わたしの祈りは毒をも溶かす!
50話 嬉しかったこと楽しかったこと、たくさんあるよ①
ーーあれから一月後。
イービルやお父様、お母様、それにフレディ伯爵、リュメル様たちは王宮で正式に裁かれ遠い地方の監獄へ収容された。終身刑らしく、一生出られないとのこと。わたしは落ち着いたら面会に行こうと思っている。あんな目に遭ってとモッペルは言うけどやっぱり家族だから見捨てることはできない。
それはそうと、この地方は王国の直轄地となっていた。治めているのはノルトハイム殿下。兄上さまが執務の補助を行い、わたしは阿片に毒された禁断症状の民を治癒するお役目を頂いている。
殿下と兄上さまは旧伯爵邸で執務を行い、わたしは近くの修道院でお祈りの日々を過ごす。ここは多くの民が収容でき、街からも近いので丁度良いのだ。
「オリビア様、殿下がお越しになられてます」
「モッペル、仰々しいな。君らしくもないぞ」
「と、と、とんでもございません!」
モッペルは殿下にこれまでタメ口だったのを改め丁寧な口調で接する。それを時々、殿下がおからかいになるのだ。
わたしはお昼の祈りが終わった頃だった。殿下は何かと修道院に来られ中毒に苦しむ民の様子を気にかけておられる。
「順調か、オリビア?」
「はい。この通り軽症者も残り僅かとなりました。あと半月もあれば全領民の治癒が終わる見込みでございます」
「そうか、それは嬉しいことだ。ありがとう、君のおかげだよ」
「いえ、わたしは民のために尽くしたいのです」
「うーん、だがそうなると僕の任務もそろそろ終わりそうだなぁ。あとはゲーニウスに任せようか」
「兄上さまに?」
「ああ、僕は王都へ戻らないといけない。だから陛下にお願いして彼の爵位を復活させて頂くことになった。僕に代わってここを治めて貰うためにね」
「それは大変名誉なことです。でも我が子爵家はこの地を混乱させた家柄です。ジョイコブの名で治めるのは如何なものでしょう?」
「そのことなんだけどね、ある侯爵家の養子になることが決まったんだ。彼と……君もだ」
ーーえっ? こ、侯爵って!?
「殿下、おからかいにならないでください」
「からかってなんかない。聖人・聖女に相応しい爵位だ。で、オリビア……」
「は、はい」
「ダンスをしないか?」
なんでダンス!?
「嫌か?」
「いえ、余りにも唐突だったので」
殿下のお付きの者が、修道院にあるオルガンで演奏を始めた。わたしは彼のリードでホールドの姿勢を取りステップを踏む。
「これから毎日ダンスが出来そうだ」
「仰る意味が……? 殿下は王都へお帰りになられるのでしょう?」
「あぁ。だが、君を連れて行く」
「えっ!?」
「オリビア……いや、聖女様。僕の側にいて欲しい」
お側に……?
「やがて僕はこの国の王となる。君がいてくれたらどれだけ心強いか」
「本気で仰ってるのですか?」
「僕はこの地方に来てオリビアをずっと見てきた。聖女である前に一人の女性として尊敬している」
な、何をさっきから!?
思わず、かっとなって本音をぶつけてみた。
「殿下は、キース先生はわたしに厳しかったです! 尊敬だなんて嘘に決まってます!」
「厳しいと思っていたのか……ははは、まぁそうだ。君は障害者だった。だから強く生きてほしいと願ってつい、チカラが入ったのかもしれないな」
むすーっとふくれたわたしに殿下は優しげな眼差しを向けながら、そっと頬に手を添えられた。
「返事は急がない。その気になったら王都へ来てくれ。……待ってるから」
今度はかぁーとほっぺたが真っ赤になるのが分かった。急にそんなお話されても困ります。
***
その晩、興奮して寝つきが悪かった。全てキース先生の……あ、いえ殿下の所為だ。そんな寝苦しい夜更けに妖精が現れた。
「どうしたんだ、オリビア?」
「あー、アプレン! キース先生がヘンなこと言っちゃって」
「ヘンな話じゃないだろ」
「だってぇ!」
「まぁいい。いつものアレをやるぞ」
「う、うん」
「オリビア、今日の嬉しかったこと楽しかったことは何だ?」
「え、えーとね……」
「どうした? 素直な気持ちで思い出せ。そして正直にな」
「キース先生がヘンなこと言った」
「嬉しかったのか?」
「驚いた」
「質問に答えてないな」
「嬉しかった! 驚いたけど嬉しかったの!」
「そうか。それがお前の正直な気持ちだ。良かったな。お前は幸せになるんだ。きっと毎日が嬉しく楽しい日々になるだろう」
「そうかな?」
「そうだ。毎日の報告、楽しみにしてるぞ。お休みオリビア……」
わたしは幸せな気分に包まれてウトウトする。
あ、明日お返事しなくっちゃ……
イービルやお父様、お母様、それにフレディ伯爵、リュメル様たちは王宮で正式に裁かれ遠い地方の監獄へ収容された。終身刑らしく、一生出られないとのこと。わたしは落ち着いたら面会に行こうと思っている。あんな目に遭ってとモッペルは言うけどやっぱり家族だから見捨てることはできない。
それはそうと、この地方は王国の直轄地となっていた。治めているのはノルトハイム殿下。兄上さまが執務の補助を行い、わたしは阿片に毒された禁断症状の民を治癒するお役目を頂いている。
殿下と兄上さまは旧伯爵邸で執務を行い、わたしは近くの修道院でお祈りの日々を過ごす。ここは多くの民が収容でき、街からも近いので丁度良いのだ。
「オリビア様、殿下がお越しになられてます」
「モッペル、仰々しいな。君らしくもないぞ」
「と、と、とんでもございません!」
モッペルは殿下にこれまでタメ口だったのを改め丁寧な口調で接する。それを時々、殿下がおからかいになるのだ。
わたしはお昼の祈りが終わった頃だった。殿下は何かと修道院に来られ中毒に苦しむ民の様子を気にかけておられる。
「順調か、オリビア?」
「はい。この通り軽症者も残り僅かとなりました。あと半月もあれば全領民の治癒が終わる見込みでございます」
「そうか、それは嬉しいことだ。ありがとう、君のおかげだよ」
「いえ、わたしは民のために尽くしたいのです」
「うーん、だがそうなると僕の任務もそろそろ終わりそうだなぁ。あとはゲーニウスに任せようか」
「兄上さまに?」
「ああ、僕は王都へ戻らないといけない。だから陛下にお願いして彼の爵位を復活させて頂くことになった。僕に代わってここを治めて貰うためにね」
「それは大変名誉なことです。でも我が子爵家はこの地を混乱させた家柄です。ジョイコブの名で治めるのは如何なものでしょう?」
「そのことなんだけどね、ある侯爵家の養子になることが決まったんだ。彼と……君もだ」
ーーえっ? こ、侯爵って!?
「殿下、おからかいにならないでください」
「からかってなんかない。聖人・聖女に相応しい爵位だ。で、オリビア……」
「は、はい」
「ダンスをしないか?」
なんでダンス!?
「嫌か?」
「いえ、余りにも唐突だったので」
殿下のお付きの者が、修道院にあるオルガンで演奏を始めた。わたしは彼のリードでホールドの姿勢を取りステップを踏む。
「これから毎日ダンスが出来そうだ」
「仰る意味が……? 殿下は王都へお帰りになられるのでしょう?」
「あぁ。だが、君を連れて行く」
「えっ!?」
「オリビア……いや、聖女様。僕の側にいて欲しい」
お側に……?
「やがて僕はこの国の王となる。君がいてくれたらどれだけ心強いか」
「本気で仰ってるのですか?」
「僕はこの地方に来てオリビアをずっと見てきた。聖女である前に一人の女性として尊敬している」
な、何をさっきから!?
思わず、かっとなって本音をぶつけてみた。
「殿下は、キース先生はわたしに厳しかったです! 尊敬だなんて嘘に決まってます!」
「厳しいと思っていたのか……ははは、まぁそうだ。君は障害者だった。だから強く生きてほしいと願ってつい、チカラが入ったのかもしれないな」
むすーっとふくれたわたしに殿下は優しげな眼差しを向けながら、そっと頬に手を添えられた。
「返事は急がない。その気になったら王都へ来てくれ。……待ってるから」
今度はかぁーとほっぺたが真っ赤になるのが分かった。急にそんなお話されても困ります。
***
その晩、興奮して寝つきが悪かった。全てキース先生の……あ、いえ殿下の所為だ。そんな寝苦しい夜更けに妖精が現れた。
「どうしたんだ、オリビア?」
「あー、アプレン! キース先生がヘンなこと言っちゃって」
「ヘンな話じゃないだろ」
「だってぇ!」
「まぁいい。いつものアレをやるぞ」
「う、うん」
「オリビア、今日の嬉しかったこと楽しかったことは何だ?」
「え、えーとね……」
「どうした? 素直な気持ちで思い出せ。そして正直にな」
「キース先生がヘンなこと言った」
「嬉しかったのか?」
「驚いた」
「質問に答えてないな」
「嬉しかった! 驚いたけど嬉しかったの!」
「そうか。それがお前の正直な気持ちだ。良かったな。お前は幸せになるんだ。きっと毎日が嬉しく楽しい日々になるだろう」
「そうかな?」
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わたしは幸せな気分に包まれてウトウトする。
あ、明日お返事しなくっちゃ……
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