わたしの祈りは毒をも溶かす!

鼻血の親分

43話 わたしの祈りは毒をも溶かす!⑩

 ※ゲーニウス視点

 伯爵邸の前で激しく戦闘が繰り広げられていた。敵軍はお城とも言える広大な敷地から四百名の兵隊が攻撃を仕掛け抵抗している。だが王宮軍は更に援軍が着陣し二千を超える軍隊。もはや時間の問題だろう。

「キース様、三宝の山を落としました。幹部並びに労働者は全て捕らえています」
「よくやった、ゲーニウス。お前の母も捕らえたのか?」
「はい。……いえ、あの人は母ではありません」
「そうだったな。で、ここの戦況は少々手間取ってるが特殊部隊を邸内に送り込んだ。撹乱と共にフレディ伯爵、リュメル子息の居場所を掴む様、命じてある。そろそろ吉報を待っているんだがな」
「お父様も邸内に居るのですか?」
「あぁそうだ。ジョイコブ子爵も捕らえるつもりだ。お前の家族はオリビア以外、犯罪に携わっているから仕方ない。……辛いかもしれないが」
「とんでもございません。阿片で私腹を肥やし、人々を服従させるとは例え肉親だとしても許されないことです」
「よく言った。お前が僕の前で直訴したことを思い出したよ」


 …
  …
   …


 そうだ。あれは二年前のことだった。屋敷の中で寝そべってパイプを吸引してるご夫人とイービルを目撃した時、直ぐに阿片を疑った。それから密かに調べていく内に、この子爵家が麻薬に塗れていることが分かった。侍女から使用人に至るまでだ。

 俺は長い間、勘違いしていた。我が家は医療に役立つ薬を提供する貴族だと思っていたが、その誇りが崩れ去ったのだ。

 それに元執事から母親殺しの真相を知って愕然とした。俺はこの家を潰そうと誓ったんだ。

 王宮で事務官を務めていたが職務を放り出してキース様の執務室前で待ち構えることにした。一か八かの賭けだった。そしてチャンスが訪れた。

「キース様でしょうか? 突然申し訳ございません。フレディ伯爵の副官、ジョイコブ子爵の嫡男でございます」

 キース様へ突然の申し出とあってボディガードらしき兵隊が立ちはだかった。

「何だ貴様は!?」
「まぁ待て、通称で呼ぶとは……僕に何か?」
「失礼を重々承知で、お願いがございます。我が地にて麻薬が蔓延してるのです」

 兵隊に胸ぐらを掴まれる。

「おい、直接この御方にお話しするとは無礼だろう!」
「直訴か。まぁ良いだろう。麻薬とは物騒だ。話を聞こうか、中に入りなさい」

 兵隊がいきり立つ中でキース様は暖かく俺を迎えてくれた。普通はあり得ないことだろう。だって彼はこの国の……


「僕が裏の諜報機関を任されてることは知ってたのか?」
「はい。噂程度ですが」
「そうか、あまり知られてないのになぁ。で、麻薬とは阿片のこと、だな?」
「はい、調べによると……」

 俺は洗いざらい話をする。自分の家と主筋の伯爵家の悪政を訴えたのだ。するとキース様からある提案をされた。

「もっと内定調査をしたいな。君を事務方から引き抜こう。僕の手助けをしてくれないか?」
「よ、喜んで!」

 こうして俺は諜報機関へ身を寄せることになった。











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