レジスタンス 〜日本興亡史〜

中村幸男

救援

「な、何だ!?」
 突如として建物の一部が爆発し、火に包まれる。
 先程無線が復活したのと何か関係があるのだろうか。
 無線が復活した事により既に指揮官による各部隊の状況把握が行われ、統率を取り戻した。
 更に夏目のお陰で周囲に潜伏している敵は尽くが無力化されている。
 撃ち漏らしも俺達陸上部隊が対応する事で被害は最小限に離脱が出来ている。
「なぁ、そういえば朝倉さんってどうやって離脱するんだ?」
「さぁな。……まぁ、あの人なら大丈夫だろ。」
 隼人の心配も最もだが、あの人ならばなんとかするだろう。
 それだけの強さがあの人にはある。
 無用な心配だろう。
「というか敵の攻撃、弱くなってきたな。」
「あぁ、不利を悟って後退したのかもしれないな。ということはこの先で防衛戦を張られているかも。」
 まぁ、十中八九待ち構えられているだろう。
 ここで仕留められないとわかったのなら別の場所で防御陣地を構えているだろう。
 だが、こちらも戦力はまだある。
 夏目のあの船もあるし大丈夫だろう。

 俺は楽観視していた事を後悔した。
 今、敵が構築していた防衛線は予想の数倍の戦力で、現状の俺達の戦力では突破するのはかなり辛いだろう。
 夏目の船でも限界はある。
 それに敵の航空隊が船に攻撃を仕掛け続けており、地上への支援が満足に出来ていない。
「おい!三郎!どうする!?」
 現在、物陰に身を隠しているが敵の砲撃が絶え間なく続いている。
 足の遅い戦車にとっては最悪だろう。
「……俺達で活路を開くぞ。」
「正気か!?」
 隼人の感想もご尤もだが、敵の懐に潜り込んで陣地をかき乱す事しか現状を打破する方法は無いだろう。
 幸いにも防衛線の後ろは海だ。
 恐らく夏目は海に俺達を連れていき、そこで俺達を回収して離脱するつもりだろう。
 敵は後退出来ないから、撹乱さえすれば敵は敗走する。
「戦車隊!スモークを巻きまくって下さい!俺達が煙に紛れて敵陣に突入します!」
『しかし、それは危険すぎだろう!』
 味方の戦車隊の隊長の言う通りだが、そんな事は百も承知だ。
「機動力のあるこの機体で敵陣をかく乱します!それしかありません!」
『なら、俺達も混ぜて貰うぞ!』
 すると、他の64式のパイロットが割り込んでくる。
『その無茶苦茶な作戦俺達の小隊もやらせてくれ!恐らくそれが最善だろ!』
「……ありがとうございます!」
 正直、危険な所は俺達だけで良いと思っていたのだが。
 まぁ、手伝ってくれるのならば勝率は上がる。
 今は頼らせてもらおう。
『貴様ら!作戦指揮官の承認もなしに何をしている!』
 すると、今度は作戦指揮官の声が聞こえてくる。
 こうやって割り込まれては絶対に却下されると思っていたので早くやりたかったのだが仕方が無い。
「……お願いします。やらせてください。」
『……誰が駄目だと言った?』
 予想していた反応とは全く違う。
 まさか……。
『その作戦。私自ら先頭に立とう。』
 作戦指揮官はパワーメイルに搭乗している。
 予想外の展開だ。
 ここまでは読めなかった
「で、ですが……。」
『構わん!良いから行くぞ!戦車隊、スモーク散布!』
 作戦指揮官に言われては戦車隊長も従わない訳には行かない。
 戦車がスモークを散布する。
『第一、第二小隊、左右からスモークを散布しつつ前進!中央を突破する我々を隠すようにスモークを散布し続けろ!』
 64式にもスモークは装備されている。
 が、走った後に巻かれるタイプなので使えないと思っていたが連携が取れるのならばかなり有効だ。
 指示の通りに展開していく。
『全機!突撃!』
 指揮官の指示がかかる。
 それと共に64式がスモークの中を走っていく。
 敵も闇雲に射撃しており銃弾をかき分けながら走り続ける。
 そして、スモークが晴れるともう敵陣の目の前。
 俺達は敵陣を突破しそのまま敵の後方へ出る。
「食らえ!」
 旋回し、敵の背後をめがけて引き金を引く。
 敵の多くは戦車。
 パワーメイルは少数しか確認出来ない。
 こちらの攻撃のお陰で敵は大混乱。 
 作戦は見事成功したと言える。
『良し!戦車隊!前進!』
 号令と共に精鋭の戦車連隊が前進を開始。
 見事な連携により敵を正確に撃ち抜いていく。
「……これで勝ったな。」
「っ!隼人!右だ!」
 隼人が勝ったと油断したその瞬間、右に敵の89式が視界に入る。
 既に銃口はこちらに向いており引き金を引く寸前である。
「くそっ!まじか!」
 急ぎ、回避行動を取ろうとするがこれでは間に合わない。
 死を覚悟したその瞬間、敵の89式は爆発を起こした。
「な、何だ……。」
 その爆発の煙が晴れると見たことの無い二足歩行型パワーメイルが現れる。
 そして、その肩には見覚えのある国旗が描かれていた。
「北米連合の機体か……?」
 一体何故日本のこの地、そしてこの瞬間に北米連合が現れたのだろうか。
 勝敗は既に決しており、敵は敗走を始めた。
 辺りを見回してみると同じ機体があちこちにおり、我々を支援していたのだとわかる。
『……そこの機体のパイロット。』
 すると、聞き覚えの無い声が聞こえてくる。
 日本語だが、そのたどたどしさから目の前の機体に乗っているアメリカ人だろう。
『戦場では常に気を抜くな。それでは守る者も守れんぞ。』
 そう言うとその機体は去って行った。
 北米連合の参戦は予定通りなのだろうか。
 一刻も早く夏目に問いただしたい所だ。

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