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現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

鬼宮義十郎②

 この関係が崩れたのは、約半年後だった。秀人はまたその記憶を辿る。 

「秀人と厳次げんじ。ちょっと、外に遊びに行こうぜ。」 

「うん。」「うん。」 

 近所の公園。最初のそれは夕方に近く誰もいない時間だった。今まで秀人と仲良くやっていた玄一が突然、人が変わったような態度になる。 

「秀人。実はさー。俺はお前の事が、むかつくんだよなー。」 

「玄兄ちゃん……いきなり、どうしたの?」 

 状況をよくみ込めていない秀人と、いら立ちの表情を浮かべる玄一。 

「だ か ら。むかつくって言ってるんだよ。」 

 それが玄一が振るう暴力のはじまりだった。玄一の硬い拳が秀人のお腹をおそう急激な痛みで、呼吸が止まり、秀人は息がまったく吸い込めなくなっていた。からだを走る電気的な刺激しげきと止まらない冷や汗。地面に寝転がり体をじらせ苦痛に藻掻もがく。痛みで涙が止まらなくなり、顔がぐしゃぐしゃになっていた。ようやく、呼吸が回復し息を吸い込むとそれを確認した玄一が次の攻撃を開始する。半袖の洋服で隠れるくらいの位置を狙い、たくさんの部位を何度も何度も足で蹴り上げる。 

厳次げんじ、何で突っ立って見てるんだよ。お前もやれ。」 

「……兄ちゃん。ひどいよ。やめてあげてよ。」 

「うるせー。それとも、お前もやられたいのか?」 

 それまで、秀人と特に仲の良かった厳次げんじとの関係もここから途絶とだえている。玄一がいない時などは、普通に接するのだが、この時をさかいにしてどこかよそよそしく変わっていく。そして、厳次げんじは大声を上げ板挟いたばさみにいら立ちながら玄一の続きを始める。気が狂ったように豹変し暴力を振るう厳次のその瞳は、秀人と同じように涙で溢れていた。 

 最初の虐待ぎゃくたいは秀人の体感時間で約30分。それが終わると玄一は秀人の髪の毛をつかみ自分の視線の位置まで持ち上げる。 

「秀人。これから、毎日こうやって遊ぼうぜ。」 

「……玄兄ちゃん。止めて。……痛いよ。こんなの嫌だよ。今まで仲良くやって来たじゃないか。」 

「それ口答えな。口答えしたから、もう一度だ。」 

 秀人は先程までの攻撃は手加減をしていたのかも知れないと感じていた。次の一撃で腹がえぐれるような今までにない痛みを感じ秀人は失神したのだった。 

  

 それから、毎日の様に理不尽な暴力が続く。最初の頃は玄一や厳次とのつながりをまだ諦めきれなかった。暴力を受けながら少しでも気に入られるように頑張っていた。秀人はこの時はまだ関係を取り戻せると思っていた。 

「玄一兄ちゃん。どうして、僕をいじめるの?」 

「玄一兄ちゃん。もう止めてよ。こんなのおかしいよ。」 

「玄一兄ちゃん。僕、何か悪い事をしたかな? 僕が悪いなら直すよ?」 

「玄一兄ちゃん。お願い。どうすれば止めてくれるの?」 

 だが、どんな問いにも聞く耳を持たない玄一の暴力に対して、秀人の心は憔悴しょうすいしていく。ただ一つ言える事はこれは絶望などでは無いという事だった。絶望は両親が亡くなった時にたった一度だけ感じていて、それを超える悲しみなどあり得ないと思っていたからだ。ただ単に疲れ切っていた。それからの秀人は無駄な抵抗をする事をきっぱりと止めていた。同時に玄一の事なんてどうでもよくなる。いつかこの苦しみに終わりが来る事をひたすら待つようになった。そして、二年の時が流れ桃園家の大黒柱、源助の事業が失敗し祖父の家で暮らす事になる。やっとの事で秀人は地獄から抜け出す事が出来たのだ。 

 秀人が久しぶりに会ったお爺ちゃんの顔は、とても悲しい顔をしていた。祖父は秀人から、すぐに叔母の方に向き直り、奥歯を噛みしめながら、とても穏やかに怒鳴りつけていた。 

「秀人。こっちにおいで、どうして、こんなにやつれてしまったんだ? 舞佳お前『父さんは子育てなんか無理だから、私に任せた方が良いっ。自分の子供達と同じように育てるから安心して』って俺に言ってたよな? これはいったいどうゆう事なんだ? 説明してもらおうか。」 

「仕方ないじゃない。こっちのもいろいろあるのよ。」 

「馬鹿者! これは虐待ぎゃくたいじゃないか? こんなにやつれるまで何をしていたんだ! もう、お前は信用できん。今後は同じ屋根の下でも、秀人には一切近づくな。俺が育てる。」 

「ひっ。」 

 母親のおびえる顔を見て、香織が今までの事を祖父に告げ口する。香織は秀人を庇い今まで何度も母親に叱られていた。 

「お爺ちゃん。お母さんが秀人にだけひどい食事を出していたの。秀人は、いつも怒られて凄く可哀想だったのよ。」 

「香織。余計な事を言うんじゃないわよ。」 

「何が余計な事か! お前の根性を叩きなおしてやる。これから、毎日、修行のように雑用を任せるからな。」 

「ひっ。」 

 それから祖父が元気だった三年間、秀人は家にいる時だけは、とても幸せな日々だった。 

 祖父の部屋、祖父の携帯でラノベを読んだり、庭にいる祖父の剣術を見たりして過ごしていた。食事の他に祖父や香織から貰うおやつも、それまでは、ろくに食べられなかった事もあり、全てたいらげていた。ある日、秀人が庭に出て祖父の剣術を眺めていると。 

「秀人。お前の父さんも俺と同じ剣術を身に着けていたんだぞ。この鬼宮流剣術はその強さゆえに一子相伝。奥深い秘術がたくさんあってな。お前も大きくなったらやってみるか?」 

「うん。やりたい。だって爺ちゃん。凄くかっこいいもん。」 

「そうか。では、俺もその時を楽しみにしておくよ。」 

 だが、祖父からその剣術を習う予定だった中学入学の数日前。祖父は意識不明の重体で病院に入院する事になってしまった。 


 そして 今秀人は七光総合病院の祖父の病室にいる。  

 秀人は昔の事を思い出し嫌な事ばかりではない事に気が付いていた。まだ秀人がいじめられていなかった頃や、楽しかった記憶は、嫌な記憶を封印しているせいで少し忘れっぽくなっている。それが人としての防衛本能なのかも知れないと秀人は感じていた。今回記憶の蓋を外し秀人は優しい祖父とまた話がしたくなった。 

「爺ちゃん。」 

 秀人が思わず爺ちゃんを呼んだ時、今まで寝たきりだった祖父がベットから体を起こす。 

「呼んだか? ここはどこだ? 君達は、いったい誰だい?」 

「じぃぢゃん。ヴぉントウによかった…びて``とだよー。」 

 秀人は一気に感情が爆発した。嬉しすぎて言葉がまともに発せられなかった。そして、涙があふれて止まらなかった。 

「秀人がこんなに大きいわけが無いだろ。少年。君はいったい何を言ってるんだ。」 

 嬉しすぎてまともに話せないので、秀人はまずは深呼吸をする。そして、祖父の手を握りしめ、ゆっくりと説明をした。 

「……爺ちゃんは……病気でずっと寝たきりだったんだよ。……俺はその間に成長したの。」 

「……これは参ったな。そうか。心配かけて悪かったな。それにしても大きくなったな秀人。今までお見舞いに来てくれていたんだな。ありがとうよ。それで、そちらさんは? まさか秀人のお嫁さんか?」 

 義十郎は秀人の頭をでてからにこやかに笑うと、心愛の方を見てから説明を求めていた。

「現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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