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現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

天の配剤②

 ユノは仲間と分断されたホワイルとキヌハに近づき、最後の警告けいこくをしていた。   

「ホワイル。キヌハ。あなた達のは、もういじめとかそういう次元じゃない。これ自体がすでに王位継承戦だわ。大それた名前だけど、その実、ただの肉親同士のみにくい争い。それならば、私はあなた達が改心しない限り、絶対に王位の継承をはばんで見せる。」  

庶子しょしの分際で調子に乗るなよ。お前と俺達とでは生まれ持った高貴さが全然違うんだぞ。俺達正当な王族が王位を得る為に必要な事をしているだけだ。それにあらがえば、この先、お前には生きる道が無いと思え。」  

「そうよ。王位は絶対に私だけの物。誰にも邪魔はさせない。」  

「……ん。キヌハ。私達……だろ?」  

「そんな事はどうでも良いわ。予定通りユノを連れて行って頂戴ちょうだい。」  

「は? お前は何で俺に命令するんだ? 俺はお前の兄で継承権第一位の……。」  

「ちっ。肝心かんじんな所で使えない男ね。私がやるから良いわ。ユノ観念かんねんしなさい。ぐはっ。」  

 ユノは2人が言い争いに発展する姿にとてもあきれていた。表立って対立していなくとも結局は2人も兄妹ではなくただの継承争いの相手としか見ていないのだと思った。そして、スキルを使用せずに、純粋な通常攻撃を選ぶ。装備した戦棍メイスで自分に近づいて来るキヌハの腹を横から殴打したのだ。結果は一撃だった。優れた攻撃手段を持っている事に慌てふためくホワイルは、背後で生徒に紛れている大人達に目配せをする。   

「ヴェアボルフ。計画変更だ。今すぐこの女を連れて行けっ。」  

 この計画の要として王子達が雇ったのは王子達を支援する貴族達では無く、闇ギルドに所属する組織の一つヴェアボルフ。その暗殺者・・・を自称する3人だった。しかし、その実、けた違いの報酬に食いついただけのただのDランク冒険者パーティー。それでも一般の学園の生徒と比べれば相当に強い。だがユノはSSSの天性ネイチャー奇跡のジャンヌ聖女ダルク】を持ち、秀人の究極鑑定で、その適正に合わせた成長をし、今や陽菜に次ぐ強さと言える。

 一般的に勇者が2つの天性ネイチャーを持つとはいえ、その負担は魔王程度・・の討伐に過ぎず、女神が選ぶのはランクSSとSなどだ。SSS以上は単純に運要素でありそれを持った場合にはガイアでは歴史に名を残す英雄になるだろう。ただ、この時代のSSSや+による特殊なSSS級引き上げの排出はいしゅつ量はいつの時代と比べても別格ではあった。  


「【聖女セイントの束縛バインド】」  

   
 冒険者2人とホワイルが横並びになった瞬間を狙い、ユノは覚えたての範囲魔法で一気に方を付けた。  

「ぐぁっ。」  

「これは殺生能力・・・の無いスキルよ。それでも弱きものはHPはわずかかに残すくらいまでは減らされる。あんた達程度が相手なら再起不能になるでしょうね。ホワイル。このダメージでしばらくは寝たきりの生活も覚悟しなさい。」  

 ホワイルは腹に攻撃を受け地面に頭と両手とひざを付けみっともなく倒れている。気絶こそしてはいないが、重症で更に体が金縛かなしばりの様にまったく動かない。キヌハは仰向あおむけで倒れお腹に手を当てている。痛みと屈辱くつじょくで白目になり心を閉ざし無意識に歯ぎしりをいていた。  

「キヌハ。どう? まだやるの?」「……ぐっ。」  



 秀人達の場所からゲロがやってきて、キヌハを抱きかかえる。  

「いや。もう良いだろう。キヌハは連れて行く。しばらくは俺がお前等には手出しさせない。それで納得してくれ。」  

「良いわ。でも、これだけは覚えておいて。本当に改心する気があるなら私は王位継承には関わらない。今は他人を思いやる心、ひいては民を第一に思う人間になって欲しい。さっきははばむって言ったけど、それ相応の心を持つ者なら文句は無いわ。」  

「まるで偽善者だな。そんな滑稽こっけいな人間を俺が好きになるわけが無いだろう。お前等こそ、最近の行動は本当に目に余るものがある。身分は最初から人間が定めたものでは無い。世界の管理者が望んでいる事だ。ちゃんとそれを理解しないと、国やお前の大切にする者達が滅ぶ可能性がある。偽善こそ国を滅ぼすのだという事をよく覚えておけ。」 


 この戦い。ユノの攻撃を見た生徒達全員が大歓声を上げていた。なぜならユノの攻撃スキルに『聖女セイント』を冠するものがあったからだ。それはユノが勇者やこの世界の救世主である事の証明にもなる。弱小国ユートピアが聖女を輩出した事は、建国以来のビックニュースとして世界各国に瞬く間に広まっていく事になる。


 ゲロ ギルガルドは、去りながらこの事態の危険性を再度急上昇させていた。もはや敵対するべきではないと今は考えている。キヌハを抱きかかえながら、制服の下に着こんだミスリルの胸当てをもう一度確認する。秀人の剣が当たった部分が削られ、そこから大きく破損している。秀人は間違いなく手加減をしていた。だが、ユノの方に向かおうとした自分に対してだけはその余裕がなかったのかもしれないと考える。もしくは攻撃によっては、ミスリルを削るような不安定な別の要素が加わる事があるのかとも考える。

 だが、それはたかが【薙ぎ払い】だった。剣士クラスの中でも最弱の威力とされるもの。たったそれだけの攻撃でミスリルの胸当てを破壊した事の恐ろしさに震えが止まらない。ミスリルの胸当ては間違いなく国宝クラス。辺境伯の息子として万が一の為に与えられた、国内では最高の防具のはずだった。だからこそ、これを着ていなかった事を考えると恐ろしくてたまらないのだ。

 ゲロは真に恐ろしいのは、聖女であるユノではない事に気付く。先頭に立って指示をしていたのは、それだけの器があるからだと納得もする。おそらくは秀人が勇者。しかし真実の歴史で、勇者より聖女の方が希少な存在だった事をゲロは知っている。ならば秀人は、聖女を率いるそれよりもっと格上の存在であると考察した。

だが、ゲロは知らない。自分達が戦った秀人やユノは、ステータスをかなり劣化させているただの分身アバターに過ぎないという事を。

「ケイニーの方が強いだと……。こんな事をしておいて、自分の力量を分かっていないのか。」

 その日を境にして、ゲロは秀人とその仲間達に逆らう事を終わりにした。絶世の美女である婚約者よりも自分の命の方が大切だった。

「現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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