わたしの祈りは毒をも溶かす!

鼻血の親分

25話 また聞こえてます。特殊能力だなんて…⑥

「オリビア、今日も幸せだったか?」

 そうアプレンがいつも問いかけてくれた。彼はどうやって訪れるのでしょう。毎晩、ベッドで目を閉じると自然にわたしの思考へ現れるって。一体どうやって?

 確か意識を集中させて念じろって言ってたよね。

 わたしは兄上さまが病室のベッドでお休みしてる姿を想像しながら意識を集中させた。でも……

 むーん。全然気配がないよ。

 何度も繰り返すけど全く駄目だ。何がいけないのかも分からない。疲れてぼぉーっとしてしまった。いえ、うっかりウトウトする。それでも兄上さまのことを考えていたら……

 ん? 目を閉じてるけど何か違うよ。無数の星が見える。この世界はなに? キラキラ輝いて綺麗だよお……。あ、わたしは宙に浮いてる気がする。何なのこの現象は? そうだ、兄上さま、兄上さまの元へ行きたいの。

 兄上さまーーーーーーっ!

 ーーーーーーシュュンッ。

 気がつけば煌びやかな星の世界を飛んでいた。暫くすると少し明るく、どこか暖かい雰囲気の場所へ移動している。わたしは宙に浮いたままだ。

 ああっ、兄上さまが見える。ベッドで寝てるよ。

「兄上さま!」

 スゥーッとベッドの上に降り立った。わたしは小ちゃな子供になっている。

「ん? オリビア……か?」 
「はい!」
「はは……可愛らしい少女だな」
「これって、兄上さまの思考に入れたってこと?」
「そうだ、よく出来ました。お前はやはり俺と同じ能力を……いや、俺以上の能力を持ってるんだな」
「あー、何かすごーい。嬉しいよう!」
「お前の能力は進化している。もしかしたら耳も完治してるかもしれないぞ」
「そうなの? 兄上さま以外の人とお話しても大丈夫なの?」
「はっきりとは分からないが、そんな気がする」
「でも、試すのは怖いよ。また聞こえなくなったら嫌だもん」
「そうだな、もう少し様子を見ようか」
「あ、そうだ。わたし、いっぱいお話があったんだ。ねぇ聞いて、聞いて!」
「はは、何だって?」

 三宝の山にモッペルと行って知ったこと、それをキース先生に筆談で伝えた経緯をお話をした。それから阿片の流通経路が不明で、お屋敷の何処かに隠してるかもしれないことも付け加える。

「お屋敷の中に幾らか隠してあるのは間違いない。だが見つからないのだ。もしかしたら地下室だと思ってる」
「地下室って、わたしが監禁されたとこ?」
「地下には他にも納戸と言うか、倉庫の様なものがいくつかある。全て確認出来てないから探す余地はある。ただ……」
「ただ、なに?」
「イービルがよくウロウロしてるんだ。ヘクセと一緒にな」
「ヘクセなら事故の件でお母様がクビにしました」
「そうか。なら今がチャンスかもな。だが一人で行くなよ。何が起こるか分からない」
「うん……」

 それよりもわたしは馬車の暴走事件を思い出し、気になっていた疑問を投げかけてみた。

「えっと、兄上さまはあの日、休日でもないのにお屋敷に帰ったのは何か御用があったのですか?」
「あぁ、お前が馬車で轢かれる夢を見て危険を感じたんだ。予知能力が働いたのさ」
「ではわたしを助けるため、わざわざ王都からお戻りになられたのですね」
「そうだが、今は王都には居ない」
「えっ?」
「街のとある場所で三宝の山を見張っているんだ。キース様とね」

 やはりキース先生と繋がってるんだ。先生のこと聞いてもいいかな。彼は諜報機関のお偉いさんなのでしょう? だったら兄上さまも機関の人なの?

 わたしは聞こうか聞くまいか考えていた。


















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