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孤高の女王

はゆ

影響

 夏休み中旬。
 <ひなさん>と友人になった日を境に、連日れんじつ一緒に過ごすようになった。
 『付き合う人間は選びなさい』が口癖の母が、一切いっさい口を出してこないことが不気味――とはいえ、苦言を呈されたいわけではない。
 <ひなさん>と初めて遊んだ日から、宿泊まで許容された。羽菜ハナが高校生になったから、成長に応じて母が寛容になったのだと解釈する。

 今までの接点は無くても、長期間一緒に過ごしていると、相応に影響を受ける。

「脚綺麗なんやし、絶対に出した方がええで。視線浴びるたび、美しなる言うし」
 羽菜ハナは<ひなさん>の脚に視線をる。いつも出しているからだろう、言葉どおり綺麗。
 <ひなさん>に勧められるまま、露出が多い服を着るようになった。服を自分で選んだ経験が無い羽菜ハナにとって、誰かが選んでくれた服を着衣ちゃくいすることは当然のこと。<ひなさん>が褒めてくれるから、抵抗は全く無い。

 購入した服は、全て<ひなさん>の家に置かせてもらっている。出掛ける際、<ひなさん>の家で着替える。
 決してやましさがあるわけではない。けれど、服装の変化について、母から何かを言われたら、応対するのが面倒。だから持ち帰っていない。
 とはいえ、着衣ちゃくいするのは、ショッピングモールやインターネットで購入した、普通に販売されている服。真夏だから、見知らぬ周囲の人たちの露出も多い。羽菜ハナだけが、特別露出が多く、目立つ格好をしているということはない。

 ただ、露出量に比例し、感じる視線が増えているのは事実。

「見られとるのわかる? 向こう見んと、うちの動作、真似して」
 羽菜ハナは小さくうなずく。
 視線には、気付いていた。もしも一人で居るときだったら、視線に嫌悪感をいだくと思う。けれど、<ひなさん>と一緒だからか、負の感情は湧いてこない。

 <ひなさん>と同じように、左足を少し前に出し、足を組み交差させる。
 すぐに声を掛けられた。以前とは比較にならない程、知らない人から声を掛けられるようになった。残念ながら、言葉だけで退いてくれる相手ばかりではない。

 羽菜ハナは、幼少期から合気道を嗜んでいる有段者。暴力的な行動に出られた際は、軽くいなした。大半の人は、それで退いてくれる。そうでない場合は、過剰防衛にならない程度に抵抗する。

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