出張!異世界研究所!〜異世界犯罪解決します〜

中村幸男

調査開始 3

「ここ……か。」
 地図を頼りに異世界人発祥の地へと訪れた。
 ちょっとした公園のようになっており、大きな階段を登った先に石碑があった。
 石碑には大きく異世界人発祥の地と書かれており、その横には石像が置かれていた。
 そして、その石像はとても見覚えのあるものだった。
「これは……。」
「銃……よね。」
 そう、その石碑は銃を模して作られた物だった。
 石碑の裏を見てみると小さな字で事細かく何かが書かれていた。
 簡単な内容はこうだ。
 昔、この王国が出来る切っ掛けとなった大乱でエルドニアの王子がこの地に訪れた際、同盟国だったアナテルの国王が転生者だったらしく、異世界の技術を駆使し、明らかに劣勢だった自陣営を勝利に導いたとのことだ。
 他にも色々と書かれていたが多くの文字が霞んでおり、短時間で読み取れた部分から推測される内容はそれだけだった。
 恐らく、このアナテルの歴史やその他の異世界人の歴史だとかも書かれていたのだろうが、残念ながら読み取れなかった。
 もう少し時間をかければ分かりそうなものだが。
「じゃあこの石像から察するに最初に来た異世界の技術って銃って事?」
「……そういう事らしいな。」
 シャルの言う通り、劣勢の状況で真っ先に欲しかった物が戦況を変えうる兵器だったという事か。
 やはり、技術の革新というのは戦争から始まるらしい。
「でも、この銃、知ってるのとちょっと違うわね。」
「ああ。恐らく簡単に量産が出来る簡易的な物を作ったんだろう。本にも銃には様々な種類があるって書かれてた。」 
 自分は懐からサーシェルから貰ったリボルバー式の銃を取り出す。
 じつはあの時、弾も含めて貰ったのだ。
 まぁ、弾は無くなったら要請してくれれば送ってくれるらしいが。
 今回の調査分は足りるだろう。
 話を戻すと火薬に火の付いた縄を直接当てる事で火薬を発火させ、弾を撃つというのが最初らしい。
 恐らく、この石像の銃はそれなのだろう。
 引き金の近くに縄のような物がある。
「じゃ、そろそろ行かない?」
「え?いやもうちょっと調べたいんだけど……。」
 すると、シャルが嫌そうな顔をする。
 まぁ、興味の無い人からすればつまらないのだろう。
 自分は楽しいのだが。
「……まぁ、待つわ。」
「あ、あぁ。ごめん。直ぐ済ますから。」
 シャルが苛立たないうちに早く終わらせるとしよう。


 その後、調べてみるとあの石碑があった場所は昔、アナテルに存在したアナテル国の王城の倉庫があった場所らしい。
 昔はかなり大きい城があったらしく、その名残はもうほとんど無いが、あの石碑は倉庫跡も兼ねての物だったらしい。
 地図を見てみると、昔の城の〇〇跡地があちこちにあるらしい。
 それをつなぎ合わせるとかなりの大きさだ。
 アナテルという国の財力の大きさがよく分かる。
 そして、その城の本丸跡にアナテル自治区を管理する建物があるらしい。
 そこだけは堀や城壁が残っており、小規模だが、有事の際はそこに立てこもれそうだ。
 まぁ、地図上での判断だから実際に状況を見てみるまでは分からないが。
 そうこうしていると後ろから視線を感じた。
 横目に見てみるとかなり不機嫌そうにしている。
 そろそろやめるとしよう。
 正直、まだ調べ足りないのだが。
「すまんなシャル。待たせた。」
「……別に。」
 何処かで何かを奢ろう。
 それで許してもらえるとは思えないが。
「じゃ、どこか行きたいところあるか?」
「……そっちこそ、まだ調べたいところあるんじゃない?」
 どうやらお見通しのようだな。
 シャルには敵わないな。
「いや、別に後でも構わないし、シャルが行きたい所に行こう。」
「じゃ、お昼にしましょ。」
 そう言えばそろそろそれくらいの時間だ。
「そうだな。勿論奢るぞ?」
「本当!?……じゃなかった。当たり前でしょ。」
 いや、普通に聞こえているのだが。
 まぁ、良いか。
 結局は奢るのだし。
 だが、この時の自分は忘れていたのだ。
 シャルが大食いだということを……。
 

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品