現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

力をつけろ

 実習室の補修ほしゅう作業でSSクラスは休みとなり、日曜日も合わせて5日間の休暇きゅうかを得た。秀人達は、学園長のはからいで、普通の寮生活ではなく、特待生用の一軒家を与えられた。

 学園長は秀人達の特待生の立場を最大限に利用し、唯一神アルテミスに遣わされた勇者達が動きやすいようにサポートするのが狙いだった。そして、一番の変更点は、心愛の分身アバターが3体に別れて、学園長達と世界を放浪ほうろうし始めた。分身アバターの意識は個別に思考をするが、その経験は本体の記憶として共有出来る。その道中で分身それぞれが属性魔法(コモン魔法)を学び、学園に復帰後には心愛は学園の講師になる予定だった。心愛の本体は変わらずレベル上げ用で秀人達の本体と常に一緒だった。   
   

 秀人達の大まかな5日間の過ごし方としては  


 まず、1日目は農民スキルとジョブマスターを獲得していないメンバーだけを連れ、農作物と効力エフェクト結晶クリスタルを収穫した。ユノ、陽菜、心愛の三人は別行動で携帯ダンジョンでのレベル上げをした。一日の最後にグループを結成した仲間7人分の装備品を新たに作る。これは究極鑑定で能力を確認して作っているので、それぞれが現在使っているクラスとは別の物だった。レア度は街で出回る物よりも高く、品質は【至高品質】なので、通常の5倍以上の性能になる。この日までに収穫した効力結晶を全員が4つのスロットに装着した。そして、アビリティー【究極変換】の力で、防具の見た目は学園の制服で、武器の見た目は、武器ランクを下げ、スロット無しの見た目にしている。 

 翌日より、学校の特別課外授業としてダンジョン攻略に挑んだ。これは学園長がギルドマスターを使い、Bランク冒険者パーティーに4日間のダンジョン同行の依頼をした。そして、学生にしては破格のB級のダンジョン、その中でもAランクに近い最難関の場所にてレベル上げをする。ここでも心愛の範囲魔法の活躍で、全員がみるみる内にレベルが上がっていった。最初は疑念と心配の目を向けていたBランク冒険者達だったが、自分達が手こずるB級ダンジョンを楽々と進む学生達を見て特に心愛に対して尊敬の眼差しを浮かべるようになる。

 全員のレベルの上昇が速く最初は驚いていたが、心愛からソウルという要素に秘密があるのではないかと指摘された。そして、心愛は急激なレベルの上昇の前には必ず秀人のアドバイスがある事を看破した。その検証として付き添ってくれたB級冒険者の一人に、【究極鑑定】を使い適正とかいろんなアドバイスをしたらとても喜ばれ、実際にモンスターを倒して貰うと一人だけ急激な獲得経験値の上昇が見られた。検証済みだったが付き添ってくれたお礼にとB級冒険者の残りの二人にもアドバイスをする。冒険者達はとても喜び、はぐれてしまうかと思う程のスピードでモンスター討伐に夢中になっていた。そして、ダンジョンの初日から秀人の事を崇め始める。休日3日目(ダンジョン2日目)B級冒険者達に秀人のお店を宣伝する事を条件に、お店で売るものよりもレアな武器と防具をあげる。この出来事と秀人のアドバイス通りの戦闘をしたら、めちゃくちゃ強くなった事で秀人の事を師匠と呼ぶようになる。
 Bランク冒険者達はダンジョン最終日には寮の場所までを把握して弟子を名乗り始めていた。  

 連休の成果というと、初日にLv15付近だったメンバー達のレベルが36になる。その中でもケイニーは槍を装備しモンスターに騎乗した状態だと取得経験が高いチートらしく、レベルが39にまで爆上がりする。元がLv37だった秀人達はLv45に、Lv34だったユノはLv43になる。  



 ――話は連休開始当日の朝に戻る  
   

 前日に仲間全員を鑑定した時に、ユノがソウルと分身アバターという地球の神からの恩恵を受けている事が判明した。そして、ユノからの提案で、そのスキルを試すのと同時に秀人がユートピア国で商売をする為に、ある貴族を紹介してくれるとの話を受ける。  

 そうして、2人の分身アバターは王都プレバティーの街を西に向かい30分くらい移動していた。  

「おじ様。スネイク ツヴァイス子爵はね。世界各国で貿易事業をしてて、ユートピア国内では、50店舗を構えるツヴァイス商会の会長なの。それで、私はなぜか昔から個人的に支援をして貰っていて、今回はお店を開く程の能力のある友達がいるって話したら、是非話したいって言ってくれたの。ついたわ。あそこの大豪邸がおじ様の家よ。」   

「ユノ殿下。ご無沙汰しております。とても会いたかったです。秀人様。私は当家執事のガルツです。会長がお待ちしております。どうぞ、中へお入りください。」  

 門の前でユノを待っていたガルツは、挨拶の後でなぜか服を脱ぎ捨てパンツ一丁の姿でボディービルダーの様なポージングをいくつか披露していた。秀人は執事ガルツは只の執事には見えない程に巨体で鍛え抜かれた肉体をしている事にちょっとだけ警戒けいかいする。咄嗟に究極鑑定を使ったが判別出来ない位にレベルの差があった。秀人は執事では無くボディーガードでは無いかと考える。  

「ガルツさん。お久しぶりです。ナイスバルク!腹斜筋ふくしゃきんで大根おろしたい。」「秀人鬼宮です。よろしくお願いします。」   

 ガルツは、ユノに褒められたのが余程よほど嬉しかったのか、至福の表情を浮かべて顔を赤らめる。そして、また、スーツを着込んで屋敷を案内した。  

「ガルツさんの喜ばし方はコツがあるみたいで、おじ様がたくさん教えてくれたの。」

「……よく覚えとくよ。ガルツさんは変態だと。」  

 広い庭から、屋敷の中に入ると入口の左側の応接室に案内された。部屋のソファーには、中年の紳士と眼鏡姿の女性が座っている。  

「殿下。お待ちしておりました。……やはり。なるほど、君が秀人君だね。よろしく。私はスネイク ツヴァイス。ツヴァイス商会の会長をやっている者だ。」  

 スネイクは普通に挨拶をしているが、女性の方は秀人に鑑定を使っていた。ウィンドウを操作している事は隠しようが無い。秀人は鑑定機の時には感じなかった誰かに覗かれているような違和感を感じる。秀人は女性に向かって鋭い視線を向けた。  

「まったく。その年で上級鑑定に気付くか。その性質上、鑑定の動作すら認識されない仕様なのだがな。とりあえず、勝手に鑑定して申し訳無い。モグラもう鑑定は止めて良いぞ。」  

「商売をする上で必要な情報を得たかったのでしょう。続けて頂いても構いませんよ。それで、私はツヴァイス商会さんと取引をする価値はありますか?」  

「もちろん。結果はどうあれ支援はするつもりだ。で、どうだったね? モグラ。」  

「生産系のスキルの数が尋常じんじょうじゃありません。世界中の職人を鑑定して来た私でも、まるで見た事も無いスキルが山の様に確認出来ました。これ程の神の恩恵があれば、戦闘は期待出来ない代わりに、莫大な富を得るでしょう。この年齢でLv37ですし……あくまでも現時点での話ですが。」  

 そこで、モグラがスネイクに耳うちする。スネイクはそれを聞いて、一瞬どこか悲しそうな顔をした後、今度は嬉しそうに笑顔になる。  

「では、秀人君。君には2つの選択肢を用意した。1つはまずうちの商会で働く事。これは君が私の元で商売を学びゆくゆくは自立する道だ。報酬は、月に固定で金貨100枚。それと期間中に君が作った商品は純利益から歩合として二割支払おう。2つ目は、うちが管理している店舗を適正価格で貸し出そう。今後店舗を増やしたい時も私に言ってくれれば良い。普通は売上の35%が国への税金になる。だが、うちの商会は税をたくさん納めているから、それだけユートピア国に優遇ゆうぐうされている。うちの商会と契約するだけで税金は売り上げの15%にまで下がるよ。それでも、うちが貰うのは毎月適正てきせい金額の家賃だけ。更に新店舗オープンの際は、最低限の従業員の教育もしよう。新しく店舗を作る場合でも、自分で買わずにうちが店舗を買って管理すれば、国への登録費が無料になるから、その都度相談してね。」  

「1つ目は商売を知らない私に取ってとても魅力的です。2つ目は、私にメリットがとても多いですね。でもツヴァイス商会のメリットとしては家賃収入だけですが、いったいどうゆう事なのですか?」  

「言っただろ。私は君を支援するつもりだって。それは学びか他では考えられない利益を支援するって事だ。もしくは最短で経営を学ばせその両方を支援する。これは君の為では無い。君は絶対に成功し確固かっこたる力を獲得する。それが殿下・・達の為だと思うから支援するんだ。難しく考えずにこれを受けて欲しい。」  

「では、お言葉に甘えます。ユノの紹介なら間違いないでしょう。店舗を用意して欲しいです。」  

「了解した。秀人君、君にはとても期待しているよ。困ったらいつでも相談に来てくれたまえ。モグラ。詳しい話は君が窓口になって進めたまえ。」「かしこまりました。」  

「スネイクさん。モグラさん。ありがとうございます。」
「おじ様、毎回、助けて下さり本当にありがとうございます。」  

「いいえ。秀人君。ユノさん。是非とも力をつけて下さい。それだけが私の望みです。」  

 帰り道、秀人は王都を通る荷馬車で荷台の部分がおりになっている奇妙きみょうな荷馬車を見かける。その中には、首輪に手かせや足かせをされた、やせ細った男女の子供が項垂れた状態で、お互いに凭れ掛るようにして座っていた。秀人は異様な光景に、注目すると女の子の方は顔をくしゃくしゃにしてすすり泣いていた。 




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  ◇ ◇  

※ここからは後書きです。興味の無い場合は読み飛ばして下さい。 



鑑定系のスキルとレベル差
レベル差が40以上で情報が劣化しはじめ、レベル差が50以上あると鑑定不能。  
同様に、装備込みでステータスに差がありすぎる場合も鑑定出来ない。ただし、こちらの場合はレベル差よりも更に差が多い。


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