レジスタンス 〜日本興亡史〜

中村幸男

決起

「私は決起します。」
 宿泊研修より、1週間後、俺達レジスタンスの主要メンバーは話があるとされ、拠点に呼び出されていた。
「私達は10年間耐え続けていました、奴らの言う新日本は日本ではありません。圧政を敷き、国の宝である国民の声に耳を傾けるどころか殺害し、完全な独裁体制を築いている。これが日本と言えましょうか!?」
 夏目が珍しく感情を表に出しているように見える。
「幸いにも戦力は整いました。明後日私達は札幌にある北部方面軍司令部を強襲し、ここに日本の再興を世に喧伝します!」
「姫殿下!質問よろしいでしょうか?」
 朝倉が手を挙げる。
「許可します。」
「戦力が整ったといいますが、私の知っている限りでは、主力兵器は64式と1個中隊組める程度の数の82式のみだったと思うのですが?」
 すると横から藤原が出てきた。
「それについては自分から説明する。」
 手に持っていた資料を見ながら説明を始める。
「先の戦闘により、パワーメイル相手に生身でも十分戦えることが判明した。よって先の戦闘のデータ分析により、練度を向上させることに成功した。」
 資料を閉じ朝倉の方へ目をやる。
「これでも多少戦力に不安は残るが、残っている戦車も残らず投入する。後は個々の練度と作戦次第といったところだな。」
「了解しました。ありがとうございます。」
「他に質問は?」
 藤原の問いかけにこたえるものはなかった。
「では、詳しい作戦については後日達する。最後に斉木大尉!」
「はっ!」
 斉木大尉が一歩前へ出る。
「君と君の部下たちには薬物検査の結果陽性が出た。この作戦の戦力が減るのは惜しいが、イレギュラーは避けたい、君たちは本拠点で待機し、再検査を受けてもらう」
「お前!薬やってたのか!?」
 朝倉が驚く。
「いややってねぇよ!?」
「では本日は解散とする。解散!」


「お前どういうことだよ!」
「いや、だからわからねぇって!」
 また、いつもの口論が始まる。
「あの噂のことじゃないですか?」
 柏木が口を開く。
「噂ってなんですか?」
 隼人が急に近寄り、話に入ってくる。
 こいつにはベルという者がいるのにまだ、柏木先生のことを諦めていないようだ。
「うん、新日本は部下の判断力を鈍らせて反乱とかを起こさなくするために薬物を使ってるって噂。上の階級になればなるほど逆に判断力が求められるから段々と投与される量が減るんだって。」
「いや、でもそんなの俺達、普通に気づくだろ!?」
 そのような噂が流れていることを知らなかったのだろう。
 斉木大尉は慌てているように見える。
「いや、食事とか、水とか予防注射だとかそう言うのに少しずつ混ぜたらわからないんじゃないですか?というか多分斉木大尉は薬物投与されてましたよ。多分。」
「なぜそう思うんだい?三郎君?」
 不思議そうに聞いてくる。
「初めてあったとき、学校を襲撃してきたときですけど、あのときの印象とまるで違います。あのときは目的のためなら手段を選ばない感じがしてました。」
「そう言われると新日本にいたときのことがあまりはっきりと思い出せない気がするな。」
 顎に手を当て考える。
「ありがとう。今のこと藤原さんに話してみるとするよ。」
「その方がいいと思います。」


「しかし本当何でしょうねその話は?」
「はい、本当ですとも。」
 藤原と藍染明はふたりきりで話をしていた。
「本当にあの北部方面軍司令の護衛がその日に少なくなるんですね?」
「はい、私の優秀な部下のおかげで知り得た情報です。」
 少し不敵な笑みを浮かべながら言う。
「それとも私のことが信用できませんか?」
 藤原を睨みつけるように聞く。
「今度の作戦は失敗は許されません。ほんの少しの不安要素でも取っ払っておきたいんです。正直貴方は少し不気味なところがある。」
「なるほど、ですが任せてください。次の戦、負けることはありません。」
 少しため息をつきながら藤原が言う。
「分かりました。では、本拠点での姫殿下の護衛は任せました。」
「お任せください。」


「いよいよだな。」
「あぁ。」
 作戦当日、札幌に位置する北部本面軍司令部庁舎のある駐屯地に来ていた。
 因にだが、俺達は64式に乗っている。
 クトネシリカはあの事件の際の損傷の改修が間に合わなかったらしく、俺達用に調整された64式で出撃することになった。
「今、司令部庁舎に北部方面軍司令が入っていったところだ。」
「あのさ、俺達はあの要塞化された基地を包囲はしているが、本当に奇襲だけで制圧できるのか?」
『大丈夫です。』
 突如として夏目の声が聞こえてくる。
『既に朝倉の隠密行動部隊が潜入しています。貴方達パワーメイル部隊は外部で攻勢を仕掛け敵の目を外に向けてくれればそれで良いのです。無論制圧しても構いませんが。』
 つまり俺たちはあくまで陽動で本命は朝倉の部隊ということである。
『敵も多数のパワーメイルを保持しています。気をつけてください。』
「了解。」
「了解しました。姫殿下!」
 隼人がふざける。
「おい!」
『ふふっ。』
 無線の向こうから笑い声が聞こえる。
『ありがとう。少し緊張が解けた気がする。』
「お前狙ってやったの?」
「え、あー、勿論!」
 こちらを振り向きガッツポーズをする隼人。
 機体に乗っていなかったら一発殴ってるところだ。
「ま、そっちも気をつけろよ。なにもないとは言い切れないんだからな。」
『うん、分かった。じゃ、頑張ってね。』
「「おうよ!」」


 数時間前……。
「早くこの事を夏目さまに伝えなければ!」
 一人の男が車を走らせていた。
 この男が日本の歴史を大きく動かそうとしていた。

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く