わたしの祈りは毒をも溶かす!

鼻血の親分

26話 また聞こえてます。特殊能力だなんて…⑦

「……兄上さま?」

 彼は寝てしまった。そういえばわたしもアプレンとお話の途中でいつの間にか眠っていたことを思い出した。

 そっか。思考の中での会話って長く続かないんだよね。キース先生のことが知りたかったけど、また明日にしよう。

 さて、わたしは今後どうすればいいのかな? このままの流れだと伯爵様の元へ行って愛人を勤めなければならない。子爵家のため、お役に立てるのなら我慢しようと思ってたけど、やっぱり嫌だ。

 あぁー、この現実から逃げ出したいよう。

 ベッドに戻ってそんなモヤモヤした気分のまま、うっかり寝てしまった。嬉しかったこと楽しかったこと、思い浮かべるのを忘れて……


 ***


 翌朝、モッペルに起こされた。彼女はいつも笑顔だ。笑顔で悪口言ってたのはビックリしたけど、今はわたし付きの侍女なので献身的に尽くしてくれている。

 朝の準備が整い、普段と変わらない朝食を終え、お部屋に戻ったわたしに何かとコミニュケーションを取ろうと話しかけてくる。まぁ、聞き流す感じで受け応えてるから、話好きの彼女もストレス発散で丁度いいのだと思う。

『オリビア様、どこか行きたい場所ありますか? 近場ならご案内しますよ。』

 そうモッペルから筆談された時、ふと地下室を思い浮かべた。彼女となら危なくないよね? でも何で地下室って思うかな。まぁ試してみるか。

『地下へ行ってみたい。大丈夫かな?』

「地下……ですか。何かあるのかしら。監禁部屋と薄暗い倉庫が幾つか……。ま、行きたいのならご案内しますよ。ささ、参りましょう」

 少し冒険してる気分になってワクワクした。お屋敷に住んでいて、あまり行ったことのない場所へ行くのは何か楽しい。手にランプを持ち、わたしたちは地下の階段を慎重に降りてみた。

「この通路を真っ直ぐ行くと監禁部屋ですよ。思い出しましたか?」
「あー、あー」
「それでね、ここに……えっと、鍵が掛かってるよね。へへへ。アタシ、実は鍵の場所知ってるんだよ」

 秘密の扉でしょうか。廊下の右側に倉庫の入り口と思われる扉があった。薄暗くて見落としてしまいそうだ。

 モッペルは背伸びして柱の上の隙間に手を合わせゴソゴソと探る。やがてチャリーンと音が鳴った。鍵を見つけた様だ。

「ここから荷物を運んだことがあるからね」

 荷物を? まぁ倉庫だからあり得るけど。じゃあヤバいものは隠してないってことかな? 侍女が勝手に入れる様なところに納めないか……

 そう思いながらも扉を開けて中へ入った。ランプをかざして見ても木箱が幾つかあって特に怪しい物はない。

「この先も倉庫は続いてるけど、鍵の場所は分からないのよ」

 ん? まだ続きが? そうか、そこから先が怪しいのか。その鍵は多分お母様とイービルが管理してるのね。だったらお母様のお部屋に侵入して……いやいや、それは余りにも危険過ぎる。まぁこれでも収穫だ。先生や兄上さまにお話が出来るよね。

「どうします、オリビア様? 戻りますか?」

 わたしとモッペルはこれ以上ここに居ても何もないので倉庫から出ることにした。と、その時だった。聞き慣れたアイツの声が聞こえてきた。

「あ~ら、関係者以外立ち入り禁止の場所で何をお探しかしら……お姉様?」

 イ、イービルだ……これはマズい。










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