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わたしの祈りは毒をも溶かす!

鼻血の親分

17話 ああっ、聞こえなくなってる!④

 でも護衛の者は躊躇ってる様だ。彼らにとってわたしは子爵家の令嬢。いくら妹の命令とはいえ、危害を加えていいものか悩んでいる。

「何してるの! さっさとおやりなさい!」
「まぁまぁ、イービル。やっぱりちょっと待ちなさい。伯爵様の愛人を傷つけるのはよくないわ」
「お母様!? 私はおもっきり引っ叩かれたのですよ?」
「この娘が何処まで知ってるのか、尋問次第ってことになるわね」

 妹は不満そうだったけど護衛の者もホッと胸を撫でおろし後ろへ下がった。どうやら危害は加えないみたいだ。

「じゃあ、オリビア。始めるわよ」

 椅子を用意して並べる。お母様、イービルが正面に座り対面でわたしも座る様、促された。何が起こるのか想像もつかない。

「貴女はいつから耳が治ってたのかしら?」

 言ってることがさっぱり分からないよ。

「あー、あー、」
「ちょっと、この後に及んでまだ演技する気?」
「お母様、やっぱ怖い目に合わせないと口割らないよ。コイツは腹黒いオンナだ。今まで聞こえないフリして騙してきたんだから」
「……誰かお医者さんを呼んできて頂戴」

 お母様は何やら護衛の者に指示を出した。そして前のめりする妹を制し尋問を続ける。

「アンタはイービルにいい加減にしなさいって、はっきり口にした。私も聞いたわ。いつからか耳が治ってたのよ。子爵家の秘密も知ってるんでしょう?」

 わたしは返答のしようがない。

「くそっ、お前いい加減にしなさいよ!」

 イービルが何やらわめいている様だ。

 それから長々とお母様と妹がお話してるけど、わたしにとっては不快な雑音。このまま続けても何も進展しないし無駄な時間を過ごすことになる。

 と、その時、ガレッタ先生が監禁部屋に入って来た。子爵家専属のお医者様だ。耳の治療も幼い頃から診察して頂いてる御年配の先生で、わたしも信頼していた。今は兄上さまに付きっきりかと思ったけど……

「先生~、困りましたの。この娘、何も言わないから~」
「うむ、仔細は聞いた。信じられないことだな」
「さあ、ガレッタ先生の前でお話しなさい。オリビア?」

 先生にはニコニコして会釈した。でも聞こえないから何も喋れない。

「これまでと何も変わってない様に見えるが?」

 紙とペンを取り出して何やら書き出し、わたしに差し出した。筆談をしようとしてるのだ。

「先生!?」 
「儂にはとても難聴が治ったとは思えない。先ずはこれまで通り、何が起こったのか筆談で知ることだろう」

『オリビア、言葉を口にしたと聞いたが、本当なのか? 何があったんだ?』

 そうか。それを必死に聞いてたんだね。恐らくわたくしが阿片のことを知ってるか気になってるんだ。誰かに伝えらたら子爵家が困るから。

 さて、どう答えよう? 兄上さまの魔力で治りましたとは言えないよね。

 少し考えてお返事を書いた。

『自分でも分かりません。ただ、わたしは命を狙われました。庇って倒れた兄上さまを見た時、怒りと興奮で一瞬、音が聞こえたのです。そしてイービルに言葉を発しました。でも段々と音が雑音に変化して元に戻りました。なので、あの時だけです。聞こえたのはーー』



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