【最強の凸凹魔法士バディ】裏組織魔法士ギルドの渡り鴉~絶対領域と瞬擊の剣姫~

夕姫

25. おかわりをください

25. おかわりをください



 時間は夜11時を回ったところだろうか。今はアリスとコレットと共に初めての夜の王都の巡回をしている。最近は悪魔憑きの被害も増えてきている。

『遺言請け負い人』のコレットの元に届いていた手紙はあれ以来こなくなってしまった。おそらくその騎士団員が気づいたと思われる。この事件はまだ解決はしていない。とりあえず新たな情報は本部に任せて、いつも通りの仕事をすることにした。

「楽しみですね!先輩方!」

「お前。静かにしろよ」

「コレット=フルール。その前になんですかその格好は?」

 コレットの格好を見るとメイド服にマントを羽織っている。スカートが短く膝上までしかない。胸元も大胆に開いている。どこから持ってきたのか知らないが、どうやらこの格好で巡回をするらしい。

 良く見たら意外に胸も大きい……って何考えてるんだオレは!?そんなことを考えているとアリスと目が合い、そのまま無意識にアリスの身体へ目を向ける。

「……」

「……殺しますよ?」

「いや!違う別に比べたわけじゃない。無意識にだな?」

「アデル=バーライト。私はあなたの魔法より速く動き真っ二つにできますが?それ以上言うことがあるのですか?」

「すみません……」

 咄嗟に謝ってしまう。アリスは殺気を感じるほどに冷たい視線だった。これはマジだな……。

「先輩方は仲が良いんですね~」

「どこがだよ!」

「そうです。こんな破廉恥極まりない男とは仲良くありません。」

 破廉恥ってお前なぁ……。オレは正常な反応だ。男はみんなそうだろ。むしろオレは紳士的なほうだと思うぞ?とか考えているとアリスはその様子を見て冷たく言い放った。

「……首をはねますよ?」

「すみません……」

 そんなやり取りを終え、仕事に戻る。なんだかんだコレットは二丁拳銃での遠距離攻撃ができる。オレとアリスにとっても心強い仲間であるのはかわりはない。あとは経験だけだ。

「あの気になったんですけど、先輩方って付き合ってるんですか?」

「は?」

「コレット=フルール。私とこの女性を胸の大きさで判断するようなクズ男が恋人に見えるのですか?笑えない冗談ですが」

 ひどい言われようなんだが……そりゃ比べたよ?確かに比べたけど、無意識にだし。

「でも先輩方の距離感というか、なんかこう見つめ合う感じっていうか。そういう雰囲気がありましたし」

「……そんなことないと思いますが」

「オレもそんな風に見えたことはないかな」

「えぇー。絶対そうですよぉ。あたしにはわかりますもん!」

 オレたちは特に否定せず、巡回を続けた。正直、そう見えたのならそれはお互いの信頼関係があってこそだと思っている。あくまで仕事上のパートナーとしてだ。ただそれだけの関係だ。

 そしてそのまま夜の巡回を終える。特に目立ったことは起きなかった。コレットは『せっかくの初めての巡回なのに!悪魔取憑きが出ないのは残念です』とか言っていたが、出ないに越したことはない。

「お疲れ様。今日は特に問題はなかったな」

「そうですね。引き続き警戒は怠らないようにしないといけませんが」

「じゃあまた明日学院で!」



 そして翌日。オレはいつも通り学院での授業を終え、帰っている。すると目の前に見覚えのある人物を見つける。

「クイーン」

「はい?あっ!アデルさん!」

 ここで情報屋のクイーンに会えるのは好都合だな。『レイブン』からの依頼ではないけど、何か情報が聞けるなら助かる。

「なぁクイーン。このあと暇か?少し話さないか?」

「……暇と言えば暇ですかね。まぁいいでしょう。いつもの『ブラック・キャット』でいいですか?」

「おう」

 そしてオレはクイーンと共に喫茶店『ブラック・キャット』へ向かう。というか……この状況大丈夫?見た目幼女のクイーンを連れて、オレ犯罪者とかにならない?

「どうしました?」

「いやなんでもない」

 とりあえず店に入る。オレたちはカウンター席に座り、飲み物と軽食を頼む。ちなみに今日のオレのおすすめはパンケーキだ。

「それでなんの話でしょうか?」

「ああ、ちょっと聞きたいことがあってな。もしかしたらクイーンなら知ってるんじゃないかと思って」

「知ってても素直に教えるとは限りませんよ?これは正式な依頼じゃありませんしね」

「それくらいわかってるさ。オレもそこまでバカじゃない」

「ふむ。ではなんの情報をお求めですか?」

 オレは『遺言請け負い人』のコレットに手紙を送っていた騎士団の人物にある懸念をしている。もしかしたらその人物は……。オレは一呼吸おいて聞くことにする。

「回りくどいのは嫌いだ。単刀直入に聞く。『遺言請け負い人』のコレットに手紙を送っていた騎士団の人物は……悪魔じゃないのか?」

 それを聞いたクイーンは顔色を変えることなくオレのほうを見て答える。

「なるほど……アデルさん。パンケーキのおかわりをください。あとコーヒーも。やはり私はあなたのことが気にいってるみたいです」

 どうやら当たりのようだな。オレはパンケーキとコーヒーを注文してクイーンの情報を聞くことにするのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品