【最強の凸凹魔法士バディ】裏組織魔法士ギルドの渡り鴉~絶対領域と瞬擊の剣姫~

夕姫

28. 魂喰い《ソウルテイカー》

28. 魂喰い《ソウルテイカー》



 時間は深夜。オレはクイーンの情報のことをアリスにだけ話した。単独でクイーンに接触したのがバレるのも頂けないだろうし、『レイブン』という組織のメンツもある。

 ちなみにコレットには連絡はしていない。あいつはまだ仮の状態だし、今度の相手は悪魔。それに自分を利用していた相手なら尚更危ないしな。

「お待たせしました」

「おう」

 アリスが待ち合わせ場所にやってきたので行動を開始することにする。場所は騎士団本部の前。時刻は夜なので人通りは少ない。

「そろそろ時間のはずだ。あいつが出てくる」

 オレはコレットから詳しく話を聞いて、その悪魔憑き討伐の資料を読み直し、1人の男に目をつけた。

「デルト=アマルフィ。こいつは毎回現場の処理をしている。おそらくこいつが『魂喰い』だ」

「冴えない感じの顔ですね?こんな人が……」

 オレが持っていた資料を覗き込むアリス。めちゃくちゃ顔が近いし、なんか甘い匂いがするんですけど!

「あー……まあな」

「アデル=バーライト。緊張しているんですか?」

「は?そんなわけ……」

「さっきから鼓動の音が聞こえてきますが?というかアデル=バーライト近すぎです。離れてください」

「えっ!?すまん!」

 無意識のうちに距離を詰めてしまっていたらしい。オレは自分の頬を思いっきり叩くと、気合を入れ直す。するといきなりオレの通信魔法具が光だす。画面を見ると『コレット=フルール』と出ている。

「出たほうが良いのでは?」

「……もしもし」

 《あっアデル先輩?あたしです!》

「どうしたんだ?もう寝ようと思ったんだが?」

 《え~?少しくらい話相手になってくださいよ~!》

 なんで今なんだよ……空気読めないやつだな。でもすぐに通信を切るのもなんか怪しまれるし……

 《アデル先輩?》

「なんだ?」

 《あのあたしってアリスティア先輩に嫌われてますかね……全然話してくれないし、通信魔法具の登録しようとしたら拒否されたし、なんか何考えてるか分からないし、美人だけど性格悪そうって言うか……無表情お化けって言うか……》

 やめとけ。聞こえてるぞ無表情お化けに……。というかアリスも拒絶しすぎだぞ。とにかくこれ以上はヤバそうなのでオレは通信を切ることにする。

「コレット!すごく眠いんだわオレ!また明日な!」

 《え!?なんか元気そうですけど?というかなんか隠してま……》

 通信を切った。オレは錆び付いた機械のようにアリスの方へゆっくり振り向く。

「ふむ。性格悪い無表情お化けですか……なかなかユーモアです。お礼に立派なお墓をたてますか。」

 めちゃくちゃキレてるよ……。さよならコレット。お前のことは忘れんぞ。そんなことをしていると目的の人物が出てくる。

「出てきたぞ」

「どこに向かうのでしょうか。悪魔憑きの居場所ですかね。」

「さあな。とりあえず行くぞアリス」

「守り専門のあなたが前に出ないでください。」

 そう言いながらオレたちは尾行を開始した。しばらく歩くと男が向かった先は『教会』だった。

「こんな時間に教会?」

「……ここはしばらく使われていないはずですが」

 教会の扉を開けるとそこには誰もいなかった。薄暗い礼拝堂の中を見渡すが特に変わった様子はない。

「おかしいな……。」

「アデル=バーライト……捕まりました」

「え?」

 そのアリスの言葉と同時に黒いま影のようなものが現れて、オレの腕を掴み地面に引きずり込もうとする。アリスがその影を刀で切り裂き、腕を掴んでいたやつの力が弱まったので蹴り飛ばして距離を取る。

「あぶねぇ……」

「そのまま引きずり込まれたら面白かったですけどね。」

 どこがだよ……めっちゃ怖ぇよ。でも助かったわ。するとその影は集まり始め、形を作っていく。

「……まさか本当に釣れるとはなぁ」

 そこに現れたのは真っ黒な肌をした長身の男だった。見た目は人間だが、纏っているオーラは明らかに人間のものではない。

「お前が『魂喰い』だな?」

「そうだと言ったらどうするんだい?」

「どうするもこうするもありません。討伐するだけです」

「気が強いねお嬢さん。人間の女性の魂は更に格別だからね?たっぷり味わせてもらうとするよ」

 そう言うと男は笑い始めた。

「下品ですね。気持ち悪いですよ」

「なんと言われようと構わないよ。さて、それじゃあいただきますか」

 男が手を広げると無数の影が出現し、こちらに向かってくる。オレはそれを拳で粉砕していくが数が多すぎる。アリスは淡々と刀で切り伏せていく。しかしその影は何度倒してもまた形を形成し始める。

「その影はただの魔力だよ?直近で得た悪魔の魔力。それを実体化させているだけだ。この私を叩かないと意味がないんだよ?」

 そう言って魂喰いにアリスが斬りかかるが簡単に避けられてしまう。

「おっと危ないなぁ。でもそんなんじゃ当たらないよ」

「……面倒ですね」

 確かにこの数は厄介だ。一体ずつ潰していたらキリがないだろうし……。

「アデル=バーライト。あなたは下がっていてください」

「は?何を……」

「邪魔です」

 そう言うとアリスはオレを突き飛ばした。すると影が一斉に襲いかかってくる。それをアリスは切り刻んでいく。しかし影が再生する方が早い。

 オレはカタリナが作ってくれた『聖水』を影に向かって投げる。すると白い煙と共に消え去る。

「ほぅ?『聖水』まで持ってるのか。ますますいいじゃないか!また悪魔を喰わなくてはね?」

 魂喰いは魔力を使い、また影をつくりだす。このままだとジリ貧だろう。残りの『聖水』は2本。オレとアリスは魂喰いの影の能力に苦戦をしいられていた。

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