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現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

お宝盗難殺人事件

 王立第一魔法学園に警報けいほうの音が響き渡る。一番近くにいた警備兵達がその現場に駆け付けると血だらけの先生達と一人の生徒が倒れていた。 

「どうやら宝物庫から禁書が奪われたようです。宝物庫の結界が破られた為の警報けいほうでした。」  

「結界を維持する為の魔道具は、宝物庫から少し離れた位置にあったはず。警報けいほうが発動してからの時間はそんなに経過していない。とすれば、まだ犯人は学園内にひそんでいる可能性が高いな。サムは直ちにガッシュ殿を呼べ。ムスルは拡声かくせい魔道具で、生徒には避難ひなんを、警備や先生方に学園内で犯人を捜査するように伝えろ。」 

「現場に残されたのは、苦無と先生達に残された爪痕つめあとのような深い傷。ん?生徒の方はまだ息があるな。」 

「何があったんですか?」 

「カインズ先生。怪我けがをした生徒を保健室に連れて行って下さい。」 



 ――保健室を担当するマクレナシルはこの事件の担当でもある。マクレナシルは、先程から生徒の脇腹を注意深く観察している。すると生徒は突然に目を覚ました。怪我けがの具合は犯人の苦無が脇腹をかすめた事による切り傷のみ。生徒の脇腹は治癒ちゆ魔法でその傷跡すら残らずに完全にえていた。マクレナシルには、とても気絶する程のダメージだとは思えない。気絶の原因は、目の前で先生たちが殺されていった事への精神的なショックだと推測する。

 マクレナシルは、気絶する程嫌な出来事を思い出させるのは酷だとも思ったが、事件を担当している以上、質問は避けられないものだった。さっさと取り調べをさせて貰おうと目覚めたばかりの少年に話しかける。 

「少年。名前は?」 

「……ヴラド ドラコレシュティです。」 

「私は保険室の担当医マクレナシル。同時に今はこの学園で起きた事件の捜査をけ負っている者だ。なぜ。宝物庫の近くで倒れていた?」 

「う……ぅあ~。……酷い、僕の目の前であんな事が……。」

「落ち着けヴラド。何が起こったんだ?」

「……僕は、この学園に来るのはまだ2度目なので、学園内を彷徨さまよっていたんです。そしたら、突然、警報けいほうが鳴ってフードを被ったやつが現れました。先生達がフードのやつを取り押さえようとして殺されました。逃げようとした僕は突然攻撃されて、恐怖で気を失ったんです。あいつは……恐ろしい。」 

「犯人の顔を見たのか? どんな顔だった。」 

「残念ですがフードの下に仮面を付けていたので、わかりません。ですが特徴とくちょうといえば、体系が普通、背丈せたけは割と小柄でした。」 

「他に何か気付いた事は無いか?」 

「そう言えば、殺された先生の一人が暗殺者・・・がどうのと言っていました。たいした情報が無くてすみません。」 

「闇ギルドか。十分な情報だよ。ヴラド君、ご協力ありがとう。」 

 SSクラス実習室――― 

 秀人達が学園生活を再開した途端とたんに、学園宝物庫で禁書の盗難とうなん事件が発生した。警報けいほうと共に駆けつけた現場付近にいた教師2名が殺害され、生徒1名が怪我を負った。だが、生徒の方は軽傷で、取り調べの後ですぐに解放された。

 現在は秀人のいるSSクラスの実習室で挨拶をしていた。 

「ヴラド ドラコレシュティ17才です。入学以来授業はサボっていましたが、父上に尻を叩かれ復学する事になり、事件に巻き込まれてしまいました。うちは父が運よく公爵の地位を獲得し出世してしまいましたが、本来はそんな身分ではありません。そして、僕は身分とか奴隷の制度とかが大嫌いなんです。友達は身分をひけらかさないような相手を望みます。よろしくお願いします。」 

「では、次に学園長が留守の間、学園の守護とSSクラスでの実戦指導を任せられたガッシュ ロイヤル フィールド先生を紹介します。彼は学園長の友であり雷の拳王の異名を持つ正式なギルドのSSランク冒険者。Sランクでも珍しいのに、ギルドランクSS以上は単騎たんきで千人力とも言われる希少な存在です。特にスキルで戦う戦闘職クラスの人は、今後お世話になる事でしょう。今まで私とカインズ先生が魔法職だったばっかりに育成が後手に回っていました。これからはガッシュ先生から多くを学んでください。それでは、ガッシュ先生どうぞ。」 

「学園の守護ったって早速さっそく死亡事件と犯人を取り逃がして失敗している。俺はガッシュ。概ねキュリオン先生から紹介された通りだ。陽菜 西園寺。俺はお前の指導に興味がいたので依頼を引き受けた。厳しい修行になるぞ。覚悟しておけ。」 

「……はい。よろしくお願いします。」 

  秀人は、ガッシュが陽菜を指名したのを見て、かなりテンションが下がっていた。しかし、すぐに気を取り直してヴラドの前に行った。 

「ヴラド。君の自己紹介にとても感動したよ。俺は秀人 鬼宮。平民です。実は俺たちは身分に縛られずフラットな友達関係を築いてるんだ。君も俺達と一緒に実習しないか?」 

「そうなのかい。このクラスは傲慢ごうまんな貴族だけだと思っていたけど、復学した事は僥倖ぎょうこうだったのかも知れないな。是非、仲間に入れて欲しい。」  

  ヴラド ドラコレシュティ17才 秀人の鑑定結果はLv55の魔術師だった。秀人は疑問をぶつけるが、ヴラド曰くドラゴンの騎士の称号を持つ父親に鍛えられ、何度もダンジョンに潜っていたという事だった。ヴラドはフレンドリーな性格で秀人のグループとすぐに打ち解けていた。

 秀人達の実習はヴラド対仲間の模擬戦だった。通常であればレベルの差でヴラドの方が強いはずである。だが、秀人のグループは全員が秀人のチート装備を身に着けている。その理由で逆に相手にならずヴラドだけが面食らっていた。
 一巡した所で通常の実習に戻る。ヴラドは秀人に話かける。訊ねずにはいられなかった。
「みんな凄い強さだね。レベルと強さがまるで一致しない。どういうからくりなんだい?」
「俺達は品質の良い装備を身に着けているだけだよ。本来であればヴラドの方が強い。少なくとも最弱の俺は確実に負けるさ。後でヴラドにも装備を渡すね。」
「本気で言っているのか? どう考えても最弱なわけないだろ。不安定だけど秀人の攻撃が一番痛みを伴う。それに異常な防御とスタミナ、少なくとも魔力……まあいいや。あと制服にしか見えないけど、装備を身につけているのかい?」
「うん。実は……。」
 秀人はヴラドにも装備と獲得経験値アップを渡したいので、説明した上でヴラドにアドバイスをする。ヴラドはとても喜び、秀人にだけ秘密を打ち明けた。 

「俺、禁書を盗んだ犯人を実際に見たんだけど、背格好かっこうがどうも大人では無いんだよね。このクラスの中だとまとっている雰囲気が、ノートル スレインさん。ミミカ クアールさん。サンタナ ミューリー君。とかと似ていたな。あくまでも僕の直感だから気にしないでね。」 

 その三人は、秀人が究極鑑定で鑑定出来ないクラスメートだった。それはレベル差50以上、少なくともLv95以上の化け物という事になる。そんな化け物が事件の犯人だとしたらと思うと、秀人はかなり不安になる。




 ――実習は終わり、午後のクラブ活動に入った。

 クラフトクラブ。その名の通り生産職を学ぶクラブで、秀人が新たに作り、生産職に興味があるというフレイドを誘ったのだ。秀人とフレイドだけが、その新しい教室にやって来た。

「フレイド。わざわざ学科を抜けて、こっちに来てくれてありがとう。これからよろしくね。戦闘とはかけ離れたクラブだけど、生活には絶対に役立つ。それと昨日から、王都プレバティーで装備品やアイテムのけっこう大きなお店を経営してるんだけど、良かったらフレイドの作った物もお店の一角で取引しても良いよ。」

「秀人君。それ本当? うちは家計が厳しいからとても助かる。」

「うんうん。それとフレイドこれを装備してみて。そうすれば、コレとコレを素材にして錬金が出来るはずだよ。」

 秀人はそう言うとあらかじめ作って置いた壺などをフレイドに渡す。フレイドが特別に持つ生産スキル【錬金ガチャ】に使用する素材を渡した。

「何これ?」

「フレイドは、特別な天性ネイチャー『錬金ガチャ師』という物を持っているのは、この前取得した自分の鑑定スキルでわかるよね? それは俺の究極鑑定で見ると壺を装備するジョブを持っているのものなんだ。ジョブ取得のきっかけは壺を装備をする事。そしてジョブチェンジすれば良い。」

 フレイドは壺を装備する。

「本当だ。『錬金ガチャ師』にジョブチェンジ出来るよ。これで何をすれば良いの?」

「メイン素材Aにサブ素材Bを掛け合わせて、1番の当たりだとメインAのレア度が2つ上がって、Bの素材の効果が付与される。装備品なら、そこに品質とスロットも最上の物まで付く可能性がある。1番のハズレでも素材にした物の価値を+して同等以上の何かが出来上がる。何度もスキルを使う事でスキルの熟練度が上がり、より高い確率で当たりが出るみたいよ。」

「たぶん。これはフレイドだけのオリジナルの職業だと思うよ。生産職に最高の適正を持つ俺でも、それを装備して何も発動しなかった。」

「ははは。秀人ありがとう。俺にそんな才能があるだなんてね。秀人がくれた弓での戦闘もやけにモンスターにヒットする確率が高かったし、本当になんとお礼を言ったらいいか。」

「お礼は良いから、一緒に頑張ろうよ。フレイドは家族を養う立場なんだろ?」

「うん。じゃあ。やってみる。」

 フレイドは、鉄の剣と薬草を壺に入れてスキル【錬金ガチャ】を発動した。蓋がパカパカと動きそこから煙が漏れている。約一分後、壺の底に何かが落ちる音がする。フレイドが蓋を開けると、そこには銀の聖剣ヒールソード 優良品質 スロット2があった。剣の効果に与えたダメージの5%分使用者を回復する効果まである。

「これはとんでもない生産スキルだな。錬金ガチャで生産したアイテムは2度と錬金ガチャの素材に使用出来ないけど、この装備は街で売ったとしてもかなりの値打ちになると思う。さっそく放課後にでもお店に並べてみる?」

「そうなの? 秀人、本当にありがとう。今回は秀人に貰った素材だし俺に払う金額は無しでいいからね。あとは、友達だからって、お店に置かせてもらう為の代金もちゃんと金額から引いてね。これからは、自分でもたくさん素材を集めてみるよ。」

「いや。これは君の能力で製作したんだ。素材は安価なものだから君が利益を受け取って良いんだよ。それに俺は俺で稼ぐからフレイドも稼いでくれ。それでも気が引けるなら、まとまった資金が貯まったら自分のお店を持てば良いんじゃないかな?」

「……秀人。ありがとう。」

 フレイドは涙目で感謝の言葉を連呼した。父親が早く亡くなり、フレイドは当主。なけなしのお金を全て学費に当て実家はかなりの貧乏らしい。早く母親や家族を楽にするために生産系のスキルにとても興味があった。フレイドの状況を聞いた秀人はフレイド対してに協力を惜しまないつもりでいる。

 秀人が異世界に来たきっかけ、それは自分のせいで従姉の香織が辛い思いをした事。だからこそ、同じような経験を友達のフレイドにはして欲しくなかった。


「現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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