現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

魚心あれば水心①

 ミミカとサンタナは、2人でA級ダンジョンに来ていた。 

 G Lv1  F Lv20 E Lv30 D Lv40 C Lv50 B Lv60 A Lv70 S Lv99 

 以上に記されたレベルは冒険者がランク昇格に必要な最低の数字。 

 ダンジョンの階級は、冒険者ランクの範囲から一番レベルの低い者5人で踏破とうは出来ると判断された階級に設定されている。ただしS級以上のダンジョンはSランク冒険者がLv99からLv199までという範囲の広さから、S級ダンジョンの中で更に細かく分類される事が多い。

 因みに冒険者のランクは、それぞれの最低レベルに達した上で、ギルドに貢献したポイントを貯める事で昇級出来る。更にB級以上は、昇級する際に試験をクリアしなければないらない。全ての例外として、世界的な偉業を成し遂げた者などは、ギルド国家ニブルヘイムの国王がレベルや貢献度に関わらず、その功績にふさわしいランクを特別に認定する事がある。 

 話は戻り、ミミカとサンタナは学生でありながら、既に2人だけでA級ダンジョンに入れる程の化け物である。 

「そろそろA級ダンジョンにも飽きたな。いい加減S級ダンジョンに挑戦したいけど、そこまで昇格したら否応いやおうなしに注目されるな。なるべく力は隠しておきたいんだよな。」 

「いや。S級ダンジョンで通用するのはサンタナだけよ。私には無理。地道にA級でレベルを上げるわ。」 

「そんな事言うなよ。ミミカー。俺はお前が居ないとダメだって知ってるだろお。」 

「もう。サンタナったらぁ。」 

 ミミカはサンタナの言葉に嬉しそうにほおを赤らめる。 

「とりあえず、レベル上げはこれくらいにして、今日は明日の作戦会議でもしようか?」 

「作戦会議も何も、普通に強硬突破だよ。正面からユノを拉致して、学園から連れ出して殺す。それだけの事に作戦も何もいらないだろ。」 

 次の日の朝、ミミカとサンタナは予定通りにユノを待つ。SSクラス前の廊下で人が行き交う中、そこにユノを見つけると大胆にも強烈なスピードでユノに接触し、すれ違いざまにサンタナがユノを片手でかつぎ、走りながらミミカが明けた大きなケースにユノを詰め込む。それは前を歩くケイニーが全く気付かない程のスピードだった。走りながらそのケースを閉めるとまたサンタナがそれをかつぎ走り出した。校門まで走ると、待機させておいた馬車の荷台に乗せ、自分達もその馬車に乗り込む。 

  30分後、目的の廃屋はいおくに到着しサンタナがケースを持つと、それは積み込んだ時とは明らかに違い軽すぎた。急いで中を確認するとそこには何も入っていなかった。 

「くそっ。何なんだよまたコレか。俺は一瞬も目を離していないぞ。このケースは特殊な魔法陣が組み込まれていて、あらゆる精霊魔法が無効化される。聖か闇にここから脱出する魔法があるって事だな。」 

「まあ。良いじゃない。いつでもヤレるんだしね。いざとなったら、学園内で殺してしまいましょうよ。退学になっても2人でニブルヘイムに移り住むっていう手もあるわよ。」 

 サンタナは、鋭い眼光でミミカを睨みつけた。それは今にも殺してしまいそうな程の大量の殺気が込められていた。冷たくてとても恐ろしい眼差まなざしだった。ミミカ級の強者でもその瞳から発せられる威圧に耐えきれない。小さい声を上げ尻もちをついてそこに倒れた。すると、それを見たサンタナが一転してニコリと微笑ほほえむ。 

「大げさだなー。冗談だよミミカ。とにかく、この国からは離れられないから、秘密にユノを殺す方向で考えような。さあ抱きしめてあげるからこっちにおいで。」 

 ミミカは泣きそうになりながら飛びついて、サンタナの胸に顔を埋める。いつもは優しくて自分を必要としているサンタナだが、まれに感じるとても暴力的でぬぐいようの無い違和感があった。それも含めてただよう危険な香りがサンタナの魅力を押し上げているのだが。背が高く美形で頭が良く強くて優しいという何もかもが完璧なサンタナ。それに対して、容姿は平凡ただサンタナの後を追い、そのおこぼれだけでどうにか強くなった自分。サンタナがなぜ自分を選んだのかわからない時がたまにある。そして、なぜ、今まであんなにも強くなる事にこだわっていたのかその理由がまったくわからない。唯一わかるのは父親が幼い頃に死んだという事、冒険者の報酬で家門を守る為にひたすら依頼を受け続けた。それだけなら、なぜ強さを隠す必要があるのか。なぜ学園卒業すら簡単に狙えるのに通う事に拘るのか。サンタナの考えが全く読めない。だが、ミミカはすぐに考えるのを止めた。そしてサンタナを抱きしめ返し、いつものように愛を囁く。 

「サンタナ。愛してるよ。」 

「俺もだよ。ミミカ。」 

 実はユノの襲撃はこれが初めてでは無かった。流石に王宮に行く事はしなかったが、秀人達が現れてからユノを2度程拉致らちしている。だが、いずれも運搬うんぱんの際に消えてしまう。だから、今回はケースに精霊魔法の効かない魔法陣をほどこしたのだ。だが、分身アバターは地球の神から貰ったギフト。スキルであって魔法ではない。今回は移動の馬車の中でユノは分身アバターを解除していたのだ。そして、サンタナ達が秘密に殺すチャンスはこれで最後を迎えた。ユノを取り巻く環境、明日からはその何もかもが変わっている事をサンタナ達はまったく知らなかった。 

 第一王子と第一王女がユノとの戦いに敗れた出来事は、またたく間に世間に広がり、ユノ王女を一部の国民達があがめ始める事態となる。ユノの母が元平民だという事で、特に平民からの人気が尋常じんじょうじゃない程に高まる。それどころかユノ王女が使用した聖女を冠するスキルを分析され、神託しんたくを受けた世界を救う第三の勢力が現れた。ユノ王女がその内の『聖女』であるという噂も国民の間で広がっていた。同時に、ユノ王女は平民と対等に親交を深める事から、あの厄災・・しずめる役目を持つ者では無いかという噂もひそかに広がっていった。  

 そして、その噂の内、王族同士の争いという核心部分については、王や王の側近達。王国を本当の意味で操る侯爵以上の貴族からなる真貴族にも広がっていた。それぞれがそれぞれの対応を検討する事になるのだが、これに対し先手を打ったのは秀人だった。 

「え? 父上への謁見えっけん?」 

「うん。どうしても必要だと思うから極秘で頼めないかな?」 

「どうして、そうなるの?」 

「俺達、まがりなりにも王族に手を出しちゃったでしょ? まあ。王は良いとして、この国は真貴族の権力が一番大きいんだよね?」 

「うん。五分五分だって言う人もいるけど。数では王とそれを支える辺境伯の勢力で、質では真貴族って言われているわ。」 

「王は最悪の場合、ユノも同じく自分の子供だから許してくれるとして、真貴族の方に目を付けられたらとても厄介じゃない? だから、王に貢物をして俺達は味方だってアピールをする。同時に王の力が増せば貴族も抑えられるよね。」 

「秀人。今はオリハルコンの事があるから、父上も少しは態度を改めていたけど、ここ数年、私への愛情は無いの。会って何をするつもり?」 

「それはお楽しみって事で。」 

「わかったわ。オリハルコンの剣の製作者って言えば簡単に謁見えっけん出来ると思うけど、それは危険なのよね?」 

「王様だけに伝えるならそれで良いよ。むしろ、それが無かったら平民が王様に謁見えっけんするなんて難しいでしょ。」 
  
「じゃあ。さっそく、頼みに行ってくるね。」 

  

 ―――数時間後

  

 秀人とユノは王立騎士団長のガイエルに連れられ、王が極秘に密会する時に使う応接室の前に来ていた。
 王はオリハルコンの剣の製作者について、最も緊急に対応する必要があると判断し、全ての予定をキャンセルし急遽時間を作っていた。 

「そなた1人で入れと陛下がおおせだ。くれぐれも、失礼の無い様にな。」 

 秀人は装備を外せばチートの戦闘能力がある訳では無いと自分では思っている。現実世界での過度ないじめの影響で、防御力が高いだけの生産特化のただの剣士だと勘違いをしている。秀人の本体は毎日レベル上げをしていて現在はLv47。それでもB級相当の魔物では経験値が上がりづらくはなっている。今隣に居る騎士団長ガイエルはLv85。実際の強さは逆なのだが秀人はこの段階で王に謁見えっけん出来るような力などまったく無いと思っている。

 だが、そう思っていても、まったく恐れは無かった。現実世界では、毎日肉体・精神共に苦痛の毎日の中、それでもまったく折れた事がない。秀人の精神力はとても強大で、王に謁見えっけんする行為くらいではびくともしなかった。

 だが、秀人は王の前で礼儀正しく傅いていた。 郷に入っては郷に従え。この国の作法に則っているのだ。

「陛下、失礼します。秀人 鬼宮です。この度は殿下達への無礼な対応、誠に申し訳ございませんでした。」 

「ほう。鬼宮。して、貴様への処分はどうしてくれようかの。」 

 この王の対応で、秀人は態度を改める。だがそれはもっとへりくだるわけではない。むしろ、その逆だった。秀人は徐に立ち上がると、王に向かって眉を顰める。不遜な対応。無礼な態度。秀人は絶対に虐めには屈しない。その心掛けは強者の圧力には決して屈しないという意味である。相手の性格が良ければそれなりの立場を考慮し、秀人も最低限の礼を尽くすが、性格が悪ければそれをする必要はない。

「う。性格悪そう。なら、もう形式ばってへりくだるのは止めだ。この国に合わせる事も必要だと思ってたけど、性格の悪い奴の言いなりになるなんて事は絶対に嫌なんでね。俺は王と交渉をしに来た。話を聞くきはあるかい?」 

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