出張!異世界研究所!〜異世界犯罪解決します〜

中村幸男

残された者 2

「さて、まずはサーシェルさんの所へ行くとしましょう。泊まってる場所は知ってるんでしょ?」
「ああ。ここからすぐ近くに泊まってる筈だ。」
 翌日、調査を開始する前にサーシェルと連携すべく、合流することにした。
 まぁ、その他にもトマスが原隊復帰するかもしれないのでそれもあるのだが。
 何はともあれ、サーシェルからの依頼を報告するというのもあるし、やはり最初に片付けておくべきだろう。
 トマスの案内に従い、街を歩いていく。
 昨日も思ったが、首都とはまるで文化が違う。
 汽車の時から思ってはいたが、実際に明るい時間帯に街を歩いてみると、様々な発見があって面白い。
「おい。着いたぞ。」
 考えながら歩いていると気が付けば目的地についていたようだ。
 見た目は普通の建物である。
 特におかしいところは無いと普通の人は思うだろう。
 何処からかは分からないが、見張られている。
 恐らくサーシェルの手勢が念の為にここを訪れる者を見張っているのだろう。
 トマスが扉を開ける。
 中は何の変哲もない一軒家のようであり、玄関にはサーシェルが待ち構えていた。
「お疲れ様です。少佐。」
「ああ。任務ご苦労。良く無事に戻ってきてくれたな。さぁ、聞きたいことは山程ある。上がってくれ。」
 すると、サーシェルは何かに気が付いたようだった。
「ロイ殿はどうした?」
「それについては私からお話しします。」
 ロイについては私から話す。
 そう決めていたのだ。

「なるほど。そんな事が……。」
 向こうでの出来事について把握しているのは反乱が起こったという事実のみらしく、詳しくは伝わっていないようだった。
 サーシェルは私の話を聞いて、驚きを隠せていない。
 それもそうだろう。
 同じ陽炎部隊の仲間が全滅し、相手が銃を保持していたというのだから。
 陽炎部隊は隠密部隊であり、精鋭でもあるというのは誰も持っていない銃を保有しているからである。
 勿論他にも所持している部隊はいるだろうが、敵が持っているということは初めてだったのだろう。
 ロイが持ってきた、私達が入手した銃弾らしき物を見て、警戒はしていたらしいが、そこまで配備が進んでいるとは思っていなかったらしい。
「……申し訳ありません。あなた方にこんな依頼を出さなければロイ殿は……。」
「いえ、こればっかりは仕方がありません。誰の責任でも無いです。」
 しかし、今考えてみれば私ももっと上手く出来た気がする。
 私が無理矢理にでも助けに行っていれば、無傷とは行かなかったかもしれないが全員で帰ってくる事が出来たかもしれない。
 こんなことを考えてもロイが帰ってくるわけでは無いが、やはり考えてしまう物だ。
「では、今度はこちらの番ですね。」
 すると、サーシェルは部下に指示を出し、地図を持ってこさせた。
「これが、調査で判明した坑道の地図です。」
 その地図には細かく坑道の内容が描かれていた。
 私が潜入した時にも思ったが、やはりとてつもない規模だ。
 そして、幅や高さも記されていた。
 これならば車も通れるだろう。
 そして、一部途切れている箇所があった。
 クレアさんが崩落を起こした箇所だ。
 この図で見ると、かなりの規模なのでこの道は諦めたのかも知れない。
「各坑道の出入り口には拠点が作られていました。坑道内にも所々に休憩地点のような簡易的な拠点が多数ありましたね。他にもレールが敷かれていて、人員の迅速な展開が可能となっていました。」
「よくそこまで調べられましたね。」
 前に私が潜り込んだ時、かなり苦労した記憶がある。
 至る所に作業している者達が居たので細心の注意を払っていた。
「はい。我々が調査した際は人が余り居らず、じっくりと調査出来ました。」
 成る程、私が潜り込んだ時は建設途中だったから人が多かったというだけということか。
 それならば納得だ。
「さて、シャルさん。そちらの要件は我々の助力だとお見受けしました。提供出来るものなら何でも協力させて下さい。トマスもそのままそちらの支援に当てます。」
 どうやら、こちらの訪れた目的はお見通しのようだ。
 私の心情を把握してトマスが手を回していたのだろうか。
 そう考えればサーシェルが玄関で待ち構えていたのも頷ける。
「ありがとうございます。では……。」
 これでここでの依頼も難なく達成出来るだろう。
 トマスとサーシェルには感謝しよう。

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