42歳 主婦 旦那様に片思い中【佳作受賞作品】

くっきぃ♪コミカライズ配信中

不妊②

不妊治療を始めてから、1年後、純ちゃんは言った。

「そんなにお金をかけてまで、子供って必要?
 2人だけで生きていくのはダメなのかな?」

なんでそんなこと言うの?

純ちゃんは、子供、欲しくないの?

子供が欲しくて仕方ない私は、逆にこう質問する。

「純ちゃん、もし、今、ここに子供がいたとして、誘拐されて身代金500万円を要求されたら、どうする? たかが500万なのに、勿体ないから、払わない?」

それを聞いた純ちゃんは、パッと顔色を変えた。

「それは、払うよ。当たり前だろ」

彼の真剣な表情を見て、私は畳み掛ける。

「じゃあ、まだ見ぬ我が子の命のために500万くらい使っても、命の値段だとは思えない?」



それから、純ちゃんは、何も言わなくなった。

治療にも積極的に参加し、顕微受精が続いても、金銭面の事は何も言わず、採卵日には半休を取って病院に来てくれた。


私は、それから2年半治療を続け、29歳でようやく妊娠する事ができ、30歳で長女を出産した。


私は、幸せの絶頂にいると思ってた。



今も、決して不幸せなわけじゃない。

優しい夫がいて、かわいい娘がいて、円満な家庭がある。

ママ友がいて、パートで気楽に働いて、気晴らしもできる。

だけど、寂しい。

純ちゃんにとって、私はいつから女じゃなくなったの?

こんなにあなたに恋い焦がれたのは、初めてかもしれない……


「42歳 主婦 旦那様に片思い中【佳作受賞作品】」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く