【最強の凸凹魔法士バディ】裏組織魔法士ギルドの渡り鴉~絶対領域と瞬擊の剣姫~

夕姫

27. 少しの変化 ~アリスティア視点~

27. 少しの変化 ~アリスティア視点~



 王立魔法学院。ここでは将来、騎士団や宮廷魔法士になるための鍛錬が日々行われている。

 この学院には魔法の才能がある者しか入ることができないが、才能がない者は一生入れないというわけではない。

 入学試験に受かれば誰でも入学できる。そして、入学してしまえばその実力次第で騎士にも宮廷魔法士にもなることができるのだ。

 もちろん、実力がなければ落ちこぼれとして蔑まれることになるのだが……。



「できました!お願いします!アリスティア先輩!」

「オレも終わったぞ。確認してくれ」

 コレット=フルールが『レイブン』に仮で加入してから1週間がたつ。今何をしているかと言うと、いつもの空き教室でなぜか私がテスト勉強を教えることになった。なぜ公爵令嬢の私がこんなことを……

「……コレット=フルール。あなたはこの学院をやめたほうがいいかと。どうやったらこんな答えになるのですか?理解できません。やり直しです」

「そっそんなぁ~!ひどいですぅ!少し休みましょうよ!」

「は?」

「うわぁん!ごめんなさいぃ!!」

「あまりコレットを威圧するなよ。騒がしくなるだろ。ほらオレの確認してくれよ。完璧だからさ」

「完璧?……ふざけているのですか?なんですかこれは?どうしてこうなるんですか。やり直しですね」

「おっおい!マジかよ……」

「……まったく、嘆かわしいですね。なぜあなた達はここまでできないのですか?呆れますね?」

 そう言って私はため息をつく。私の目の前にいる2人は顔を見合わせ苦笑いを浮かべる。それからも過去問テストをやっていく。

「あーあ。やっぱりダメだったか」

「うぅ。また不合格ですぅ」

 2人が私に見せてきた答案用紙には赤いバツ印が大量についている。赤点ギリギリラインの点数を取るのがやっと。それも合格ラインまであと一歩のところで届かないのだ。この2人にとってはこれが限界なのか。私はさらに深いため息をつく。

「これで何度目ですか?私の時間はタダじゃありません。真面目にやらないなら帰ります」

「真面目にやってんだろ!」

「そうですそうです」

「どこが真面目なのですか?あなた達には今さら魔法の基礎から教えなければなりませんか?」

 私はそう言うと鞄を持って立ち上がる。すると、後ろから2人に呼び止められる。

「まっ待ってくれよ!頼むって!オレたち相棒だろ?」

「そうですよぉ。あたしも可愛い後輩じゃないですか!」

「……」

 私は何も言わずに立ち止まる。正直面倒なだけ。でも2人の言葉が私を放っておけなくさせる。だから馴れ合いは嫌いなんです。

「おいアリス。もう一度だけチャンスをくれ。今度は絶対合格してやるからさ!」

「お願いします!アリスティア先輩!」

「……わかりました。次の過去問テストで合格点にいかなかったら殺しますから。覚悟していてください」

「えぇ!?殺す気満々じゃん!!?」

「うわぁん!鬼教官ですぅ!!!」

「うるさいです黙りなさい」

 こうしてまたテスト勉強を始める。本当に迷惑極まりない困った人たち。しかし、どこか心地よく感じてしまう自分もいることに戸惑いを覚える。

「ふっ……」

「ん?何笑ってんだよアリス?」

「はい?笑ってませんが?」

「笑ってましたよアリスティア先輩!」

「笑っていないと言ってますが。なんですか?文句があるなら微塵切りにしますよ?」

「「すいません」」

 無意識のうちに笑って……私は少しずつ変わってきているのでしょうか?まぁ、いいでしょう。今は目の前の問題に集中しなくてはいけませんね。本当に困った相棒と後輩だ。

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