現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

天の配剤①

 ――前日 

   
 王宮内ホワイル王子の部屋には珍しくキヌハ王女が訪れていた。二人は同腹どうふくの兄妹とはいえ、王位継承争いでは対立する関係。ある程度の年齢からは、王妃の呼び出し以外でお互いに王宮内での接触をなるべく控えている。今回、2人が話し合う事になったのは、ユノの派閥に動きがあったからに他ならない。本来であれば各個対応をしていたユノへの妨害行為。だがユノの派閥が公爵2人に加え実習室を破壊する程の未知の戦力となった為に、協力を余儀よぎ無くされたのだった。  

「お兄様。アレの勢力がモーリスだけでなく、ヴラドまで取り込んだわよ。どうするおつもりかしら?」  

「おじ様は継承争いに敗れ、モーリスの家は王家の財産を何も受け継いでいない名ばかりの公爵だ。それはヴラドも同じで、父親がドラゴンの騎士に選ばれたから、国が天界に気を使って急遽きゅうきょ、公爵に抜擢ばってきしただけ。やつの家にはなんの権力も無い。」  

「だけど、それは私達も同じ事よ。今は私達をそれぞれ支持する者がいるけど、実際に個人的な権力が私達にないのも事実よね? 支持する者が多くなれば昔のようにユノが脅威きょういになる可能性もいなめないわ。」  

「……確かにな。ユノはあいつの計画で、父上からの愛を全て失い、今や呪いを受け継承権すらも失った。今更、ユノが王女として復権する可能性は少ないと思うが、その可能性もまったくゼロでは無い。徹底的にいじめ抜いて、俺達との立場の違いを心にり込ませて来たが、もしユノが国を継承してしまったらそれすらも逆効果になる。俺達のように協力関係ならお互いどちらが王になっても問題は少ないがユノだけは絶対に駄目だ。少しの可能性も排除しなければならない。」  

「当然だわ。それにユノだけでなく私達嫡子ちゃくし以外が王になる事は、絶対に許されない。で、どうするの?」  

「分断するか。身分的にはモーリスとヴラド。そして、力では陽菜 西園寺さいおんじ。心愛 鬼龍院が学園にいない今、脅威きょういなのは、この3人だけだ。と言うより、チャンスは心愛がいない今より他にない。この際だからユノを連れ出し国外に奴隷として売り飛ばそう。この事がもし父上にバレても、今ならば問題はないだろう。奴は見捨てられている状態だからな。むしろ今しかない。」  

「同感だわ。ユノはもうこの国に必要ない。ところで、この前話していた闇ギルトに所属しているという暗殺集団は本当に雇えたのよね?」  

「ああ。ヴェアボルフの事か。世界中に点在し、その一人一人がこの国の騎士団長をも超えるという噂の暗殺集団。この件とは関係ないが、その3人を使うのもありだな。」  

「ギルドの冒険者とは対極にある闇ギルドの暗殺者・・・。けどそれは上位互換とも揶揄されているわ。扱いには気を付けなさい。」





 ――現在   

   

   

「あらら。交渉決裂だね。でも、問題を武力で捻じ伏ねじふせる以外の方法、今後は考えないといけないな。心愛との約束の手前もある。では、皆は後ろに下がって。敵の攻撃は俺が受け持つ。ケイニーは俺を抜けて攻撃してくる相手だけを俺の後ろで中距離攻撃。フレイドは弓で魔術師だけを沈黙ちんもくの状態にして。ユノ。王子と王女だけをはじくから今後の為にも自分で決着をつけな。」  

   

「分かった。」「うん。」「はい。」  

   
 秀人は、まず最初にホワイルとキヌハの横に高速で移動し、誰もいない場所向かって左手前方向に大きく【薙ぎ払い】を使った。通常のそれの効果から大きく逸脱いつだつする程に、【薙ぎ払い】が敵を大きく弾いたのは、【薙ぎ払い】のスキル熟練度が極に達していたからだ。通常スキルはマスターが最大とされている。ただし、そのスキルの効果を本当の意味で理解する程使い込むと熟練度は極に達する。通常の鑑定やその上位スキルでの表記は熟練度はマスターから先が無い。これは、秀人だけが究極鑑定という鑑定系最上位のスキルを有し、学園長の魔法熟練度の中に一つだけ極みがあった事から考察した事実だった。

 秀人は分身アバターの運用に余裕よゆうがある時、3体全てを携帯ダンジョンの10分の1の時の流れの中でひたすらに【薙ぎ払い】スキルのみを素振りした。分身アバターのレベルは本体のレベルが適用されるが、熟練度は本体も分身アバターも関係無く、使えば使う程に上がる。結果、つい最近、剣士クラスの中で【薙ぎ払い】の熟練度だけが極になっていた。  
 秀人は学生相手なので全ての攻撃で充分に手加減をしている。武器も最弱の装備を手にしている。その上で秀人は攻撃を繰り出そうとする者の前に順番に立ちはだかり、その全ての攻撃を自分が受け、間に合わない場合は【薙ぎ払い】を使い吹き飛ばした。特にユノ達に介入すると思われるゲロに対しては躊躇ちゅうちょなく先にはじき飛ばした。

 遠隔の魔術師に対しては、指示通りフレイドが秀人が製作した沈黙ちんもく効果のある矢で射抜く。ケイニーは秀人に襲い掛かる取り巻き達の中で、前にいる者から順番に槍の攻撃で撃退していく。ケイニーはB級ダンジョンでの急成長でLv39。対する王子の取り巻き達のレベルの平均は15前後。ほんの軽い一撃でも戦闘不能におちいる状態だった。魔法師達は沈黙ちんもく、戦闘職はほぼ戦闘不能。敵戦力は、みるみるうちにゲロ以外の全てが無効化された。ゲロだけは【薙ぎ払い】で弾かれた後、冷静に戦況を判断し攻撃を止めていた。そして、一言。  

「ついこの前まで底辺だった貴様らが、いったいなんでこれ程までの力を得た?」  

「これ程? 全員が大分手加減をしているつもりだぞ。だがお前等の暴力に対抗する力。その最低限を全員でつかむ事を優先した結果だ。言っとくけど、俺がいなくても、三人だけで対処出来たはずだよ。というより俺は生産と防御力だけだ。おそらく攻撃スキルが豊富なケイニーの方が強い。たった一人でも返り討ちするのに十分な戦力だろうね。……ただ、ユノは……。」  

「ふん。俺は降りる。だが、負けた訳では無い。キヌハを連れて今回は引くだけだ。」  

   

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