ対戦してみたいです。よろしくお願いします。」 

「カイナル エルドランド15才。ジョブ『僧侶』です。普段は回復担当ですが、父から教わった戦棍メイスでの攻撃コモンスキルも豊富なので期待していてください。」 

それぞれの名前を聞くとユノの表情が驚きに変わっていた。

「全員が五大将軍の姓と一緒みたいですが、どういう関係なのですか?」 

「それは、親子関係ですわ。そして、全員がキルダーク様に忠誠を誓ったキルダーク様の騎士でもあります。それでは、失礼いたしますね。」 

紹介が終わった段階で目的が済んだセバスチャン達は、早々に引き返していく。モーリスの頭の中が疑問で埋め尽くされた。それをユノにぶつける。

「あれ? 俺達はあいさつしてないけど、向こうの自己紹介だけして帰っちゃったね。」 

「モーリス。最後にキルダークって言ってたでしょ? 丁寧に挨拶はしてたけど、全員殺気が鋭かったわ。きっと怒りで周りが見えていないのよ。」 

「なるほどね。でも……前ならいい勝負だったと思うけど、今の俺達の相手じゃないかな。」 

「うん。私達全員が鑑定を持ってるけど、みんなが、あのレベルなら案外この交流戦で優勝するのは簡単なのかもね。」 

 
一方、ユノ達から遠ざかっていく、セバスチャン達は、先程のすました顔とは打って変わって、額に青筋を立て、怒りで顔を歪めていた。


「糞野郎。あの女がユノか。キルダーク様にした仕打ち。絶対に後悔させてやるわ。」 

「本当にむかつく女だよな。危うく手が出そうだったぜ。」 

「まあまあ。今は良いじゃないですか。どうせ殺すんですから。」 

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