わたしの祈りは毒をも溶かす!
41話 わたしの祈りは毒をも溶かす!⑧
「お姉様、……ねぇ、助けてよう」
後ろ手に縄を括られ、監禁部屋の柱に固定された妹が泣き出しそうに訴えてくる。
「伯爵様に楯突こうなんて兄上さまはどうかしてるわ。ね、ね、私を助けた方が得でしょう?」
「イービル、残念だけど貴女を助けるわけにはいかないの」
「お姉様! お願いよ、無理に阿片吸わせたことは謝るからぁ……」
彼女は涙を浮かべていた。これまでわたしを殺そうとしたことなんて忘れてる様だ。
妹とは幼い頃、とっても仲が良かった。いえ、難聴だからわたしが勝手に思い込んでいたのかもしれない。でも、思い出すのはいつも一緒にお布団に包まってお昼寝してた、あの無邪気で可愛いイービルなのだ。なのにーー
いつから性悪な性格になったの?
…
… 
…
「おねーたん、いっしょにオネンネだよー」
ぎゅうっと妹に抱きしめられ、わたしは苦しかった。でもそんなに甘えられると嬉しいものだ。
「あー、あー」
ヨシヨシと頭を撫でて一緒に眠りにつく。幸せな一時だった。耳が聞こえないことに何も違和感なく接してくれる妹が可愛くてしたかない。
わたしは聞こえる様になるまで何も気づかなかった。いつまでも優しい甘えっ子の妹だと思っていた。でも今思えば、年頃になっていくうちに段々とヨソヨソしい態度に変わってきた気がする。その背後にお母様がいたことは容易に想像がつく……
「オリビアやゲーニウスと仲良くしなくてもいいのよ。特にオリビアはね、耳が聞こえないでしょう。我が家のお荷物なんだから」
もしかしてこんな風に言われてたのかな……
悪いのはこの娘だけの所為ではないかもしれない。けど、このまま妹を助けるつもりは毛頭ない。そんなに優れた人格の持ち主ではありません。
「イービル、お洋服を切り刻んだこと。階段から突き落としたこと。馬車を暴走させてわたしに怪我をさせようとしたこと。代わりに兄上さまが大怪我したこと。屋上から花瓶を落として殺そうとしたこと。そして、無理に阿片を吸わせたこと。全て許さない。正式に裁きを受けなさい!」
「ち、ちょっと、お姉様は伯爵様に勝てるとでも思ってるの? 返り討ちに遭うのが分からないの? 今、私を助けないと立場が逆転したら悲惨よお!」
「わたしは兄上さまとキース先生を信じる。そして阿片をこの地から無くしていくんだ!」
「バッカじゃないの? 後で後悔しても知らないから!」
何とでも言うがいい。わたしは信じる。信じるしかない!
***
それから二日経過した。このお屋敷にいる限りは何の変化もなく、ただ不安が増すばかりだった。
「オリビア様、静まり返ってるのが不気味ですね。三宝の山や伯爵家との戦はどうなったのでしょう? 何の情報もないし、兵隊に聞いても分からないって言うし……」
お父様やお母様も消息不明。いえ、それよりも兄上さまや先生の安否が心配だ。
そんな中、監禁部屋から異常な呻き声が聞こえてきた。阿片を欲しがるイービルや使用人の禁断症状が始まったのだ。
「阿片が切れた様ですね。オリビア様、如何なされます?」
わたしは助けるか助けないかの選択に迫られていた。
後ろ手に縄を括られ、監禁部屋の柱に固定された妹が泣き出しそうに訴えてくる。
「伯爵様に楯突こうなんて兄上さまはどうかしてるわ。ね、ね、私を助けた方が得でしょう?」
「イービル、残念だけど貴女を助けるわけにはいかないの」
「お姉様! お願いよ、無理に阿片吸わせたことは謝るからぁ……」
彼女は涙を浮かべていた。これまでわたしを殺そうとしたことなんて忘れてる様だ。
妹とは幼い頃、とっても仲が良かった。いえ、難聴だからわたしが勝手に思い込んでいたのかもしれない。でも、思い出すのはいつも一緒にお布団に包まってお昼寝してた、あの無邪気で可愛いイービルなのだ。なのにーー
いつから性悪な性格になったの?
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「おねーたん、いっしょにオネンネだよー」
ぎゅうっと妹に抱きしめられ、わたしは苦しかった。でもそんなに甘えられると嬉しいものだ。
「あー、あー」
ヨシヨシと頭を撫でて一緒に眠りにつく。幸せな一時だった。耳が聞こえないことに何も違和感なく接してくれる妹が可愛くてしたかない。
わたしは聞こえる様になるまで何も気づかなかった。いつまでも優しい甘えっ子の妹だと思っていた。でも今思えば、年頃になっていくうちに段々とヨソヨソしい態度に変わってきた気がする。その背後にお母様がいたことは容易に想像がつく……
「オリビアやゲーニウスと仲良くしなくてもいいのよ。特にオリビアはね、耳が聞こえないでしょう。我が家のお荷物なんだから」
もしかしてこんな風に言われてたのかな……
悪いのはこの娘だけの所為ではないかもしれない。けど、このまま妹を助けるつもりは毛頭ない。そんなに優れた人格の持ち主ではありません。
「イービル、お洋服を切り刻んだこと。階段から突き落としたこと。馬車を暴走させてわたしに怪我をさせようとしたこと。代わりに兄上さまが大怪我したこと。屋上から花瓶を落として殺そうとしたこと。そして、無理に阿片を吸わせたこと。全て許さない。正式に裁きを受けなさい!」
「ち、ちょっと、お姉様は伯爵様に勝てるとでも思ってるの? 返り討ちに遭うのが分からないの? 今、私を助けないと立場が逆転したら悲惨よお!」
「わたしは兄上さまとキース先生を信じる。そして阿片をこの地から無くしていくんだ!」
「バッカじゃないの? 後で後悔しても知らないから!」
何とでも言うがいい。わたしは信じる。信じるしかない!
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それから二日経過した。このお屋敷にいる限りは何の変化もなく、ただ不安が増すばかりだった。
「オリビア様、静まり返ってるのが不気味ですね。三宝の山や伯爵家との戦はどうなったのでしょう? 何の情報もないし、兵隊に聞いても分からないって言うし……」
お父様やお母様も消息不明。いえ、それよりも兄上さまや先生の安否が心配だ。
そんな中、監禁部屋から異常な呻き声が聞こえてきた。阿片を欲しがるイービルや使用人の禁断症状が始まったのだ。
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