現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

もう一人の王女

「それでは、ホームルームは終わります。休み時間が終わったら実習室に移ってください。」

 ホームルームが終わると秀人達は自然にユノの席に集まった。

「ユノ。実習って何をやるの?」

「何人かでグループを作って、グループ内でスキルや魔法を使った戦闘訓練が多いかな。後はそれが終わった後、生徒同士で互いの技術を教え合ったり、担任と副担任の先生が巡回してるから、回って来た時は直接指導もしてくれるよ。まあ、私に関わるとろくな事が無いのはみんな分かっているから、ケイニーと2人の寂しいグループなん――。」
「うざいっ。」 

 ユノの会話の途中で秀人とユノの間に立ちはだかる者がいた。ユノを向き仁王立におうだちしているのは、ユノとどこか容姿が少し似ている女性。金色に所々にピンクが混じった、ゆるリッチウェーブの様な巻紙のロングヘアーで、長身で折れそうな程スリムなだが、全体的に見ると出るとこは出ていてモデルのようにスタイルが良い。

 その後ろには、いかにも取り巻き風の女性が2人いる。

「ユノ。自分の立場を忘れたのかしら? あんたの母親に恩赦おんしゃが与えられたからって、調子に乗ってるんじゃないでしょうね? 今度は平民風情を取り巻きにして、何を企んでいるのよ?」

「キヌハ姉様。取り巻きではなくご恩のある友人です。私は何も企んでいませんし、調子になど乗っておりません。私は姉さま方と争うつもりも権力もありません。大人しくしているので平穏な日々を送らせて下さい。」

「ふん。平穏な日々なんて、あんたがこの国にいる限り絶対に無理だわ。存在自体がとても目障めざわりなの。」

「……。」

 キヌハは言葉を閉ざし俯いたユノに満足し、秀人達の方を向く。

「おい。特待生の平民ども。ユノとは関わらない方が良いわよ。第一王子と第一王女、両方に敵対しているどころか、真貴族にまで嫌われている名前だけの王女。近づいたらどうなるかちゃんと考えてから行動して頂戴。」

「断る。お前こそ妹をいじめて楽しいのか? 家族だったら仲良くすれば良いじゃないか。事情は知らないけど、俺はユノと友達だからこれから進んで関わっていく。だがキヌハ様だっけ? 別にあんたに喧嘩を売るつもりは無いから見逃してくれ。」

 キヌハから先程までの余裕な雰囲気が消え、癇癪かんしゃくを起し震えながら指の爪を噛みだした。その間に取り巻きaとbが、秀人に対して指を差し非難ひなんしてくる。

「平民風情ふぜいが王女様に意見するな。」
「馬鹿じゃないの。あんたに許されてる事は、返事をして従うだけなのよ。」

 キヌハはあまりの衝撃に白目を剝いている。久しくなかった肉親以外からの自分への対立意見。

「がぁーーー。意味がわからない。平民。この美しくて高貴な国民の誰もが憧れる偉大な王女。この私によくも。くそっ。いったい、なんなのよ!…………おい平民。私は忠告したわよ。これから何があってもそれは自己責任だから。」

 キヌハ王女は、他人から意見される事に慣れていない。顔を真っ赤にして震えたまま去って行った。取り巻きの2人が「大丈夫です。王女様はお美しいです。」「間違っているのはアイツです。」などと、一生懸命にご機嫌を取っていた。

 ユノは俯いたまま口を噤む。秀人と陽菜と心愛はそんなユノを見て他人事とは思わなかった。今まで理不尽にいじめられてた秀人と、それを知っていた2人。だからこそ、今度こそ絶対にそれを阻止するとまで考えている。

「ユノ。気にしないで大丈夫。俺達がいるよ。」
「うんうん。私達がついてるから、絶対に変な事はさせない。」
「ユノ。見た感じ今まで本当に辛かったでしょう。でも、もう大丈夫ですよ。私達が絶対に守るから。国家権力だろうとなんだろうと私は理不尽を許しません。」

「みなさん。ありがとう。」

 表情を曇らせながら感謝の言葉を言うユノ。しかし、そこに現れたケイニーは秀人達を否定した。朝、学園まで秀人達を案内をしたクラスメイトだ。

「自分達が何をしたかわかっているのですか? 皆さんは私達から離れて、余計な事をしないで下さい。ユノ殿下に何かあれば私が守ります。相手は第一王女、事を荒立ててしまえば逆効果です。今まで私と殿下はひっそりと2人だけで耐え忍んできました。こちらが大人しくしていれば、被害は最小限にとどまります。どうか波風を立てないで頂きたい。」

 ケイニーの言葉に、秀人は納得する事は出来なかった。秀人はいじめに屈した事は無い。そのせいで暴力はエスカレートしていった。屈してしまえば、殴られる回数は減ったのかもしれない。だが、たった一つ自分の尊厳そんげんが失われる事は、自分を卑屈ひくつにする事だけはしたくなかった。それをしてしまったら亡くなった両親、祖父や香織や陽菜に心愛にまっすぐに顔向け出来ないような気がしていた。

「俺はこの国の事情はよくわからない。でも、せっかく俺達はここに来たんだ。ここでレベルをあげて、ここで仲間を作りたい。今まで俺は何もしてこなかった。いじめられてただ耐えていた。努力をしないせいで大切な人に嫌な思いをさせた事もある。だから、俺はちゃんと努力するから、俺達で助け合う事は出来ないかな? ユノ、ケイニー。俺達の仲間になってくれないか?」

 ケイニーは下を向いていた。王国騎士団の一家に生まれたケイニーは出来損ないの騎士で、今まで何度も剣の道を挫折ざせつして来た。この国の騎士の貴族家庭で剣が苦手な事は相当な引け目だった。家族にも毎日のようにさげすまれ、自分に絶望していた頃、そんな幼い自分の心を救ってくれたのがユノだった。ユノのケイニーの父や兄に対する毅然きぜんとした態度がケイニーを救ったが、ユノが入学してからそのプライドを捨てた事で、自分もまた昔の卑屈ひくつな自分に戻っていた。

 ユノの本当の姿が一番見たかったのはケイニーだった。


 毅然とした態度で、ハッキリと自分の言葉を話すユノこそが、幼き日のケイニーを救った、たった一つの希望だったからだ。


 だが、ケイニーは秀人から顔を背ける。第一王子に第一王女。ユノに敵対しているのは、どちらも国を裏で操る真貴族が応援している勢力なのだ。あまりにも強大すぎる敵に対して、被害を少なくするくらいしか方法が無いと思っている。


「私達がこれまで耐えてきた時間を考えてくれ。大人しくしているだけで、全てが上手くいくんだ。頼むから私達を放って置いてくれ。」


ケイニーは自分の情けない言葉に吐き気を催し両手で口元を押さえる。ユノ王女のたった一人の騎士として、ユノを守る為の行動が一緒に耐える事しかない。ケイニーはユノの騎士として理不尽に命がけで立ち向かわなければいけない事を分かっている。だが、それをした場合残されたユノは一人になってしまう。苦肉の策。たった一つの道。自身の騎士道から反する対応を繰り返す事で、もうずいぶん精神を病んでいる。この吐き気はなにも今回が初めてではない。ケイニーは食事の味を忘れるくらい苦しみ、食べては吐いてを繰り返していた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇   

※ここからは後書きです。興味の無い場合は読み飛ばして下さい。 



学園の授業内容(月曜日から木曜日まで)

午前:実習
午後:魔法学科 or クラブ or 自主学習・研究 

クラブ活動及び自主的な学習をする生徒の方が卒業に近くて優秀な生徒が多い。通常は早く魔法学科を修了し、生徒主体のクラブか、専門要素の高い自主学習や自主研究に参加する。
論文を提出したり、博士の最新の研究に助手として参加する。(ユートピア国での博士は研究目的で学園に存在する教師よりも上位の存在。学園長にスカウトされた傑物達。教える事よりもその研究によりユートピア国の発展に重きを置く。)

午前中の授業は、主に戦闘訓練なので基本的に学年は関係なく、戦闘の資質をランク別にしてそれぞれのクラスの隣にある実習室という大きな部屋で実習する。 
クラスのランクは、SS,S,A,B,C,D,Fの7種類。建物の1階は7クラスと7つの実習室と職員室や教室の数が少ない分いろいろな部屋がある。
実習室では戦闘も行われるので、1階だけは高さが4メートルくらいある。

午後の講義はSS,S,A,Bが合同でハイクラス。C以下はロークラス。

魔法学科は、精霊魔法のみの講義で
火属性魔法 ロークラス1学年2学年3学年ハイクラス1学年2学年3学年  
雷属性魔法 ロークラス1学年2学年3学年ハイクラス1学年2学年3学年 
水属性魔法 ロークラス1学年2学年3学年ハイクラス1学年2学年3学年
風属性魔法 ロークラス1学年2学年3学年ハイクラス1学年2学年3学年 
木属性魔法 ロークラス1学年2学年3学年ハイクラス1学年2学年3学年 
土属性魔法 ロークラス1学年2学年3学年ハイクラス1学年2学年3学年

進級試験をクリアしないと次の学年に進めない。逆に試験さえクリア出来たら学ばなくても次の学年に進める。ただし、1年の半分で進級してしまったら、次の学年は講義が半分進んでいるので、通常は年度の始めである1月までに昇級試験をクリアする事が多い。
ロークラスで3年学ぶと、ハイクラスに入りなおす事も出来る。貴族は幼少から魔法を学んでいるので、ランクによってはハイクラスから始める。
Cクラス以下は最初はロークラスに所属するがロークラスの3学年の試験をクリアすると、ハイクラスに入りなおせる。魔法が1属性しか使えない場合はこのやり方が多いが、2属性使える人はハイクラスから違う属性のハイクラスに移動する事もある、だが2属性六芒星ヘキサグラムの魔術師は1000人に一人と言われるくらい少ないらしい。 
ハイクラスを3年学んだ者やお目当ての魔法の試験を3年目まで全てクリアした者、魔法の講義を必要としない者は、午後は何かのクラブに所属し生徒主導の学びをする。

金曜日のカリキュラム(課外授業)
自主的に作るグループごとに分かれて行う授業。引率を先生やギルドの冒険者パーティに依頼し、生徒の実力に合わせたフィールドやダンジョンでモンスター退治する。冒険者への依頼は生徒が費用を負担するので、引率の先生が下級モンスターがいるフィールドに全員を連れて行くのが一般的だが、一部の強い生徒は、冒険者ギルドに引率を依頼して、自らもパーティーを組んだりしてダンジョンに挑む事もある。

卒業の条件。
学科やクラブで学んだ事や自分なりの成果を卒業論文として提出しそれを認められた場合、戦闘形式の卒業試験を受けられる。試験をクリアしたら学園を卒業出来る。卒業試験は、3人のB級以上の冒険者とそれぞれ戦闘し、技術を全員に認めて貰う事。卒業試験はいつでも受けられるが、失敗したら1か月以上は期間をあけて挑む事がマナー。卒業試験に挑まなくても、学園生活を8年繰り返した場合には自動的に卒業出来る。

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