現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。
魔法運動会 トーナメント編③
「それでは、闘技トーナメント。個人戦。第三試合、はじめっ。」 
 
 
陽菜 VS ユノ  
  
陽菜は攻撃に格闘用武器を使う。ジョブ『暗黒格闘家』。現在の装備武器は籠手の【ヘルハウンド】を扱う。 拳と脚を使った闇属性のスキル攻撃をメインとするが、ダンジョンで手に入れたデビルから闇属性のコモン魔法も学習している。 
そして、ユノは、戦棍。ジョブ『戦聖女』装備武器は戦棍の【ミスリル戦棍】聖属性の打撃スキルをメインとするが、聖属性コモン魔法と水属性コモン魔法も使用出来る。最近の戦闘では、特に聖属性の回復魔法を戦闘の合間に組み込む事が多くなった。   
  
互いに睨み合い、構えの姿勢をみせる。 
「【聖なる加護】 【保護聖域】【継続回復】【氷結結界】」 
「攻撃を受ける気まんまんね。でも、それくらい突破してやる。【闇降し 奇怪千万 
】【魔力転換破壊】【暗黒鬼神モード】【気合溜め】【冥王破砕拳】」
「【神聖痛撃】」 
 
ユノが自分を守るスキルや魔法を重ね掛けしたのに対して、陽菜は自身の攻撃威力を強化する。 
そして、二人はほぼ同時に攻撃スキルを繰り出した。陽菜がユノの結界に入った瞬間、コモン魔法の氷結に足を取られる。だが、その氷結が齎した抵抗は、ほんの一瞬だけ。スピードに若干遅れを生じさせた程度。しかし、それが功を奏した。戦棍によるリーチの長さと陽菜の踏み込みの僅かな遅れで、攻撃がぶつかった瞬間、威力が劣るユノの方が僅かにインパクトの爆発力が優勢だった。衝撃が重なる瞬間、陽菜の攻撃の威力がピークに達する前に、ユノのピークがぶつかったのだ。ややユノが優勢ではあるがお互いの攻撃威力が拮抗し衝撃は、二人の周りを取り囲む球体の様に、その中にある全てにダメージを与える。二人を中心にして闘技場は一瞬で陥没していた。その外側も中心から外に向けて大きな地割れが走っていく。 
だが、ユノは回復を得意とする聖属性。更に現在は常に継続回復の状態。このまま同じような事を繰り返せば、明らかに陽菜のHPの方が先に枯渇する。ユノはそう予想していた。 
だが、それは大きな間違いだった。 
たしかに、ユノの方が攻撃威力は僅かに優勢だった。だが、ダメージは同じように受けていない。陽菜は基礎値が高いが故にHPが高く防御力に関してはやや異常。これは秀人まではいかないが剣崎との対戦で相当に鍛えられて来たせいだ。そこにプラスして、これも秀人程では無いがオーラという謎の要素が常にうっすらと身を守っている。結果、先程の攻撃で受けたダメージが多いのは、大差でユノの方だった。そして、陽菜は9歳の頃からの度重なる実戦経験があるおかげで、次からは先程と同じ結果にはならない。威力100%のところを狙ってぶつける事になる。 
一度の激突だが、すでにユノの方が追い詰められている形になっていた。 
「流石陽菜というところね。」 
「ユノも、なかなか、やるじゃない。水属性は学生程度でしかないと言っていたから、すっかり騙されたわ。」 
 
――観客席スーパーロイヤルシート 
 
そこに座るユートピア王と解説の王国魔法師団団長アンブロ メルリはお互いに驚きを隠せなかった。 
 
「嘘じゃろ? なんかアレやばくないかのお?」 
「ええ。私は前言撤回をしなければなりませんですじゃ。ユノ皇太女殿下は、とてつもない戦闘のセンスと本当に聖女としての資質を持たれております。あれは学生どころか、私でも……。」 
 
 
――騎士団ブース 
 
息を呑み戦闘に釘付けになる全ての観客達と同じように、騎士団達もその光景から目が離せないでいた。戦況を見守りながら、ガイエル団長が副団長のライトに話しかける。あまりの興奮で、もはや黙っていられなかった。 
「いったいなんなんだ。あの二人の凄まじい攻撃威力は? 足元を見てみろ。スキルがぶつかり合った衝撃で闘技場が抉られているぞ。俺の攻撃でもあんな風にならないぞ。」 
「団長。なんて事ですか。あの戦いが学生同士によるものなんて、とても考えられません。王国騎士団でも勝てるかどうか。……否、絶対に無理かと思われます。それにしても、流石聖女様。ユノ皇太女殿下です。私は感動しました。」 
「次元が違う。このままだと不味いぞ。折角新しい国宝レベルの装備のおかげで王国騎士団は大幅に戦力を上げたというのに、それですら学生にも劣る事実を叩きつけられてしまったのだ。この観戦が終わったら、我々は訓練の精度や量を大幅に上げなければなるまい。」 
「ええ。ひたすら頑張るしかありません。それにしても、あの陽菜という少女。聖女様である皇太女殿下にまったく見劣りしない傑物です。もしや、彼女も神託の……。」 
「ライト副団長。先程から聖女様などと……。あれはあくまでも噂だ。それが真実かどうかはさておき、公表されていない以上、王国騎士団の副団長が軽々しく発言して良い事では無い。」 
騎士団長のガイエルは既にユートピア王から国内での勇者が誕生した事。英雄伯が勇者である事。ユノがその仲間である事。騎士団員に武器を制作したのが勇者である事までが伝えられている。だがそれは極秘の内容になっている。自分と近しい者がその噂を広めるのは危険でもあった。
「……神託ねえ。団長。ユノ皇太女殿下とお知り合いなんでしょ? 興味あるから、今度、紹介して欲しいなー。」 
「アタランテ。お前は自重しろ。百年早いわ。」 
「まあ。その件に関しては俺もライトに同意だ。王国騎士団たるもの王族やこの国を守る事が一番大切。皇太女殿下は紹介するものではなく絶対に守らなければならないお方だ。職務を全うしていれば、いずれ、お会いする機会もあるだろう。」
 「ちぇ。二人共お堅いこって。」
***
浅いクレーターが出来た中央からは移動して、闘技場の南部分での攻防が始まる。しかし、ここからは陽菜の優勢が続いていく事になった。ユノが合間に回復を挟んで、どうしても、陽菜の先制攻撃になってしまうという悪循環が一番の原因だった。こうなると陽菜の独壇場と言って良い。陽菜優位の攻撃が延々と続き、ユノは少しずつ攻撃より回復を優先する。陽菜は戦いが進むにつれてダメージを受けなくなった。そして100%の威力を発揮出来たのなら、陽菜の方が攻撃を相殺する威力が圧倒的に大きい。溢れた余剰分のダメージがユノだけに積もり積もっていく。後半は陽菜がスピードでユノを攪乱し、飛び周りながら、あらゆる死角からユノを圧倒する。観客が息を吸い込む事を忘れるくらい、大迫力の攻防戦は、約30分に及んだ。その間、ユノだけがHPを減らしていき、現在はおよそ三分の一の量にまで減っていた。
「ユノいい加減。諦めなさいよ。ずるいわよ。回復ばかりして。そろそろ終わりにするわよ。」
「これも自分の力だから、ずるくないもん。陽菜は闇だから回復出来ないもんね。終わりたいなら降参しては?」
「冗談でしょ? 私の方が圧倒的に有利だと思うんだけど、なんで勝っている方が降参するのよ。それなら、HP限界まで削り切るから覚悟してね。」
だが、ユノは必至で耐えた。そして、考える。この状況を変える何かを。秀人ならどうするかを。
陽菜は、しぶとく抗うユノに少し苛立ちを感じていた。自分の力なら早々に試合は終わると思っていたのだ。そして、秀人の手前絶対に負けられない。
試合も終盤に差し掛かり、そこで、ユノが導き出した答えは、超接近戦だった。拘束する魔法は格下にしか使えない。だが、スキルが使えない程のゼロ距離なら、魔法でのアドバンテージを持つ自分の方が絶対に有利だと思ったのだ。そして、激しい攻撃に耐えながら、一歩ずつ陽菜との距離をじりじりと狭めていく。そして、ついに、ユノは陽菜の両肩を掴んでいた。その体を自分の方に引き寄せる。
「絶対に負けない。秀人に対する気持ちは、こんな所で折れないわ。」
「なんなのよ。私はずっと折れなかった。秀人がいたから積み上げて来たの。ついこの前から生き方を変えただけの人に私が負けるわけないでしょ。」
ユノは陽菜を抱きしめ、現在自分が持つ最上の聖属性古代魔法をありったけぶつける。
「【神々の衝撃】×3」
陽菜の背後に出現した菱形の巨大な光、その中央から凄まじい質量の光線が陽菜に向かって放たれる。その恐ろしい程に神々しい光は、位置を変え他ニ箇所からも順番に発射された。例え、王国騎士団でもこんな攻撃を喰らってしまったら、一瞬で死んでしまうだろう。これは、それ程の威力を持っている。
防御は高いが魔防は一般的。陽菜はどちらかというと魔導士タイプとの相性が悪いと言える。これが自分より数段格上のものが使った同一魔法ならば、瀕死は確実になる。
だが、それは、あくまでも、どちらかというと苦手というくらいの比較に過ぎない。攻撃や防御力・HP・攻撃速度などが異常なだけで、魔防は弱点ではなく普通より少し上くらいという意味。先程からの攻防でも、この魔法以上の威力の攻撃スキルが何度となく使用されている。陽菜もユノも現時点では攻撃スキルの方が圧倒的に強い。それでも、お互いにダメージが致命的で無いのは、秀人が作ったチート装備のおかげだ。そして、陽菜に至っては秀人と同じオーラという謎の概念に守られている。
それ故の消耗戦だったのだ。
そして、陽菜は、この魔法でさえも、ほとんどダメージを受けていない。
このタイミングで、ユノは回復魔法などの乱用と、トドメの古代魔法3連発でMP0、魔力切れが起こる。二日酔いと意識が少し薄れる状態になってしまい、その場にへたり込んだ。
「なんか、ヤバそうだけど、まだやるのかな?」
「……絶対に、負けません。」
「わかったわよ。あなたを認めてあげる。だから降参しなさい。これ以上はただの虐めになっちゃうでしょ。ユノ、よく頑張ったわ。それでこそ、私のライバルよ。」
「……ぅう。ひぇ~ん。悔しいよ~。」
「もう。わかったって。口が悪くなっちゃってごめんね。ちょっと、本気で戦闘してみたかったの。流石ライバルなだけあるわ。ヨシヨシ。」
陽菜は、座り込んでいるユノの頭を撫でた。
「審判……ぅう……こうさん……します。」
「勝者 陽菜 西園寺。」
審判のジャッジを受けて、カインズが試合に見とれていた為に、忘れていた司会を再開する。
「両者お疲れ様でした。勝者は陽菜 西園寺選手でした。それにしても、とても学生の戦いとは思えない物凄い試合でした。皆さまどうか素晴らしい試合を披露してくれた、陽菜 西園寺そして、ユノ シエスタ ユートピア選手に盛大な拍手をお願いします。……それでは、次の試合に出場する選手は準備を始めて下さい。」 
会場をたくさんの声援と割れんばかりの拍手の音が響き渡る。ほぼ全ての観客が世紀の激闘を称え、そして感動していた。ユノ皇太女のファンとその名声は拡大し、その死闘を制した、謎の美少女、陽菜 西園寺もまた、たくさんの熱狂的なファンを作り出す事となった。
そして、この試合を観戦した王は、娘の健闘とその成長に感激し号泣していた。
 
 
陽菜 VS ユノ  
  
陽菜は攻撃に格闘用武器を使う。ジョブ『暗黒格闘家』。現在の装備武器は籠手の【ヘルハウンド】を扱う。 拳と脚を使った闇属性のスキル攻撃をメインとするが、ダンジョンで手に入れたデビルから闇属性のコモン魔法も学習している。 
そして、ユノは、戦棍。ジョブ『戦聖女』装備武器は戦棍の【ミスリル戦棍】聖属性の打撃スキルをメインとするが、聖属性コモン魔法と水属性コモン魔法も使用出来る。最近の戦闘では、特に聖属性の回復魔法を戦闘の合間に組み込む事が多くなった。   
  
互いに睨み合い、構えの姿勢をみせる。 
「【聖なる加護】 【保護聖域】【継続回復】【氷結結界】」 
「攻撃を受ける気まんまんね。でも、それくらい突破してやる。【闇降し 奇怪千万 
】【魔力転換破壊】【暗黒鬼神モード】【気合溜め】【冥王破砕拳】」
「【神聖痛撃】」 
 
ユノが自分を守るスキルや魔法を重ね掛けしたのに対して、陽菜は自身の攻撃威力を強化する。 
そして、二人はほぼ同時に攻撃スキルを繰り出した。陽菜がユノの結界に入った瞬間、コモン魔法の氷結に足を取られる。だが、その氷結が齎した抵抗は、ほんの一瞬だけ。スピードに若干遅れを生じさせた程度。しかし、それが功を奏した。戦棍によるリーチの長さと陽菜の踏み込みの僅かな遅れで、攻撃がぶつかった瞬間、威力が劣るユノの方が僅かにインパクトの爆発力が優勢だった。衝撃が重なる瞬間、陽菜の攻撃の威力がピークに達する前に、ユノのピークがぶつかったのだ。ややユノが優勢ではあるがお互いの攻撃威力が拮抗し衝撃は、二人の周りを取り囲む球体の様に、その中にある全てにダメージを与える。二人を中心にして闘技場は一瞬で陥没していた。その外側も中心から外に向けて大きな地割れが走っていく。 
だが、ユノは回復を得意とする聖属性。更に現在は常に継続回復の状態。このまま同じような事を繰り返せば、明らかに陽菜のHPの方が先に枯渇する。ユノはそう予想していた。 
だが、それは大きな間違いだった。 
たしかに、ユノの方が攻撃威力は僅かに優勢だった。だが、ダメージは同じように受けていない。陽菜は基礎値が高いが故にHPが高く防御力に関してはやや異常。これは秀人まではいかないが剣崎との対戦で相当に鍛えられて来たせいだ。そこにプラスして、これも秀人程では無いがオーラという謎の要素が常にうっすらと身を守っている。結果、先程の攻撃で受けたダメージが多いのは、大差でユノの方だった。そして、陽菜は9歳の頃からの度重なる実戦経験があるおかげで、次からは先程と同じ結果にはならない。威力100%のところを狙ってぶつける事になる。 
一度の激突だが、すでにユノの方が追い詰められている形になっていた。 
「流石陽菜というところね。」 
「ユノも、なかなか、やるじゃない。水属性は学生程度でしかないと言っていたから、すっかり騙されたわ。」 
 
――観客席スーパーロイヤルシート 
 
そこに座るユートピア王と解説の王国魔法師団団長アンブロ メルリはお互いに驚きを隠せなかった。 
 
「嘘じゃろ? なんかアレやばくないかのお?」 
「ええ。私は前言撤回をしなければなりませんですじゃ。ユノ皇太女殿下は、とてつもない戦闘のセンスと本当に聖女としての資質を持たれております。あれは学生どころか、私でも……。」 
 
 
――騎士団ブース 
 
息を呑み戦闘に釘付けになる全ての観客達と同じように、騎士団達もその光景から目が離せないでいた。戦況を見守りながら、ガイエル団長が副団長のライトに話しかける。あまりの興奮で、もはや黙っていられなかった。 
「いったいなんなんだ。あの二人の凄まじい攻撃威力は? 足元を見てみろ。スキルがぶつかり合った衝撃で闘技場が抉られているぞ。俺の攻撃でもあんな風にならないぞ。」 
「団長。なんて事ですか。あの戦いが学生同士によるものなんて、とても考えられません。王国騎士団でも勝てるかどうか。……否、絶対に無理かと思われます。それにしても、流石聖女様。ユノ皇太女殿下です。私は感動しました。」 
「次元が違う。このままだと不味いぞ。折角新しい国宝レベルの装備のおかげで王国騎士団は大幅に戦力を上げたというのに、それですら学生にも劣る事実を叩きつけられてしまったのだ。この観戦が終わったら、我々は訓練の精度や量を大幅に上げなければなるまい。」 
「ええ。ひたすら頑張るしかありません。それにしても、あの陽菜という少女。聖女様である皇太女殿下にまったく見劣りしない傑物です。もしや、彼女も神託の……。」 
「ライト副団長。先程から聖女様などと……。あれはあくまでも噂だ。それが真実かどうかはさておき、公表されていない以上、王国騎士団の副団長が軽々しく発言して良い事では無い。」 
騎士団長のガイエルは既にユートピア王から国内での勇者が誕生した事。英雄伯が勇者である事。ユノがその仲間である事。騎士団員に武器を制作したのが勇者である事までが伝えられている。だがそれは極秘の内容になっている。自分と近しい者がその噂を広めるのは危険でもあった。
「……神託ねえ。団長。ユノ皇太女殿下とお知り合いなんでしょ? 興味あるから、今度、紹介して欲しいなー。」 
「アタランテ。お前は自重しろ。百年早いわ。」 
「まあ。その件に関しては俺もライトに同意だ。王国騎士団たるもの王族やこの国を守る事が一番大切。皇太女殿下は紹介するものではなく絶対に守らなければならないお方だ。職務を全うしていれば、いずれ、お会いする機会もあるだろう。」
 「ちぇ。二人共お堅いこって。」
***
浅いクレーターが出来た中央からは移動して、闘技場の南部分での攻防が始まる。しかし、ここからは陽菜の優勢が続いていく事になった。ユノが合間に回復を挟んで、どうしても、陽菜の先制攻撃になってしまうという悪循環が一番の原因だった。こうなると陽菜の独壇場と言って良い。陽菜優位の攻撃が延々と続き、ユノは少しずつ攻撃より回復を優先する。陽菜は戦いが進むにつれてダメージを受けなくなった。そして100%の威力を発揮出来たのなら、陽菜の方が攻撃を相殺する威力が圧倒的に大きい。溢れた余剰分のダメージがユノだけに積もり積もっていく。後半は陽菜がスピードでユノを攪乱し、飛び周りながら、あらゆる死角からユノを圧倒する。観客が息を吸い込む事を忘れるくらい、大迫力の攻防戦は、約30分に及んだ。その間、ユノだけがHPを減らしていき、現在はおよそ三分の一の量にまで減っていた。
「ユノいい加減。諦めなさいよ。ずるいわよ。回復ばかりして。そろそろ終わりにするわよ。」
「これも自分の力だから、ずるくないもん。陽菜は闇だから回復出来ないもんね。終わりたいなら降参しては?」
「冗談でしょ? 私の方が圧倒的に有利だと思うんだけど、なんで勝っている方が降参するのよ。それなら、HP限界まで削り切るから覚悟してね。」
だが、ユノは必至で耐えた。そして、考える。この状況を変える何かを。秀人ならどうするかを。
陽菜は、しぶとく抗うユノに少し苛立ちを感じていた。自分の力なら早々に試合は終わると思っていたのだ。そして、秀人の手前絶対に負けられない。
試合も終盤に差し掛かり、そこで、ユノが導き出した答えは、超接近戦だった。拘束する魔法は格下にしか使えない。だが、スキルが使えない程のゼロ距離なら、魔法でのアドバンテージを持つ自分の方が絶対に有利だと思ったのだ。そして、激しい攻撃に耐えながら、一歩ずつ陽菜との距離をじりじりと狭めていく。そして、ついに、ユノは陽菜の両肩を掴んでいた。その体を自分の方に引き寄せる。
「絶対に負けない。秀人に対する気持ちは、こんな所で折れないわ。」
「なんなのよ。私はずっと折れなかった。秀人がいたから積み上げて来たの。ついこの前から生き方を変えただけの人に私が負けるわけないでしょ。」
ユノは陽菜を抱きしめ、現在自分が持つ最上の聖属性古代魔法をありったけぶつける。
「【神々の衝撃】×3」
陽菜の背後に出現した菱形の巨大な光、その中央から凄まじい質量の光線が陽菜に向かって放たれる。その恐ろしい程に神々しい光は、位置を変え他ニ箇所からも順番に発射された。例え、王国騎士団でもこんな攻撃を喰らってしまったら、一瞬で死んでしまうだろう。これは、それ程の威力を持っている。
防御は高いが魔防は一般的。陽菜はどちらかというと魔導士タイプとの相性が悪いと言える。これが自分より数段格上のものが使った同一魔法ならば、瀕死は確実になる。
だが、それは、あくまでも、どちらかというと苦手というくらいの比較に過ぎない。攻撃や防御力・HP・攻撃速度などが異常なだけで、魔防は弱点ではなく普通より少し上くらいという意味。先程からの攻防でも、この魔法以上の威力の攻撃スキルが何度となく使用されている。陽菜もユノも現時点では攻撃スキルの方が圧倒的に強い。それでも、お互いにダメージが致命的で無いのは、秀人が作ったチート装備のおかげだ。そして、陽菜に至っては秀人と同じオーラという謎の概念に守られている。
それ故の消耗戦だったのだ。
そして、陽菜は、この魔法でさえも、ほとんどダメージを受けていない。
このタイミングで、ユノは回復魔法などの乱用と、トドメの古代魔法3連発でMP0、魔力切れが起こる。二日酔いと意識が少し薄れる状態になってしまい、その場にへたり込んだ。
「なんか、ヤバそうだけど、まだやるのかな?」
「……絶対に、負けません。」
「わかったわよ。あなたを認めてあげる。だから降参しなさい。これ以上はただの虐めになっちゃうでしょ。ユノ、よく頑張ったわ。それでこそ、私のライバルよ。」
「……ぅう。ひぇ~ん。悔しいよ~。」
「もう。わかったって。口が悪くなっちゃってごめんね。ちょっと、本気で戦闘してみたかったの。流石ライバルなだけあるわ。ヨシヨシ。」
陽菜は、座り込んでいるユノの頭を撫でた。
「審判……ぅう……こうさん……します。」
「勝者 陽菜 西園寺。」
審判のジャッジを受けて、カインズが試合に見とれていた為に、忘れていた司会を再開する。
「両者お疲れ様でした。勝者は陽菜 西園寺選手でした。それにしても、とても学生の戦いとは思えない物凄い試合でした。皆さまどうか素晴らしい試合を披露してくれた、陽菜 西園寺そして、ユノ シエスタ ユートピア選手に盛大な拍手をお願いします。……それでは、次の試合に出場する選手は準備を始めて下さい。」 
会場をたくさんの声援と割れんばかりの拍手の音が響き渡る。ほぼ全ての観客が世紀の激闘を称え、そして感動していた。ユノ皇太女のファンとその名声は拡大し、その死闘を制した、謎の美少女、陽菜 西園寺もまた、たくさんの熱狂的なファンを作り出す事となった。
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