ネクスト・ステージ~チートなニートが迷宮探索。スキル【ドロップ★5】は、武器防具が装備不可!?

武蔵野純平

第16話 対コボルド作戦

『H市第一ダンジョン(仮称)入場 13時05分』

 冒険者専用アプリにダンジョンの入場記録を入力して、うちの鉱山ダンジョン一階層に入った。

 入り口から真っ直ぐ坑道を進むと分岐点だ。
 冒険者専用アプリのマッピング機能を確認する。
 昨日は、この分岐点を右に進んだ。

「右方向は全て探索したし、宝箱は一つ回収した。左の道へ行こう!

 俺たちは左の坑道を進み始めた。
 五分も経たないうちに、スコップを持ったコボルドが現れた。

「おいでなすったぜ! 金貨が!」

 沢本さんが嬉しそうにニンマリと笑いながら細身の剣を構える。
 俺は沢本さんを制して前に出た。

「オイ! カケル!」

 沢本さんが驚き俺の肩をつかむ。
 俺は振り向き、気合いの入った声で沢本さんに作戦を告げた。

「俺が囮をやるから、沢本さんは隙を突いてくれ!」

「大丈夫かよ? 本当にヤレンのか?」

「大丈夫だ!」

 昨日は、沢本さんの後ろでずっと戦いを見させてもらった。
 一階層の魔物コボルドは、攻撃パターンが同じなのだ。

 そして、昨日は、一回だけ戦闘に介入したが、バールでも攻撃を受けるぐらいは何とか出来そうなのだ。

 俺は両手でバールを握った。
 昨日、沢本さんがやっていたように、左前へステップする。

 するとコボルドは、沢本さんに攻撃する時と同じように動いた。
 振り上げたスコップを真っ直ぐ振り下ろしてくる。

(コボルドの攻撃パターンだ! 予想通り!)

 俺は両手に持ったバールで、コボルドのスコップを受けた。

 ガン!

 スコップとバールが激突して、金属がぶつかり合う鈍い音が鉱山ダンジョンの坑道に響いた。

「グルルル!」

 コボルドは俺をにらみつけ、バールに叩きつけたスコップに力を込めて、俺を押し倒そうとする。
 視界の端で、沢本さんが駆け込んでくるのが見えた。

「カケル! 良くやった!」

 コボルドのがら空きの横腹に、沢本さんの剣が突き刺さる。
 コボルドは、一瞬痙攣して苦悶の表情を見せたが、すぐに光の粒子となって消えた。

(作戦成功だ! やった!)

 俺の狙い通りに戦闘は進み、コボルドを撃破出来た!
 俺は調子に乗り、バールをクルリと回しながら、セリフを決める。

「今日の俺は、ひと味違うぜ!」

「おうおう! イイじゃん! イイじゃん!」

 腕に柔らかい感触が伝わる。
 沢本さんが、ふざけて抱きついてきたからだ。
 あっ……ヤバイ……。

 俺の動揺などお構いなしに、沢本さんは続ける。

「カケル! 今の動きを、もう一回出来るか?」

「で……、出来るよ!」

「ヨッシャ! じゃあ、次に行こうぜ!」

 沢本さんは、かなり喜んでいる。
 やっぱり昨日は、沢本さん一人に負担がかかっていたんだな。
 俺が囮をやることで、沢本さんの負担が軽減されるなら、昨日よりも長時間活動が出来るだろう。

 もし、俺がダメージを受けた場合は、御手洗さんに回復してもらえば……ハッ!

 御手洗さんが、ジトッと俺を見ている。
 何か雰囲気がトゲトゲしい。

 俺は御手洗さんのご機嫌を伺う。

「あの……御手洗さん」

「知りません!」

 御手洗さんは、プイッとして、沢本さんと先に進んでしまった。

(俺……、何か不味かったか?)

 俺はドロップ品のダンジョン金貨を回収して、二人の後を追った。

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