現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

真貴族会議②

 ――真貴族会議

 ユートピアの貴族の中でも侯爵以上の高い身分の者達が集まった真貴族会議というものがある。今まで国王は何者かによる精神攻撃でお飾りの状態になっていた。

 そして、この真貴族会議こそがユートピアの本当の政治を執り行い、宰相《さいしょう)のガイムスがその決定事項を代行して進める形で国を運営していた。だが、秀人がその2つの問題を解決しユートピアは本来あるべき国王主体の国家に生まれ変わった。

「まったく。最近の王は勝手が過ぎる。ガイムス宰相はどうなっている。あいつを宰相にした哀家《わらわ)の立場をまったく考えぬのか?」 

「落ち着いて下さい。王太后陛下。何度も言いますが、なぜか王直属の王国騎士団と王国魔法師団の装備がどれも国宝レベルの代物へと変わりました。真貴族騎士団が負けはせずとも、こうも戦力が拮抗してしまうと強い圧力は掛けられません。今は戦力を補強するか、政治の力で王に勝るしかないのです。その為に最も重要なのは宰相のガイムスです。」 

 実際には、今戦えば装備の差で王の勢力が圧勝する。

「ブナパトス公。もう面倒だから、倒しちゃえば良いんじゃないかな。いくら装備が強くても此方《こちら)の団長はLv100だよ? 負けないというか圧勝でしょ。今の内にやらないと時間が経つ程に後手に回る気がする。」 

 実際には、今戦えば装備の差で王の勢力が圧勝する。
  
「たしかに。エレンケル卿の言うとおりだ。兵の数が足りないのなら、こちらの私兵を出せば事足りるしな。王を貴族の言いなりになる王に挿《す)げ替えれば良いだけだ。」 

 実際には、今戦えば装備の差で王の勢力が圧勝する。

「ヘルナンド公。私は私兵とか持ってないし、もう帰っても良いかな? 内乱になっても、うちは真貴族に加担しないからね。」 

 このやる気のなさが、もっとも正しい判断だった。

「殺すぞ。ドラコレシュティ―公。」 

「ブナパトス公それは酷《ひど)いでしょう。とにかく皆様。物騒な話はそれくらいにして、王子の復権はどうしますか? 今はその事の方が重大でしょう。」 

 ブナパトスはヒートアイルを睨《にら)みながら反論する。その視線によりヒートアイルは俯いていた。

「ヒートアイル卿。挿《す)げ替えるんだから王子はもういらない。復権どころか譲位って話をしているんだよ。それにお前は役目を失敗した人間。幸い学園からザムガトルスが消えたからおとがめなしになった。だが大人しくしていなければ、この会議から追い出すぞ。」 

 ブナパトスの強い口調に、一瞬会議は静まり返ったが、能天気なクレストールが話を切り出す。

「それより、この際だから、キヌハ王女でいいんじゃないかな? ヒートアイル卿の意見は無視として、ステイン…否、ガイムス卿は反対するだろうけど、今まで王子に期待してたからな。」 

「クレストール卿はキヌハ王女が好きだねー。私は、ユノ皇太女でなければ、誰でも良いけど。庶子《しょし)だけは絶対に許さないよ。」

 真貴族会議の途中、この会議に出席する誰かの従者が、勢いよく部屋のドアを開け、とても酷《ひど)い形相で入室をして来た。

「カンヌ。無礼だぞ。会議中に入って来るな。」 

「マイ・ロード。緊急です。真貴族騎士団団長とその部下20名がたった一人の暗殺者の手に掛かり死亡しました。残りの40名は軽傷ですが、あまりの恐怖で精神に異常をきたしております。」 


「「なんだと!!」」 

 そこにいる貴族全員が立ち上がり驚愕《きょうがく)している。学園を除けばこの国で一番力のある真貴族騎士団の団長が殺される事など絶対にあり得ないのだ。一番奥の席にすわる王太后が侯爵達に命令を下す。

「暗殺者《・・・)というなら闇ギルドか? 信じられん。騎士団長はLv100だぞ。この国にそれ程強い暗殺者がいるのか? アスデウス卿とヘルネス卿。状況を見てまいれ。」

「「王太后陛下の仰せのままに」」


 ヒートアイル卿は焦っていた。自分が担当していた王立第一魔法学園の潜入教師達がいなくなっていた。当初は大問題だと処罰を待つ身だったが、ザムガトルスが旅に出たおかげで真貴族会議に復帰出来た。だが、ヒートアイルは学園を監視する役目から降ろされ、現在は違う貴族が担当する別の者が潜入している。そして、自分の発言力とこの緊急事態の流れを変える為に、仕方なく情報の一部を解禁する事にした。

「皆様、私は極秘に国王に武器を渡した人物を特定しました。元鍛冶屋バロンの店主、若き天才との呼び声の高いリンドブルクという職人です。その職人を見つけさえすれば、今の状況も、そして、真貴族会議の発言力も元通りになるかと存じます。」

 ヒートアイルは、アムド達の失敗の後、何度かリンドブルクの所在を知るであろう秀人の捕獲を試みていた。だがB級冒険者を何度か送った所で諦めた。刺客達は全員がことごとく倒され、圧倒的な力に心を折られていた。A級以上を動かせば、さすがに真貴族会議にも気付かれると考えたのだ。その後は、何度か交渉を試みるが、忙しいの一点張りで断られていた。秀人が店舗を構えそれが繁盛した事でリンドブルクの弟子である確信と共に、支払う予定だった秀人に見合う金額が跳ね上がりそれも断念していた。秀人の店はそれ程の大繁盛だった。


「ヒートアイル卿。それは真実なのか?」

  このヒートアイルの発言に一番興味を抱いたのは、真貴族会議で一番力のある王太后だった。実際に王の勢力は世紀の天才鍛冶師の力で復活したと言える。そんな職人が本当にいるならば喉から手が出る程に欲しい人材。

 真貴族会議で二番目に発言力のある息子のブナパトスは、またもヒートアイルを睨む。だが、ヒートアイルは気にせず王太后だけを見つめ答えていた。

「真実です。ただし、リンドブルクは鍛冶屋バロンを閉め、現在は行方不明になっています。これは予想ですが、国宝級の装備を国王に売り、街で一般の客に商売をする必要がなくなったのでしょう。ですが、もしあれ程の才能を持つ者が他国に渡ったらどうなると思いますか? ただちに天才リンドブルクを捜索する必要があります。」

「天才鍛冶師リンドブルクか。哀家《わらわ)はそやつを絶対に手に入れなくてはならない。」

 ヒートアイルは弟子の話だけは言えなかった。それを言ってしまえば、自分だけが極秘に何度も交渉していた事がばれてしまう。

 こうして、何も知らない鍛冶屋の店主は、天才鍛冶職人、として、真貴族会議に参加する高位の貴族達に捜索される事となった。

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