封印から目覚めると鬼娘の私は陰陽師のお嫁になっていました

黒月白華

九条頼子はやばかった

俺は芦谷光邦。通称ミッキー。御先祖様は陰陽師芦谷堂満。

しかし俺は両親に借金だけ残して逃げられ、妹とは引き離され親戚の1人が不動産屋をしていて誰も入らないようなオンボロアパートに放り込まれた。

高校にも行かず、中学を出させていただいたら、すぐ様働き出してお金を稼いでは肩代わりした親戚に返してを繰り返し、僅かな生活をしていた。妹には手紙を書いて月に一度くらいしか会えない。というか交通費がない。

おまけに鬼退治ということもあり、俺は親戚からちょっと嫌われている。芦谷家は確かに異国の血が混じった家系だが平安時代に西洋人が日本に来ることなんてない。あの時代では唐とかから来る異人と結ばれたのか。だから母方の芦谷家の家系が代々力を受け継いできた。

俺が金髪なのは母が昔医者になる為イギリス留学で父と出会ったからだ。その頃は普通に金は少しだけどあったらしいが…。

父親も医者になり、日本で婿入りして開業したが、父親は実はギャンブラーだった。めちゃくちゃ日本のパチンコや競馬に興味を持ってしまい、医者で稼いだ金を注ぎ込み…ついに借金して親戚に押し付け逃げた…。丁度中学3年の頃だ。

肩身の狭い思いもした。妹だけはなんとか預けているけど妹もどんな目にあっているか…。
イドミとはその後会ったわけだけど。

それでもまさか高校に行けるとは思ってなかったし、ライバルである土御神の子孫に金を出して貰っていることを言いにくく、あの土倉にいた民代とか言う人が金を工面してくれたと言ったら親戚も気前よく高校に入ることを許可してくれた。月末に10万入っても親戚にほぼ渡すからあまり贅沢出来ないのはこれまでどうりだが…。

「はあ…」
俺は持ってきた水筒の中身…ただの水と弁当箱のパンの耳をイドミと隠れるように人気のない旧校舎トイレ裏でこそこそモソモソ食っていた。転校生がこんなとこでパンの耳を齧っているなんて泣けてくるしイドミももう慣れてパンの耳齧ってる!!うううう!!

「こんな所でこそこそ食べなくちゃならないなんて…」

「仕方ありま千円…。ビンボーです辛子明太子」

「やめろぉ…辛子明太子が頭に浮かぶから!!」

「イドミはミッキー様と一緒ならパンの耳でもオッケー牧場!」
と言う。隣にぴったり座りながら大きな胸にボロボロとパンクズをこぼしているイドミ。…くっ!俺は惑わされないぞ!!



その頃屋上では…
「あ…よ、頼さんいたの!?」
と優平くんはギクリとした。
こ、この子が…優平くんのこと好きな子なんだ!!と私はキッと睨む。

九条頼子さんは本当に男の子のようだった。髪は短く短髪で、顔はイケメンだし、一見すると男に見える美しさを持つが胸は少しある。しかしスカートは履いてなくて男子のズボンだ。何故!?

そして凄い速さで私に近づいてガシリと顔を近寄せた。

「なんて美しい!食べてしまいたいくらいだ!!君…!君が優平の…お嫁さんの鬼だね?想像以上に美しい!優平がメロメロのムラムラの変態になるのも判る」
すると優平くんは私と彼女を引き剥がした。

「や、やめてよ!頼さん!!ぼ、僕のお嫁さんに手を出さないでよ!!き、君には好きな男の人がいるんでしょ?」

「ああ、そうさ、いるさ!!ボクには…陸上部のエース片伯部恭太って言うまるで女の子みたいに美しい美少女みたいな男の子の先輩がいるんだよ?君も相当美味しそうだけどね!

だからボクと優平はただの腐れ縁さ!ほんっとうに何にもありゃしないから安心おし?」
とウインクされた!!
それを払うように優平くはしっしっと追い払った。

「鈴さん、言ったでしょ!?頼さんは変わってて逆に危険だよ!女子だけどゆっ百合なとこあるし!!近づいちゃダメだよ!!」
と私を守った。
ええ?私の勘違いだった。本当にこの頼子さんには好きな人がいるらしい。美少女っぽい顔の陸上部のエースの先輩って…見てみたい。

「そんなわけでよろしくね、鈴さん!君のことは優平から腐るほど惚気話を聞かされているんだ。

こいつとは幼馴染みたいなものだよ。小さい頃から君の話ばかりでね、こいつ男の子の友達がいなくて可哀想なヤツだったからね。まぁ表面的にはいたのかもしれないけど」
と頼子さんは言う。
しかしやはり私はジロジロと見られてしまう。

「みっ!見ないでよ!頼さん!!」
と庇われる。

「ああ、ごめんよ優平…。あんまり鈴さんが可愛いから今どんな風に乱れるか想像を…」

「や、やめてよ!!のっ呪うよっ!?」
と言うと

「ふっ、冗談だよ。ボクは女の子が好きだけど、残念ながらボク自身も女として生まれた以上は男と結ばれないといけないことに悩んでいるんだからね。

しかしそこに!片伯部先輩を県大会で見て、あれが!だだだ…男子なのか!?と最初疑ってね!?先輩が着替えてる時にちゃっかり部室に侵入して壁ドンして先輩の唇を塞ぎつつ、その下のモノを確認させて頂いたよ。ちゃんと男の子でほっとしてボクは萌えた!!ボクの運命の人だ!先輩は!!」
と恍惚になり手を天に掲げて

「神様!ありがとうございます!!」
と言っている。…な、何かヤバイ。ヤバイ子がいる。充分変態に見える!!優平くんが剣を持った時と似ている!!
そして最近覚えたてのことわざを思い出した!

【類は友を呼ぶ】
こっ、これだあああ!!
優平くんは私を後ろに庇い

「絶対鈴さんに手を触れないで!!」
と守る。確かにこの人は私のこともギラギラした目で見ているし。

「そう言えば、もう1組転校生…、芦谷堂満の子孫も来てるって?早く見たいなぁ?どんな奴なんだい?まぁ子孫の男には興味ないが使役している鬼は女の子なんだろ?」
と言うと優平くんはあっさりイドミさんを売った!!

「うん、イドミさんだね?たぶん、頼さんの好みにも合うんじゃないかな?ミッキーくんが貧乏だから彼女もあまりいい暮らしじゃないけど、胸は大きいし可愛いと思うよ?鈴さんには負けるけど」

「なっ、何だと!?どのくらいデカイんだ!?」
と興味深々である!!ひっ!逃げて!イドミさん!!
すると優平くんはポケットからスマホを取り出して

【位置】
と印を切るとそこにパンの耳を齧る2人がいた。

「ほおおおお!案外近くにいるじゃないか!旧校舎のこんな所で隠れるように食べてる!兎か!!それに乳デカイ!!無表情で可愛いらしい!!」
と興奮してくる頼子さん。

「パンの耳って…。な、なんかミッキーくんがちょっと可哀想になってきた…」
流石の優平くんも貧乏なミッキーくんを同情した。

「じゃあ!ボクはちょっと挨拶してくるよ!!丁度ボク女生徒(愛人)から貢がれて余ってる昼食もあるしね!」
とバタンと屋上から出て行った。
しばらくしてスマホ画面に頼子さんがミッキーくん達の前に現れたのが映った。
あああ…逃げてえ、イドミさん!


俺はいきなり目の前に現れた変な男みたいな女を見た。なんだこいつ?一応胸はあるし女だよな?
しかし、パンの耳を齧ってるところ見られてしまい相当恥ずかしい!どっどうしよう!言い訳を考えなくては!と思ってると

「やあ!ボクは九条頼子さ!君が芦谷堂満の子孫と使役鬼のイドミちゃんだね?

話は優平から聞いているよ!ボクは土御神聡明と仲の良かった藤原道良の子孫の1人だよ!藤原家は大貴族で当時の権力者だったから、その後はかなり分散してしまってバラバラになり、今は一般人同様だけどね!!うちは家系図を残してきたから何とか分かってるんだ!」
と言う。聡明の親友とも言われた大貴族藤原家の子孫か。

「ボクは鬼門からくる鬼とか幽霊は視えないけど気配くらいは感じるんだ。

霊感が少しだけあるくらいの普通のヤツさ。ま、優平に貰った眼鏡をかけると視えるけどね!」
と術のかかった眼鏡を出した。

「はっ!だからなんだ!?何をしに来た?俺を馬鹿にしに来たのか?藤原の子孫!!」

「いやいや、君には特に用はない!イドミちゃんに会いに来た!ボクには好きな先輩がいるけど、女の子も好きだから興味あってね?」

「は?」
なんだこいつ!?お前も女の子じゃねーか!?
と思ってるといきなりイドミに迫りムチュっとキスした!!

「ええええええ!?」
九条は離れるとボーッとしているイドミに

「ふふっ柔らかい!胸はどうだろうか?」
と揉みはじめ、

「おい!何してんだ!!バカか!気持ち悪い女だな!!」

「ふっ!叫ぶな!これをやるからもう少し揉ませろ!」
と袋を投げる。中を見るとお弁当箱がギッシリあった。こ、これは!!

「ふふっお腹が空いているだろう?それ、ボクのファンの子達からだよ。食べきれずにね、捨てるのもどうかと思ってね?それだけあれば夕飯も2人分はあるだろう?」
と言われてゴクリと唾が鳴る。
し、しかし…イドミは何も言わず、こちらを見たまま揉まれてる。

俺は弁当を突き返しイドミを引っ張った。

「おや、いらないのかい?」

「ふざけんなこの男女!好きなヤツがいるくせにイドミにセクハラすんな!!」

「あれえ?君もしかしてイドミちゃんが好きなの?残念だねえ……まぁいいか。挨拶に来ただけなんだよ」

「すっ、好きとかじゃない!イドミは俺の使役鬼だ!!変なことすんなってことだ!」

「ふっ、そう言うことにしといてあげるよ!!じゃあね!!」
と九条は去った。………弁当を逃してしまった。ぐうううと腹が鳴る。

「何故…お弁当を断るのですか?」

「あの男女に貰った弁当なんかいらんし、作ったヤツも俺達に食われて可哀想だろ!変な恨みを買われるのもごめんだ!呪い専門の俺が逆に呪われるなんかもう懲り懲りだ!」
鼠になった時を思い出してしまった。
最悪だわ。ほんと。まぁ、一般人のおまじない程度の呪いなんか呪い返しですぐブロックできるけどな!

「私がセクハラされてヤキモチを妬いたのかと」

「はあ?んなわけあるかよ!!」
と赤くなるとイドミは俺の手を持ち胸に当てた。

「………何をする…」
極めて冷静に言う。くっ…この鬼め!また俺を色仕掛けで誘惑しようと!!隙あればいつもいつも!!

「やっぱり…ミッキー様に触られた方がいい」
と語尾のダジャレもつけず見つめられた。ち、ちちちが!このドキドキするやつは鬼の術にかかってるだけだから!!

「や、やめろ!!バカめ!!離せって!」

「光邦様…」
と本名で呼ばれかなり近づいてきたイドミは俺に口付た。と、昼の終わりの予鈴が鳴る。
あっ…じ、授業!!
と引き剥がそうとするが中々終わらない。
くっ!!転校早々さぼらす気か!?

九条にキスされたイドミが脳裏によぎる。女のくせに馬鹿にしてる目で俺を笑う九条に腹が立ち俺は無意識に上書きするようにイドミにキスした。
これは自分のものを人に触られたからだ。けして変な意味じゃないんだと俺は思うことにした。

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