現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

呪い

 秀人は荷馬車を不審に思いユノに訊ねてみる。

「ユノ。あの馬に引かれているおりって何なの? 囚人とかなのかな。まだ、若そうだけど……。」  

「あれは。奴隷ですね。奴隷商が扱う商品です。」 

 秀人はここで衝撃の事実を知る事になる。それは現実にはあり得ない商品としての人間だった。

「何だよ奴隷って。この国はそんな事を認めているのか?」 

「秀人は世界の事をあまり知らないんだったね。世界各国であらゆる法があるけど、奴隷商はどの国にいても税金すら掛からない上等なビジネスとして扱われているの。天界が奴隷商と奴隷ビジネスを推奨しているので、国はその商売には一切関われない。あの子達は人間なので、この国で罪を犯したか、どこかの敗戦国の子孫なのでしょう。奴隷として認められているのは、犯罪者や亜人種と戦争で敗戦した国の国民です。」 

「天界って? アルテミスさんがこれを認めているの?」 

「アルテミス様はガイアの唯一神だよね。これとまったく関係ないわ。関与しているのは、南大陸の上空にある天界と呼ばれる所の龍だよ。龍は基本的には人間の政治に関与しないけど、闇ギルドのスポンサーだと言われていたり、過去に何度も奴隷制度に反対する国を滅ぼした事もあるわ。」 

「なるほど龍か。それは異世界らしい。出来れば見てみたいな。ん? そんな悪い龍なら討伐対象の可能性も否定できないな。とりあえず、これを見てしまった以上、放って置けない。どうすれば良いと思う?」 

「買えば良いんじゃないかな? 高くても金貨10枚、5~10万セガくらいが相場だよ。」 

「じゃあ。交渉してみる。」 

 秀人は小走りで馬車を追いかけ、馬車を操縦する男に声を掛ける。頭にはターバンを被り、褐色かっしょくの肌をしたせ型のちょびひげで中年の男。

「すいません。あなたは奴隷商の方ですか?」 
  
如何いかにも。わしはマーキュリー奴隷商会のジギルじゃ。」 

「その2人をお売りして頂きたいんですが、どうでしょう?」 

「駄目だね。その2人はそれぞれ金貨15枚で買い手が付いているんだ。」 

「では、一人につき金貨30枚でどうでしょう? 女の子の方は泣いていますし、どうしても見過ごせないんです。」 

「旦那様。変わった価値観をお持ちですね。その値段なら良いでしょう。契約の移行を行いますので、お客様のお名前を伺ってもよろしいですか?」 

 ジギルは値段が倍にり上がり態度を豹変したので、秀人は考えが変わる前にお金を払う。

「秀人 鬼宮です。これどうぞ。」 

 ジギルはお金を受け取ると荷馬車の後ろに回り込み。檻の鍵を開けて嫌がる2人を檻の中から連れ出して来た。続いて内ポケットから契約書の様な物を取り出し、秀人の名前入りの呪文を唱える。奴隷の子供達の首にある呪印じゅいんと契約書が光り、それが治まるとジキルは秀人に契約書を渡した。 

「これが奴隷契約書です。旦那様。」 

 奴隷の2人、女の子は恐怖でふるおびえている。男の子の方も一緒にふるえながらにらみ秀人を威嚇いかくしている。 

「そんな風に見ないで下さい。大変でしたね。俺は秀人 鬼宮です。あなた達を奴隷として扱う気はありませんし、望むならすぐにでも解放します。行く所はありますか?」 

 秀人の言葉にきょとんとする二人と、檻の中にいたもうひとりの奴隷がここぞとばかりに反応する。

「旦那様。お願いします。私の事も買って下さい。」

 実は秀人はその男の事をあえてスルーしていた。それが異世界に来て最初に出会った鍛冶屋の店主ゲロマムシだったからだ。ゲロマムシの心根の悪さは秀人も知っている。正確の悪さを知っているので犯罪の類で奴隷になったとしか思えなかった。

「あんた。俺やユノの事を覚えていないのか? 俺があんたを助ける為に金を払うわけがないだろ。」

「まさか。……お前等はあの時のガキ共か。……俺がこうなったのは、きっと全部リンドブルクとお前等のせいだ。お前等に出会っていなければ俺は。糞ガキがっ!」

「ジキルさん。もう用はないので行って下さい。またマーキュリー商会を訪ねますね。」

 ジキルがゲロマムシのいる檻を蹴飛ばすと、秀人に頭を下げる。「ひっ。」

「ありがとうございます。今後ともマーキュリー商会のジギルを是非ぜひともよろしくお願いします。」


 丁寧なお礼をした後でジキル達が去っていく。
 
 秀人の言葉と優しい笑顔で奴隷2人のふるえは治まり、呆気あっけにとられた顔をしている。少し悩んだ末に少年の方が秀人に質問をした。

「なぜ、俺達を買ったんですか? 奴隷として扱わないとか、すぐに解放するとか、意味が分かりません。」 

「あ。そうゆう事ですか。実は俺はさっき奴隷というものを知ったんです。こちらの女の子が泣いていたので、どうにかしたいと感じていました。こちらのユノに助ける方法を訊いた所、購入を勧めてくれたので、あなた達の解放を穏便おんびんに進める為に、それを手段としたんです。」 

「……そんな。信じられない。こんな良い人がこの世界に存在するなんて。」 

 今度は道端みちばたに座り込み2人は抱きしめ合いながら泣き始めた。 泣きながら、ありがとうございますの言葉を何度も連呼している。

「ちょっとちょっと大丈夫ですか? 落ち着いて下さい。とりあえず、食事でもしながらこれからの事を話しましょう。」 

 その日に限って、大衆的な食堂がどこも満員だったので、秀人達は少し雰囲気のあるレストランに入店した。案内された個室のテーブルを4人で囲んでいる。秀人は二人が痩せこけている為、ユノと相談しながらは4人分以上のメニューをかなり多めに頼んでいた。たくさん食べさせてあげたいし、食べきらなかったとしても二人に余計な遠慮をされたくなかったのだ。メニューが次々と運ばれて来る。

「さあ。食べましょう。足りなかったらもっと頼みますから、遠慮は無しでたくさん食べて下さいね。」
「「……ありがとうございます。」」

 2人はお礼を言いながら、また泣き始める。秀人は二人に今までどんなに酷い事があったのか心配になるほど泣いている。たまらずローストチキン風の肉を二人の口の前に運んで急かしていた。やっとそこで二人は秀人が渡した肉を頬張る。ここは王都でも有名で高級な店。今度は空腹とあまりのおいしさで、自分達の目の前にある料理を勢いよく食べ始めた。

 秀人とユノは美味しそうに食べる二人を見て、やっと笑顔になれた。

「足りなかったら追加するから、ゆっくり食べて大丈夫だからね。」

 秀人が頼んだテーブルいっぱいの料理は、ゆっくりと二人の胃袋の中に消えていく。

 食事を済ませた後で、秀人が話を始める。 

「それで、2人はこれからどうしますか? 行く所などはありますか?」 

「私達は帰る場所がありません。祖国はクーデターにより壊滅かいめつし、母と私達は逃げ延びましたが、国から脱出する時に奴隷商に敗戦国の国民だと判断され捕まりました。母は奴隷として主人に何年も虐待ぎゃくたいされそして自ら命を絶ちました。その事で俺と妹が主人に抗議こうぎした所、また売り飛ばされたんです。もし、ご主人様がその契約を破棄はきしたとしても、呪い……呪印がある限り捕まればまた奴隷として商品に戻ります。もし、よろしければ妹だけでもご主人様の所で働かせて貰えませんか? 妹は14才です。次の場所では母の様に性的虐待ぎゃくたいを受けるでしょう。それならば、いっそあなたの様な優しい方に……。」 

「俺はそんな事をしませんよ。それなら、2人とも、うちのお店で従業員として働く気はありませんか? 実は丁度ちょうどこれからお店を開く予定があるんです。働いてくれるなら給料もちゃんとお支払いします。今住んでいる家も広いですし、給料が貯まるまでは一緒に住めば良いです。あとは自分達で食費を払えるようになるまでは食事もこちらで用意しますよ。」 

「え? 奴隷に給料を支払うと言うのですか?」 

「だから、最初に言ったじゃないですか。奴隷としては扱いません。働いてくれるなら、あくまでも従業員として接します。」 

「……よろしくお願いします。ですが、お気持ちだけで十分です。私はこれより奴隷として、ご主人様に忠誠を誓います。シエナ、お前も良いよな?」「はい。感動しました。誠心誠意お仕えいたします。」 

「嫌、だから奴隷は駄目だって。これからは従業員です。働いて貰えば、ちゃんとこっちにも見返りがあるから気にしないで下さい。それでは、俺は秀人 鬼宮15才です。これから一緒によろしくお願いします。2人の名前は?」 

「カイン14才です。よろしくお願いします。」「カインの双子の妹でシエナです。よろしくお願いします。」 

「カインとシエナね……。じゃあ。年も近い事だし、せっかくだからプライベートは敬語は無し、友達という事で良いかな?」 

「ですが……これだけの恩義がありながら、敬意を払わないというわけにはいきません。」 

「でも俺は配下ではなく友達が欲しいんだよね。俺には今まで友達が殆どいなかったから、そうゆう仲間との時間を欲してるの。仕事を頑張ってくれるなら、俺にもメリットはあるわけだし、これを恩義と思わないで良いよ。」 

「ありがとう秀人様。一生懸命に仕事を頑張る。」「こんな幸せな気分久しぶりです……。ありがとう秀人様。」 
  
 秀人達は一軒家の寮にカインとシエナを案内しする。二人に部屋を割り当てた所でお店が始まるまでは自由にしていて貰う事を伝える。秀人はユノと話があったので、自室で2人きりになった。 
  
「……ユノ。言いたくなかったら良いんだけどさ。死の呪いについて話をして貰っても良いかな?」 

「やっぱり、鑑定スキルでそれもバレてたか。うん。私は遅くても20才の誕生日までには死ぬの。約2年前。王様が私やお母様に対して態度が冷たくなった頃、王宮に潜入した何者かが私に死の呪いを掛けた。そして、その短命が理由で継承権や王女の権利が全て剥奪はくだつされた。その上で私は、もうすぐ、大嫌いな隣国の王子にとつがされるの。母は父上に何度も抗議してけむたがられるようになり、真貴族の誰かの陰謀いんぼうに巻き込まれ冤罪えんざいで極刑にもなった。それは秀人が助けてくれたお陰でなんとか大丈夫になったんだけどね。」 

「なんだよそれ。めちゃくちゃじゃないか。ユノ、今まで大変だったんだね。」 

「ありがとう秀人。私ね。秀人にオリハルコンの剣を売って貰ったお陰で母上が助かって、もうそれだけで満足だったの。例え、死ぬとしても、嫌いな人にとつがされるとしても、別にどうでも良いと思ってた。でも、秀人に出逢って全てが変わった。……私、秀人の事が好きです。20才までに死んでも良い。でも、それまでは秀人の隣にいたい。付き合って下さい。」 

「ユノみたいに優しくて綺麗な人に、俺みたいなやつがそんな事を言われるとは思ってなかったな。でも、ごめん。俺はずっと好きな人がいるんだ。気持ちには答えられないけど、仲間として隣にいようね。」 

「断られちゃったか。断りにくくて逆にチャンスだと思ったんだけどな。甘かったね。でも、秀人は自分の魅力に気付いていないのか。」 

「いや。全然断りにくくないよ。だって呪いの解除は今後絶対にするから。それにとつぐのが嫌なら断れるように俺も手伝う。」 

 ユノは秀人の外見ではなくて、そういう心が好きだった。そして、現在進行形でもっともっと好きになっている。困っている人の問題を自分の事の様に考え、一緒にどうにかしようと考える。ユノの周りには、そんな清らかで優しい心を持つ同世代の人間はいなかった。まさに出逢った瞬間から自分のピンチを救うヒーローとして秀人にかれていた。

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