【最強の凸凹魔法士バディ】裏組織魔法士ギルドの渡り鴉~絶対領域と瞬擊の剣姫~

夕姫

30. もしも

30. もしも



 朝の光が差しこむ。今日も一日が始まるのだ。昨日は結局、あのまま寝てしまったらしい。オレはベッドから降りて、カーテンを開ける。

 すると眩しい朝日が部屋を照らし出す。

 さぁ、今日も一日頑張ろう!そう思って伸びをしていると……トントンとドアを叩く音が聞こえドアが開く。

「おはようお兄ちゃん朝だよ!」

「おう。おはようエミリー」

「あれ?起きてるの珍しいね」

「たまには起きることもあるぞ?」

「ふふっ。そうだね。それじゃ朝ご飯作ったから着替えたら来てね」

 エミリーはそれだけ言うと下の階に降りていく。今日も可愛い。やっぱりエミリーの顔を見ると癒されるなぁ。よし!着替えるか!

 そして着替えてリビングに降りるとそこには朝食が用意されている。メニューはパンケーキだ。美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。

「今日の朝ごはんはパンケーキなんだ……ん?」

 オレの視界に黄緑のやつが見える。見たことあるぞ。あーこいつは昨日、オレに罪を擦り付けたやつだ。

「……なんでお前がここにいるんだよコレット?」

「おはようございますアデル先輩!いえ、あたしも『レイブン』の仲間入りを果たしたので、妹さんにも挨拶しておかないとと思いまして!」

「いらん。オレの癒しの時間を奪うな。ほら帰った帰った」

「えぇ!?そんな冷たいこと言わないでくださいよぉ〜。せっかく来たんですから少しくらいいいじゃないですかぁ〜」

「ダメだ帰れ」

「むぅ……」

 頬を膨らませながら上目遣いをするコレット。だが、騙されることはない。オレは絶対に許さない。しかし、エミリーの前でコイツを追い返すわけにもいかない。どうしたものか……。

「いいじゃんお兄ちゃん。コレットさんがせっかく挨拶に来てくれたんだし。」

 エミリーは笑顔で言う。その言葉を聞いて、コレットの表情がパァっと明るくなる。

「ほら!妹のエミリーさんもこう言ってますし!いいですよね?」

「はぁ……仕方ないか。わかった。ただし静かにしろよ」

 エミリーに言われちゃ許すしかない。それにしてもこの二人いつの間に仲良くなったんだ?まあいいか。とりあえず食べよう。うん。美味いなこれ。

 そのまま朝ご飯を食べて学院に行くことにする。見送ってくれたエミリーはやっぱり可愛かった。

「あー今日も授業嫌ですね?」

「てかお前も一緒にいくのかよ?変な噂とかされたら嫌なんだが?」

「え?それはこっちのセリフですよアデル先輩。アデル先輩って別に格好良くないし。」

「お前……殴るぞ?」

 なら一緒に登校するんじゃねぇよ。オレはそう思いながらも教室まで歩いて行く。ちなみにオレの隣にいるのはコレットだ。コレットと歩いているだけで視線を感じる。こいつ編入してきてから意外に人気あるから、男子からの嫉妬の目線が凄い。

「おい!なんであの男と一緒にいるんだよ!羨ましいぞ!」

「ちくしょう!オレだって話しかけたいけど近寄れないんだよ!」

 などと声が聞こえる。本当に地獄だ。

「うへぇ。相変わらずすごい人気ですねアデル先輩?」

「どこをどう聞いたらオレなんだよ!お前だろ!」

「えーでも私はアデル先輩のことなんて好きじゃないですから安心してくださいよ」

「なら離れろ。オレもお前なんか好きじゃない」

 こんな会話をしながら歩く。コレットと話していると周りの奴らが睨んでくる。もう勘弁してくれ。そう思っているうちに教室に着く。

「あっおはようございますアリスティア先輩!」

「……。」

「あれ?アリスティア先輩?」

 アリスは無言で睨み付けるような笑顔でコレットを見ている。怖い。話しかけるなオーラが出ている。

「おはようコレットさん。ところであなた誰だったかしら?」

「えっ?ひどいです!忘れたんですか!?」

「ごめんなさい。私、記憶力が悪いので。だから人の名前を覚えるのが苦手なので。で、名前は何でしたか?」

「コ、コレットです……」

「コレットさんね。覚えておくわ。それじゃまた後でね。次馴れ馴れしく声かけてきたら三枚におろしますから。」

 それだけ言うと、アリスは席について本を読み始める。こえぇ。コレットを見ると涙目になっている。ドンマイ。

「アデル先輩!私の扱い酷くないですか!?」

「自業自得だろ?学院では干渉するなよ」

「そんなぁ〜」

 コレットが泣きそうな顔で訴えてくるが無視して自分の席につく。さぁ、今日も一日頑張ろう! 昼休みになり、オレは屋上で昼食を食べる。コレットには関わるつもりは無いので、オレ一人で食べることにしている。

「いただきます。」

 いつも通りエミリーが作ってくれたサンドイッチを頬張りながら、オレは考える。最近悪魔や悪魔憑きが増えてきている気がするが、大丈夫だろうか?『ドール』の情報もあれ以来入ってこない。

「どうしたもんかな……」

 そして、トマトのサンドイッチ以外を食べそこに寝転がる。

「セリアのやつ……今日は来ないのか……あほらし。なんでオレがあいつのためにトマトサンド残しておかなきゃいけないんだよ」

 オレが独り言を呟いていると、ふいに扉が開く音が聞こえ、誰かが来たことがわかる。

「あっいたいたアデル君!」

 その声はセリアだ。なぜか少しほっとしたような気がする。オレは起き上がって、ドアの方を見るとそこには、制服姿のセリアがいた。

「また来たのかよ」

「あれ?トマトサンド残ってるじゃん。もしかして私のために残してくれたの?」

「たまたまだよ。勘違いすんな」

「そんなこと言って、素直じゃないんだから!もらってもいい?」

「ダメって言ってもお前は食べるだろ?」

 そう言いながらオレは再び座る。すると、隣にセリアは座り込んできて、サンドイッチを頬張った。

「うん。やっぱり美味しいね。エミリーちゃんのサンドイッチは!」

「当たり前だろ」

 それからしばらく沈黙が続く。お互い何も喋らない。ただひたすら時間が過ぎていくだけだ。

「ねぇアデル君?」

「なんだ?」

「あの……その……」

 何かを言いかけて黙り込む。それを何度も繰り返す。一体何を考えているのだろう。

「なんだよ。はっきり言えよ」

「うん。あの……アデル君はさ……もし私がこの学院を辞めたらどう思う?」

 そうセリアは真剣な顔でオレに言うのだった。その顔を見てオレは言葉がすぐには出なかった。

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