王国再興物語〜無理ゲーオタクの異世界太平記〜

中村幸男

束の間の休日  帝都編 その2

 セラの後をつけていくと、セラは先程気にしていた路地裏の方へと入っていった。
 俺は気づかれないようにある程度距離を取りながらついていく。
 もう既に日は落ちている。
 見失わないように気を付けながら進んでいく。
 が、案の定見失ってしまった。
「アルフレッド様。」
「はい!すいません!」
 後ろから声をかけられ驚く。
 しかし落ち着いて声を聞いてみるとセラではなくセインであった。
「何故謝るのですか?」
「俺の善意がそうしろと叫んでいる。」
 セインは何を言っているのかわからないというような顔をしている。
「で、どうした。」
「はい。明日の夕方、盗賊ギルドとの交渉の場を設けました。どうしても直接話をしたいとのことで。」
「わかった。」
 しかし流石はセインである。
 こんな短時間で交渉の場を設けるとは。
 3日位はかかると思ってたんだがな。
 ……別にセラともうちょっと二人きりが良かったなんて思って無いよ?
「で、こんなところで何をしていたのですか?」
「え、えーと?」
 誤魔化そうとも思ったがここは正直に言った方がいい気がしたので正直にすべて話した。
「つまりはただのストーカーですね?」
「はい。すいません。」
 わかってはいるんだけどね。
 どうしても気になってしまう。
「セラ殿は先程そちらの建物に入っていきましたよ。」
「そちらの建物?」
 指を刺された方を見るとボロボロの教会のような建物があった。
「あれは昔の教会を改修した孤児院のようですね。」
「何だか中が騒がしいな。」
 孤児院の中から騒ぎ声が聞こえる。
「行ってみよう。」
「はい。」


「ですから!あと少しお待ち下さい!」
「前もそう言ってたよな?」
 中を覗くと孤児院の代表のような女と屈強な男達が何やら言い争っている。
 セラの姿も見える。
 セラは孤児院側についているようだ。
「あと少し待ってやればいいでしょう?」
「部外者は黙ってろ!こいつらはな、前もそう言って払わなかったんだよ!」
 どうやら地上げ屋のような存在らしい。
 この場所をなくしたいようだ。
「それに規定の額の3倍もの値段ではありませんか!期日もまだ数日ありますし!お願いです!」
「うるせぇな!戦争で色々と変わったんだよ!」
 セラの様子を見ると剣に手をかけており、今にも斬りかかりそうな雰囲気である。
「ならば。」
 その場に割って入る。
「これでどうだろうか?」
 懐から今持っているお金を全て取り出す。
 それなりの額はある。
 取り立て屋の男は受け取り、中身をみる。
「よし、まぁいいだろう。」
 俺が渡した金を懐へしまう。
「いいか!来月また取りに来るからな!」
 男達はそのままその場をあとにした。
 セラに話をしようとセラの方を見ると顔を背けている。
「セラ。」
「は、はい。」
 少し萎縮しているようだ。
「詳しく聞かせてもらうぞ。」
「か、畏まりました。」
 そのままその場を後にしようとした。
「セラ……なの?」
 先程の孤児院の代表と思しき女性が声を出す。
「う、うん。」
 セラはそれに対し肯定した。
 すると女性はセラに飛びつき抱きついた。
「久しぶりだね!会えて嬉しいよ!」
「う、うん。私もだよ。イリス。」
 男二人は置いてかれている。
 どうやらセラの方は気づいていたようだ。
 セインの方を見ると向こうもこちらを見ており、目があってしまう。
「どういうこと?」
「分かりません。」

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