王国再興物語〜無理ゲーオタクの異世界太平記〜

中村幸男

束の間の休み

「セイン。お前に言っておかなければならない事があるんだ。」
「私の父、セイルズのことですね?」
 流石はセイン。
 10年近く共にいただけのことはある。
「あぁ、そうだ。」
「もう既に処刑されているのでしょう?」
 まさか見透かされているとは思ってはいなかった。
「……気づいてたのか?」
「何年一緒にいると思ってるんですか?若の考えることくらい、お見通しですよ。」
 もはやお手上げである。
 一体どこまで見透かされているのか。
「あぁ、後々面倒ごとにならないように今のうちにいっておこうと思ってな。」
「まぁ、特に心配する必要もないと思いますが。私も若と同じ立場ならそうしていました。」
 やはりセインが味方で良かった。
「では、この後どうするかですね。」
 目の前には堀に囲まれた、もはや城のような宝物庫がある。
 帝都にあるだけあってもう既に日は落ちているのに街はとても明るく宝物庫の全貌がよく見える。
「これだけ明るいと闇夜に紛れるのは少し厳しいですね。」
 セラが意見をいう。
「何か別の方法があればよいのですが。」
「街で噂になっている盗賊ギルドとやらを頼ってみるのはいかがでしょうか?まだ何処にいるのかは分かりませんが私の手勢で調べればすぐでしょう。」
「盗賊ギルド?」
 そのようなものが帝国に、しかも帝都に存在していたというのが驚きである。
「そのようなものに頼るまでもありません!それに王家の人間がそのような卑劣な者達に頼るなどあってはなりません!」
 珍しくセラが感情をあらわにする。
 過去に何かあったのだろうか。
「しかし、今はそのようなことを言っている場合では無いでしょう。利用できるものは利用しなければ。」
 セインの言うことにも一理あると思う。
 が、セラの言うことも尤もだ。
 しかし……。
「セラ、その王家の国は今や無いに等しいんだ。」
「っ……申し訳ありません。」
「私の調べによりますとその盗賊ギルドなるものは傭兵のようなもので、雇われれば殺しや護衛など何でもこなすとのことです。」
 流石はセイン、よく調べている。
「しかし、最近は活動を大幅に縮小しているようでして、足取りがつかめずにいます。本腰を入れる許可を下されば、少し若の元を離れることになりますが、必ずや協力を取り付けてみせましょう。」
 なるほど。
 つまり許可を出せば俺はセラと二人きりということだ。
 因みに連れてきた手勢は全て帝都郊外の森の中に野営させている。
「よし。許可しよう。」
「ありがとうございます。では、数日お時間を頂きますので、それまではゆっくり休んでいてください。」
 そう言うとセインは路地裏へと消えていった。
 今はセラと二人きりである。
「取り敢えず、長旅の疲れを癒やすとしよう。近くの宿にでも行こうか。」
「はい!」
 セラはそういうことには疎いのか、気にしていないようである。
 この好機に何かしようとは思っていないが、数日はデート気分でも味わうとしよう。

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