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現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。

漆黒の炎

早期クリア

「先生。異世界に行く前に、もう一人仲間を連れて行きたいので、もう少しだけ待っていて貰っても平気ですか? 女神様の説明だと、俺と異世界に連れて行く仲間だけが使えるスキルに、分身アバターというものがあります。それで異世界と地球に3体ずつ自分の分身アバターを作れるんですが、今、その分身アバターがこの家に仲間を連れて来ている最中なんです。これは心愛先生も使える様になると思うので、本体は異世界で冒険してても、その間に現実の世界でも今までの3倍は行動出来ます。」

「凄すぎますね。期待とワクワクが止まりません。」


 ――3時間前


 午前11時、秀人は心愛の家に向かう途中の公衆トイレで分身アバターのスキルを使っていた。分身アバターの秀人(秀人B)は、唯一の友達である西園寺陽菜の家に向かっていた。秀人は携帯電話を持っていないが、陽菜の方は持っているので、本当はどこかで電話をすれば済む話だった。
 だが、とにかく急いでいたので、そんな事を考えている余裕が無かった。

 陽菜の家は代々政治家の家系で、過去に大臣を輩出したという由緒ある家柄だった。その優秀な遺伝子を受け継いだ陽菜は、勉強も運動神経も突出した文武両道の天才。だが、それらと見た目が美人という事が原因で、男子からは人気があり、逆にクラスメイトの女子達の嫉妬を買う事が多かった。

 ――陽菜は小学校2年生くらいの時から周りに無視をされていた。元々、孤高の性格だった為に本人は気にしていなかったらしい。秀人がこの街に引っ越して来たその日、クラスメイトの剣崎義和よしかずに陽菜が暴行を受けそうになっていた所に秀人が出くわした。当然秀人はそんな場面を見過ごす事が出来ずに、陽菜を庇い盛大にやられていた。

 陽菜が秀人に最初に言った言葉は、お礼ではなく文句だった。
「あなた。弱いくせになんで私を助けるのよ。……冗談じゃないわ。」
 秀人はそれを無視して剣崎の前に立ち続けた。その甲斐あって剣崎から目を付けられ、その日から秀人は剣崎一派のサンドバックになった。ただ、それが無かったとしても、剣崎は玄一げんいちの子分みたいな所があったので、遅かれ早かれ秀人が標的になっていたであろう事は変わらない。
 何度も立ち上がる秀人に根負けした形で剣崎達がいなくなると、陽菜は秀人に肩をかしていた。
「同学年なんて幼稚すぎて今まで誰の事も相手にしなかったけど、あなただけはこれから友達になってあげる。この優秀な私が友達になってあげるんだから誇ると良いわ。」 
 そんな出会いもあってか、それ以来陽菜は秀人の唯一の友達になった。
 陽菜にとっても秀人は同学年では唯一の友達だった。ただ、いじめられっぱなしの秀人とは違い、陽菜はその一件以来、空手とキックボクシングを習い始める事になる。そして、空手では中学最後の大会で全国優勝までやってのける程の実力者になっていた。
 秀人は陽菜のプライドとそのひたむきな努力を見せつけられ、何度も交流するうちに、陽菜に特別な感情を抱く様になる。――




 秀人Bが陽菜の家に行く途中、商店街にある喫茶店の横を通り過ぎると、ガラス越しに陽菜と妹分青木いばらの姿が見えたので、慌てて後退る。
 陽菜を見つけたが、その喫茶店に入るのを少し戸惑っていた。

 秀人はこの茨が大の苦手だったのだ。しばらく話しかけようか迷っていると、陽菜よりも先に秀人Bの事を発見した青木は、すぐに喫茶店を出て来ていた。そして、いつものように秀人Bに最大級の悪態をつく。

「性懲りもなく、また陽菜様に会いに来たのね。このイカレ勘違い野郎。早くここから立ち去りなさい。陽菜様は今日一日私とデートしてくださる予定なのよ。あんたなんかに構ってる暇なんてこれっぽちも無いんだからね!」

「――そこまでよ茨。まったくあんたは、何遍言えばわかるの? 私の友達にいちいち突っかからないでよね!」

「駄目です。陽菜様も、もっと気を付けて下さい。こんなおでぶ。陽菜様の美貌びぼうに全然釣り合いませんよ。例え友達だとしても私はそんなの絶対に認めません。鬼宮も早く立ち去りなさい! 私の目が黒い内は……キ〇×Θエ▽Λ◎Zヴ◇Π……金輪際、陽菜様には会わせ……イタッーイ……。」

 青木は怒りに我を忘れ、秀人に近づきながら怒涛の勢いで捲し立てる。後半は早口で何を言っているのかさっぱりわからなかった。だが、ようやく聞き取れたと思った所で陽菜の拳が青木の頭に振り落され話が終わった。

「このお馬鹿! 容姿なんて関係無いでしょ! それに茨に認めて貰う必要なんて全然無いわ。今日はもうあんたと遊ぶのはおしまい。早く帰って頂戴。」

「そんなぁー。今日はずっと一緒に居てくれるっていったじゃないですかぁ。私は陽菜様の今日こそ陽菜様の部屋に入って、どさくさに紛れて、そこで結ばれるプラ……ぶはぁっ」
 陽菜は話の途中で茨の頭にげんこつをお見舞いする。

「――早く帰れ! それと、ちゃんと反省するまでは、あんたとは会わないつもりだからね。」

「反省しましたー。だから……ひっ。」

 陽菜が茨に向けて本格的に空手の構えをすると、涙を浮かべながら茨は退散した。
「秀人、茨がいつもごめんねー。秀人が絡まなければ、普段はどちらかと言えば良い子に近い感じなんんだけど。」

「別に気にしてないよ。それより、ちょっと陽菜に相談があって、あまり人に聞かれない所で話したいんだけど、どうかな?」

 陽菜は、手で顔を覆い身悶えている。

「……な……何よ! 良いわ……うん、聞いてあげる。公園で良い? 早く行きましょう。」

「じゃあ。公園でお願いします。」


 秀人Bは公園に着くと、そこに2人きりなのを確認して、アビリティスキル【究極変換】を使用し、その辺に転がっていた小石を拾い陽菜の前で宝石に変えて見せた。
 陽菜は顔を真っ赤にして驚いていたが、秀人Bが宝石を捨て、異世界の話を始めると、肩を落としてとてもガッカリしている。
 秀人Bはその暗そうな顔に半ば諦めたが、途中まで話してしまったので、女神の話や、自分がやらなければいけない事、異世界で経験した事などを最後まで話した。

「突然こんな事言われたら嫌だよな? だったら、心愛先生と2人で頑張るから陽菜は気にしないでいいよ。」

「え? 心愛先生って、高校で剣崎の事で助けてくれて、それから、いろいろ騒いで問題になったって秀人が言ってた。教育実習の人? その前に私の事を誘ってくれてるのかな? だとしたら、あんたの事を放っておけないし行くに決まってるんだけど!」

「良いの? 良かったぁ。俺に友達は陽菜しかいないからな。」



 ――そして、時間は現在に戻る



 心愛のアパートで陽菜と心愛が初対面を果たした。陽菜も心愛も分身アバターの説明は済んでいるので、秀人が2人いる事にはもう驚いていない。

「初めまして、西園寺さいおんじ陽菜です。秀人とは中学までの同級生でした。心愛さんの事は秀人からよく聞いています。あの恐ろしい剣崎に対して怯まずに立ち上がったり、その事で校長先生をはじめ職員達や問題児の親に対しても毅然とした態度で正義を貫いたと聞いています。本当に尊敬出来る大人の人に、秀人が巡り合えて、友達の私も本当に感謝してます。よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。鬼龍院 心愛、短大生です。私も陽菜さんの話は秀人君から聞いています。空手の全国大会で優勝したり、都内で有数の進学校に通っている秀人君のたった一人のお友達って聞いてます。きっと異世界に行ったら一番活躍出来そうですね。」

「じゃあ。やっと、みんな揃ったから出発しましょうか?」

「うん。いこう。」「はい。なんだかドキドキします。」

 秀人は、アイテムボックスから、紫色の異界への扉を取り出しそのドアを開けて進み出す。それは異世界の宿屋の自室に繋がっていて、普通にただ部屋を変えただけのような感覚で転移していた。
 秀人の予想に反して2人は女神の所には行かずに、そのまま異世界の部屋の中に入って来た。

「異世界の街を散策するのと、2人のステータスを鑑定するのどちらが先が良いですか?」

「もちろん街よ! 異世界が見てみたいわ。」「私も行ってみたいです。」

 陽菜と心愛の要望で、秀人達はガイアのユートピア国、王都プレバティーの街を散策さんさくした。

 2人に異世界の通貨を5万セガずつ渡し、街にあるお店の中にもたくさん立ちった事で従業員らしい亜人族にもたくさん遭遇する。
 さまざまな店の内装に備え付けられた家具のアンティーク。秀人は前回急いでいて、それらをじっくり見れていなかった。そのどれもが現実離れしていて、秀人はここが本当にファンタジーの世界であるという事を再認識していた。

「異世界最高ー。早く使命を果たして、お金を貯めて、こっちの世界でも早期リタイアする。」

「は? あんた何を言っているの? それをいうなら早期クリアでしょ。何をするか分からないけど私も頑張るわ。」

「はい。私も頑張って秀人君の力になります。早期クリアしましょう。」

「……うん。ありがとう。皆さん頑張りましょうね。」










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※ここからは後書きです。興味の無い場合は読み飛ばして下さい。 


秀人の現在の固有アビリティー

究極刀匠 異世界には存在しない日本刀を打つことが出来る。 

究極変換 物質を1ランク上の物にまで変化させる事が出来る。変換前と変換後のポイントを記憶し変換前と変換後を再変換できる。
ランクが同等の物に変換する場合や見た目だけを変える場合は、変換ポイントを記憶する必要はなく、何度でも別の種類に変換可能。 
これらの効果を応用し自分やパーティーの外見を変身させる事も可能。 

「現実世界で虐められ続けた最弱の俺は、剣と魔法のファンタジー世界でMP0の生産チートで無双する。落ちこぼれ王女と親に生き方を決められた公爵令嬢との人生逆転物語。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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