現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

王立第一魔法学園②

ユノと学園長は、秀人の言葉の節々で軽い悲鳴を上げていた。そのどれもが衝撃の内容でそれを信じる為の証拠が鑑定結果やユノの体験が実際に経験している。ユノは感嘆し学園長は驚愕きょうがくしていた。

「秀人さんが弱いとは思えませんが……ですが、どおりで。明らかに常識を超えていますからね。神託の勇者様だったのですね。それもこの世界とはまったく別の住人? 私の秀人さんはやはり偉大な方でし……すみません。いったん落ち着きます。あとは学園長、お願いします。」 

「やはりな。勇者でもないとこのデータやユノ君の話の説明が付かない。じゃが。例え勇者であったとしても、明らかにこの世界の常識を逸脱いつだつしておる。勇者が異世界から来たなど聞いた事もないからな。陽菜君と心愛君の情報も知りたいので、是非とも、この鑑定機で測らせてくれないか? この事は誰にも口外せぬので安心して良いぞ。」 

 学園長からの提案に戸惑っている陽菜と心愛の二人。現実世界から連れて来た秀人の友達なので、言っている意味をほぼ理解出来ていない。

「秀人。心愛さんどうします?」
「私は大丈夫ですが、秀人君どうすれば良いですか?」 

「うん。学園長は安心して良いみたいだから、2人共、指示に従ってくれるかな?」 

 秀人の言葉で動き出した心愛が鑑定機に手を差し出すと、その手を見た学園長が立ち上がり驚きながら悲鳴を上げた。  

「ぬおーーー!! その紋章は八芒星オクタグラムではないか! 八芒星オクタグラムの魔導士がまさか本当にこの世に存在するとは!! もし、君達が神託しんたくを隠すと言うのなら、それは絶対に見せてはいけないぞ。それは全属性が使えるエレメンタルマスターである証。もはや勇者どうこうのレベルでは無いのじゃ。……すまん。興奮してもうた。」 

 そういうと学園長はソファーに座り直し、心愛と陽菜が鑑定を受ける。その鑑定書を確認して、学園長は再び驚き、そしてまた話を始める。 

「秀人君の天性ネイチャーがおそらくは伝説級レジェンダリーの【L】じゃという事は既に考察済みじゃ。この世界のランクの概念に文字通り伝説として存在するからの。じゃが2人の世界級ワールド【SSS】というのも、天性ネイチャーとしては、まだ世間で未確認とされておるランクなのじゃ。これは私とそこにおるユノ君しか知らん。」

「どういう事ですか?」

「ユノ君の天性ネイチャーもまた【SSS】なのじゃ。じゃが、ユノ君は2人とは違い、女神様が勇者を選ぶ際の基準とされるらしい魂2つ持ちでは無い。陽菜君と心愛君も女神様に選ばれただけあり、後発的な天性ネイチャーがあと一つずつあるようじゃな。」 

 秀人の頭の中に? が降りて来た。それもそのはずで2人を選んだのは神ではなく秀人自身だったのだ。だがとくに言葉にせずに胸の中にしまい込む。それを相談するには、信頼出来る他人が、2人だけしかいない事実も打ち明ける事になる。

「秀人君。ひとつだけ気がかりな事があるんじゃが。ガイアに於いて魔力は魔法だけの力ではない。より詳しくいうと魔力というよりも、魔力回路と魔力循環じゃな。これはステータスには表示されないんじゃが、魔力の血管の太さと流れる速さといったら理解出来るじゃろうか。これは太い方が強く、回転が速い方が爆発力が高いと言われている。この二つを操れる猛者は、戦闘面ではステータスをも凌駕すると言われておる。」

「その二つは何に対して働く力なんですか?」

「ステータスはもちろん戦闘に関する全てじゃ。もしかすると、この世界の理すら、それが影響してくる。」

「それだったら、MPや魔力はゼロですが、俺のステータスはちゃんと機能していると思いますよ。」

「そうじゃな。儂も安心して良いと思うぞ。女神様がその辺の事を考慮していないとは考えにくい。それにあの時も明らかに……いや何でもない。この世界の常識や歴史なども、この学園で学ぶと良い。」



 学園長は、臨時試験で見た事は伏せ、その後は異世界ガイアの事やユートピア国の事をいろいろと説明した。神託しんたくの勇者には、人である以上は必ず支援をしなければならない。それは学園長も同じであり、その支援を秀人達に約束した。
 3人共に特待生として、授業料、寮費、食堂利用料全額無料の高待遇たいぐうで本日付けでSSクラスに配属はいぞくされる事になった。 

 秀人とユノと陽菜と心愛は、担任のキュリオンと副担任の後について行った。移動しながら、これから同じクラスの仲間になるという事で全員が敬語を取り払い、名前についてはそれぞれが呼び捨てにする事になった。

 SSクラスの担任の先生。キュリオン ジークレフ ヘルネスは貴族の侯爵だが、学園長を尊敬し、貴族である事を主張しない変わった教員だ。スラっとした体形で元王国魔法師団に所属していた43才でLv65。30才くらいに見える童顔で、一見すると魔法師とは思えないようなスーツを来たサラリーマン風の紳士。 

 同じく副担任で平民出身のカインズ。28才女性でLv60の魔法師。胸元まで伸ばした黒髪と眼鏡が特徴の美人。学園長が赴任した3年前、それまでは教師が貴族で無いと貴族生徒を従わせる事が困難という理由で教師は貴族だけだった。だが、学園長が学園内で貴族権力を使用する事を禁止とした為、学園では貴族だけでなく、優秀な平民の魔法師を先生として雇う事になった。

 教室にはキュリオンとユノだけが先に入り、秀人達は入口に控えている。カインズに呼ばれた順番で入室する事になった。

「それでは転校生を3人紹介します。全員が特別に優秀な特待生らしいので、皆さんは彼等から学ぶことがたくさんあると思います。是非、仲良くしてあげて下さいね。それではカインズ先生。秀人君に入って貰って下さい。」

「秀人君どうぞ。」

 カインズの合図で秀人が先に教室に入り、手招きしているキュリオンの隣、教壇きょうだんの横まで歩いて行き、そこで挨拶をした。

「はじめまして。秀人 鬼宮です。皆さん、どうぞよろしくお願いします。」 

「ここは貴様の様な平民が来て良いクラスじゃねえぞ?」





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  ◇ ◇  

※ここからは後書きです。興味の無い場合は読み飛ばして下さい。 



魔法と属性 精霊紋 天魔紋

精霊の属性6種と魂の数と魂が持つ属性の性質で契約出来る 左手の精霊紋 
相乗効果の雷と風 それぞれ弱点属性と有利属性を持つ水、火、木、土 

天使と悪魔どちらか一方とだけ契約出来る右手の天魔紋(選ばれた特別な者にしか契約出来ない) 
天使の聖属性 悪魔の闇属性

扱える魔法の属性の数は、左手に現れる精霊紋の形で判別される。
属性1つで五芒星ペンタグラム、2つで六芒星ヘキサグラム、3つで七芒星ヘプタグラムの魔法師と言われる。
そして、今の世には七芒星ヘプタグラムの魔法師までしか確認されていないとされている。
それは精霊と契約出来る属性が人の魂1つに対して基本1つと言われるのが原因だった。
ただし右手の天魔紋は左手の精霊紋とは別口で契約可能。天魔紋は特別な者の右手にしか出現しない。相対関係の天使と悪魔の紋章はどちらか一方しか現れない。
魂の数は歴史上、勇者などで2つまでが確認されている。精霊紋から2種の属性と、天魔紋から一種の属性を足して3つ。これが人の限界である。

属性4つ以上の八芒星オクタグラムの精霊紋が左手に現れるという事は、精霊と契約無しで全属性が使えるエレメンタルマスターがほぼ確定する。



エレメンタルマスター  

天性ネイチャーもしくは、高すぎるステータスなどの影響で、ガイアとの繋がりを濃くし、魔力をあらゆる属性に変換する属性変換率があらゆる属性で100%を超えた者。 
その特徴として、MP、魔力、魔力循環、魔力回路など全ての数値が異常に高い。ゆえに八芒星オクタグラムの魔法師は、その他の魔法師を圧倒的に凌駕する。 

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